今回紹介する「KPT分析」は、チームの状況を明確にするときに活用できる分析方法の1つだ。KPT分析の内容を理解しておけば、チームの現状が一目にして分かる。よって、覚えておいた方がいい分析方法と言える。
しかしKPT分析を行っても、運用の仕方を間違えると効果は挙がらない。本記事ではKPT分析の進め方やポイントを紹介していく。
KPT分析とは「Keep(続けるべきこと)、Ploblem(課題)、Try(挑戦すべきこと)」に関する意見を集め、分析することだ。元々はシステム開発の振り返り時に使われていた分析方法だが、現在では様々な職種で用いられている。
KPT分析を行えば必要な行動が分かるため、今後の行動指標を決めるときに役立つ分析方法だと言える。
ここからはKPT分析のメリットを紹介していく。
KPT分析を行えば、自社の強みや弱み・課題などが分かる。そのため、様々な視点で自社の現状をいち早く把握したいときに便利だ。
チーム内でKPT分析を行えば、メンバー達の価値観や考えが分かる。したがって、意思疎通のツールとしても役立つ。
ミーティング時にKPT分析を行えば、メンバー間で意見を出し合うためコミュニケーションの活性化につながる。メンバー間の距離感が縮まり、社員間で話しやすい状態が生まれるだろう。
ここからは、KPT分析の進め方を紹介する。
Keep、Ploblem、Tryに関する意見を記入できるように、フォーマットを用意する。ちなみに社内でKPT分析を行うときは、ホワイトボードや大きな紙を使うことが多い。以下の手順に沿ってフォーマットを作成するといいだろう。
1.ホワイトボード(紙)に大きな四角形を書く
2.四角形に線を引き、縦に2等分する
3.左側の四角形に横線を引き、上下に2等分する
4.左上の四角形を「Keep」、左下の四角形を「Ploblem」、右側の四角形を「Try」の意見を載せる欄にする
フォーマットを用意したら、Keepに関する意見を付箋に書いていく。「良かったこと」や「続けるべきこと」を中心に意見を集める。書いた付箋は、Keepの枠に貼っていく。
Keepに関する意見がある程度出たら、Ploblemに関する意見を挙げていく。「悪かったこと」や「今後の課題」を中心に意見を集める。書いた付箋は、Ploblemの欄に貼っていく。
KeepとPloblemの意見を参考にしながら、Tryに関する意見を挙げていく。Tryでは「Ploblemを解消するもの」や「会社に良い影響を与える行動」を中心に書き進める。付箋への記入が終わったら、Tryの欄に貼っていく。
Tryの内容をもとに、アクションプランを決めていく。たとえば「業務のスピードを上げる」という意見が挙がっていた場合、「〇〇のツールを導入して生産性を高める」「複数の社員で業務をシェアし合う」と言った形でアクションプランを立てる。なお、アクションプランを立てるときは、以下のことを意識すると良い。
アクションプランを立てるときは、何のために行うか目標を設定すると良い。目標を設定すれば、何を目掛けて行動すればいいか分かる。そのため、アクションプランを成功させやすくなる。
実行できないアクションプランを立てるのは時間の無駄だ。アクションプランは実行ありきで立てなければならない。したがって、実現可能なプランを立てることが大事だ。人員や社員達のスキルなどを考慮しながらプランを立てていくと、実現可能なものが出来上がるはずだ。
アクションプランの内容は具体的な方が良い。たとえば「新しい事業を展開する」であれば「〇〇の事業を展開する」と言った形で、何の事業を行うか明確にする形だ。内容が明確になれば、どのような行動をとるべきか定まるため、プランの遂行が楽になる。
アクションプランを立てても、放置されては意味がない。遂行するためにもスケジュールは決めた方が良い。スケジュールを設定すれば、日程をもとに取り組む姿勢が生まれる。その結果、長期にわたって放置することがなくなり、プランを実現しやすくなる。
KPT分析のポイントは以下の通りだ。
テーマを明確にしないと、望んでいたものとは違う意見ばかり出る。その状態になるとKPT分析が大変になり、余計な手間や時間がかかる。効率的にKPT分析を行うためにもテーマを明確にして、必要とする意見が挙がるようにした方が良い。
「人によって捉え方が変わる意見」や「抽象的な意見」などは、誤解を与えかねない。KPT分析のときに支障をきたす恐れがあるため、誤解を与える意見は挙げてはならない。
KPT分析を進めていると、特定の社員が原因で課題が浮き彫りになるケースもある。だからと言って、個人に責任を押し付けてはならない。
責任を押し付けると、その社員のモチベーションが下がったり、負担が大きくなったりしてチームの成果が出づらくなるからだ。特定の社員に関する事柄だとしても、チーム全体で解決する流れに持っていった方がいい。チームにまとまりができて、団結力アップにつながるはずだ。
枠に捉われると変にこだわりを持ってしまい、意見の数が減ってしまう。それはKPT分析の質を低下させることになりかねない。KPT分析の質を上げるには、より多くの意見があった方がいい。したがって、枠に捉われず意見を挙げることは大事にすべきだ。
