話題になることが増えている「マイクロアグレッション」。この言葉を聞いたことがある人も多いだろう。しかし、何を指しているのか、具体的にどういうものなのかをしっかりと理解している人は少ないかもしれない。
この記事では、マイクロアグレッションの基本的な概念から、その実例、そしてどう対処すべきかについて説明する。この言葉がどれほど日常生活や職場で重要な影響を持つかを知ってもらいたい。
目次
まずは基本の理解から始める。
マイクロアグレッションは、小さい単位を表す「micro(マイクロ)」と、他者への攻撃という意味の「aggression(アグレッション)」を組み合わせた言葉で、小さな攻撃性を意味する。
言い換えれば、他人を傷つける意図はないが、結果として傷つけてしまうような発言や行動を指す。一般的な誤解としては、「意図がなければ問題ない」と思われがちだが、重要なのは「受け取る側の感じ方」である。
マイクロアグレッションと差別はよく混同されるが、両者は少し違う。差別は明らかな敵意や偏見に基づく行動であり、その意図は通常明らかだ。
一方で、マイクロアグレッションは多くの場合、加害者が意図していない形で発生する。言い換えれば、差別は「意図的に傷つける行動」であり、マイクロアグレッションは「無意識のうちに傷つける行動」である。
日本は特に年齢に関するマイクロアグレッションが多いといわれている。
高齢者はテクノロジーに疎いという一般的な期待やステレオタイプが反映されている。
経験の浅い若手は、わからないことも多いので焦ってしまうことも多い。落ち着いていることはよいにも関わらず、焦っている姿のほうが可愛げがあると思い、好む人も多い。
この発言は、女性が男性(特にパートナー)のために料理するべきだという社会的な期待を反映している可能性がある。
女性は歳を取ると結婚が難しくなるから若いうちに恋愛をしないともったいない、結婚をして家庭に入ることがその人にとって幸せである、という思い込みからきた発言だ。
マネジメント職ではなくプレイヤーとして活躍したいと考える人は男女問わず多いが、男性は社会的ステータスを上げないといけないと考えている可能性がある。
からだの性が女性で性自認が男性であれば、考え方や振る舞いもすべてが男性らしいというステレオタイプからきた発言だ。
これを言っている本人は、多種多様の人の気持ちがわかることを称賛しているつもりかもしれない。しかし、性的指向が人間関係に影響を与えるべきだという暗黙の期待や先入観があり、言われた本人は喜ばないどころか、傷つく可能性がある。
ゲイは、振る舞いや言葉遣い、服装など、外見や振る舞いに何らかの特徴があるべきだというステレオタイプから基づいている。
特に大阪はお笑いコンテンツが豊富で、日常会話にお笑いの要素を含めることも多いのだろう。しかし、全員がそうだとは限らないし、ユーモアの基準も人それぞれである。
日本人は、恥ずかしがりやで自己主張が控えめな人が多いと思われがちだ。同じ日本人同士でも、反発されるのが怖いからという理由で物事をハッキリをいわれたくない人も多いようだ。
中国は、日本の一般的な習慣と比較すると、掃除頻度が少ない人も多いのだろう。しかし、きれい好きな人や、好きという自覚はないものの習慣的に身の回りをキレイに保とうとする人や、潔癖症の人だって当然いる。
このようにマイクロアグレッションは職場でも日常でもよく起こってしまう。こちらの記事でも多数の例を紹介されているので、是非合わせて読んでみてほしい。
→ 無自覚に差別や攻撃をしている?「マイクロアグレッション」を認識しよう
マイクロアグレッションは、言った本人には意識しないかもしれないが、聞いた方には傷を与えることがある。たとえば、「若いのに成熟しているね」と言われた人は、年齢によるステレオタイプがあると感じる可能性がある。
マイクロアグレッションが繰り返されると、信頼関係が崩れやすい。友達関係や職場のチームワークにも影響を与える。
マイクロアグレッションは、ステレオタイプや偏見を強化する危険性がある。これは社会全体で見れば、差別や不平等を生む土壌となる。
自分が何気なく言ってしまう言葉が、他人を傷つける可能性があると理解することは、自己成長と人間関係の質を高めるために重要だ。
マイクロアグレッションを理解し、適切に対処することは個々の人々だけでなく、社会全体にとっても有益です。
前述した通り、相手に全く悪気はなく、むしろ褒める意図で言葉をかけてきている可能性がある。一言目で怒りを表すと、相手は自分の言葉の意味を理解する機会を失う可能性がある。一旦深呼吸をして、落ち着いた状態で反応することが有用だ。
相手が誰で、その状況下で何を言ったのかを考慮する。上司や親しい友人、見知らぬ人など、相手によって対処法が変わることがある。
「私にとっては実は不快なんです」と簡潔に、でもはっきりと伝える。必要なら、その言葉がどうして不快かを説明する。
言った相手がどう反応するかを見て、その後の対応を考える。誤解だった場合、謝罪や訂正があれば、その後の関係構築もスムーズに行える。
繰り返される、または解決しない場合は、信頼できる第三者(友人、家族、人事担当者など)に相談することも有効だ。
会社として対応しておくことで、リスクマネジメントにも繋がる。具体的な施策としては以下の通りだ。
アンコンシャスバイアスとは「無意識の偏見」「思い込み」のことだ。
自分自身がどのようなバイアスを持っているかに気づくことで、思い込みや決めつけに基づいた「差別と受け取られかねない言動」を避けることができる。
社内で実施する場合や、社外のアンコンシャスバイアス研修に参加させる場合にも、以下のポイントを押さえておくことが重要だ。
まず、社員にアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)が何かを理解する。その上で、それがどのようにマイクロアグレッションに繋がるかを理解させる。
アンコンシャスバイアスは、自分を防衛する本能からきている場合も多い。そのため、「自分自身にあるバイアスは何か」など、自己反省する時間を設ける。これにより、無意識に出るマイクロアグレッションを減らす。
社員に対してアンコンシャスバイアステストを実施し、その結果を用いて個々の偏見を明らかにする。
研修を実施しただけでは効果は薄いため、定着させるために対策とフォローを実施することが推奨だ。アンコンシャスバイアスの影響を最小限に抑えるための具体的な対策を策定。例えば、多様な背景を持つ人々が意見を交換できるフォーラムを作るなども良いだろう。
アンコンシャスバイアスを考慮に入れることで、より効果的なマイクロアグレッション対策が可能になります。
全社員がこの問題に対する意識を高めることで、企業文化自体を改善し、より健全な職場を作ることができます。
マイクロアグレッションは、言葉や行動に悪気がない場合でも、受け取る側を傷つける可能性がある。ジェンダー、出身地、年齢、性的指向に関連するさまざまな例を通じて、その存在を認識することが重要だ。
対処法としては、個人が自身の感じた不快をしっかりと表現すること、会社としてはアンコンシャスバイアスに対する教育とオープンな文化作りが有効である。
社会全体でマイクロアグレッションに対する理解と対策を深めることで、より健全なコミュニケーションが可能になり、多様な価値観が尊重される環境を作ることができる。この問題に対する認識と理解は、一人ひとりの手によって確実に改善されるだろう。