なお、枠に捉われず意見を挙げる状態にするには、以下のことを意識すると良い。
価値観の否定は、その社員の人格を否定することになる。否定された側は自信をなくし、発言できなくなる。意見を次々と出してもらうためにも、価値観を排除すべきではない。
常識を疑わせる習慣を作っておけば、潜在的な視点からアイデアが生まれやすくなる。たとえば、普段から自身の違和感に目を向けることを意識させれば、常識を疑う習慣ができる。その結果、広い視野で物事を見るようになり、枠に捉われずに意見を挙げられるようになっていく。
様々な視点でKPT分析を行うと、多くの意見が出やすくなる。たとえば同じテーマであっても「個人視点でのKPT分析」「チーム視点でのKPT分析」「会社視点でのKPT分析」と違う視点で行えば、出てくる意見も異なる。多種多様の意見が挙がり、広い視野でKPT分析を行えるようになるだろう。多角的に物事を見ていく習慣が身につき、仕事でも役立つはずだ。
定期的にKPT分析を行うべき理由は、アクションプランが実行できているか確認するためだ。アクションプランが上手くいった場合は、Keepの意見が増える。逆に上手くいかなかった場合は、Ploblemに関する意見が増える。
なお定期的にKPT分析を行うときは、以下のことを意識すると良い。
ただKPTを繰り返すだけでは、時間の無駄になるだけだ。そのため、テーマに合わせて実施頻度を変えることが大事だ。1年おきに行った方が良いケースもあれば、1週間スパンで行った方が良い場合もある。KPT分析の効果を発揮させるためにも、意識した方がいいだろう。
前回のKPT分析と今回のKPT分析を比較しながら行うことも大事だ。これはチームの変化を把握するためだ。チームの変化が分かれば、今後のアクションプランをどのように立てればいいかが分かる。KPT分析の質を高めることになるため、行った方が良い。
KPT分析はツールを活用すれば、作業を効率的に進められる。たとえば、このようなツールがある。
KPTonは、オンライン上で自分の意見を書き込んでいけるツールだ。チームメンバーで共有し合うホワイトボードと、個人のみ閲覧できるホワイトボードの2種類が用意してあるため、状況に応じて使い分けられる。
その他に過去のKPT分析で、どのようなTryが挙がっていたか確認できる機能もあるため振り返りも楽だ。KPT分析をデジタル化したい企業に適したツールだと言えるだろう。
Trelloではオンライン上で用意されたカードにタスクを書き込み、管理の効率化を実現させていく。カードにはタスクだけではなく、期限や関係人物、チャットの内容などが書いてある。そのためタスクの中身を確認したり、過去の履歴を辿ったりするのに便利だ。
最後にKPT分析を導入している企業を紹介する。
サイボウズ株式会社では、「Kintone」の開発チームを中心にKPT分析を活用したミーティングが行われている。各社員からKPTに関する意見を集め、その後チームで討論させたり、結果をシェアしたりする流れになっている。これまでに挙がったTryに関する意見は500を超えているそうだ。
しかも自社ではKPT分析を向上させるための、振り返りにも力を入れている。良かった案は採用され、KPT分析の改良につなげられる。KPT分析を活かして、ミーティングを上手く行えている企業だと言えるだろう。
ヴァル研究所でもKPTによる振り返りを導入している。導入の理由は、社員間で業務内容を把握させるためだ。KPT分析の導入前は、メンバー間でどのような業務を行っているか分からず助け合えなかった。
しかしKPT分析を導入してからは、お互いの業務内容が分かりだした。その結果、どのようにカバーすべきか分かり、助け合える環境が少しずつできたそうだ。しかし、KPT分析を導入した当初から運用が上手くいったかというと、そうではない。
自社では当初、KPT分析をデジタル化で行っていた。しかし社員から「使い方が分からない」との意見があり、上手く運用ができなかった。
そこで社員の声を踏まえて、ホワイトボードに意見を書いた付箋を貼っていく「アナログ式」に変えることに。その結果、KPT分析の質が挙がったそうだ。デジタル化と呼ばれる時代の中で、アナログ化にしてKPT分析の効果を挙げた成功例だと言えるだろう。
KPT分析を活用すれば、自社の強みや弱みを見つけたり、今後の行動指針を考えやすくなったりする。このコラムではチームビルディングの観点でまとめているが、業務改善や社内改革を行う際にとても役立つフレームワークの1つだ。
※参考ページ(外部):業務改善とは?すぐに着手したいアイデアと成功に導くポイントを解説
ちなみにKPT分析を進めるときは、以下の流れで行うと良い。
上記のステップに沿って進めていけば、KPT分析を行いやすくなる。その他に注意点もあるため紹介していく。
上記のポイントを抑えると、KPT分析の質が高まり有意義な時間を過ごせる。KPTは社内を把握するのに、とても便利だ。企業の中にはKPT分析で強みや弱みを見つけた結果、大幅に業績がアップした例もあるようだ。
自社の様子が分からない中で事業を進めると、トラブルに巻き込まれたときに対処できなくなる。それを防ぐ意味でもKPT分析を導入して、社内の状況を明確にする習慣をつけていただければと思う。