ヒアリングスキルは、従来では営業職で必要と言われてきた。しかし近年では、営業職以外の業種においても、ヒアリングスキルが重要視されるケースが増えている。理由の一つとして、時代の移り変わりが挙げられる。専門的スキルを身につけるだけで生きられる時代ではなくなってきた。
本記事では、ヒアリングスキルが重要視されている背景を解説しながら、メリットや向上の仕方について解説していく。
ヒアリングスキルとは相手の話を聞いたり、相手から情報を引き出したりするスキルのことだ。ヒアリングスキルが高い人は相手の言動の他に、行動やしぐさなどを自分なりに分析しながらヒアリングしている。
顧客や取引先との信頼関係を築くことがうまいため、仕事をスムーズに進めていけるだろう。
ここでは、ヒアリングスキルが重要視されている背景を紹介していく。
社会変化によってヒアリングスキルが必要とされるケースが増えてきた。代表的な事例として「Webミーティング」の増加が挙げられる。
Webミーティングは対面で会う場合と比べて、表情が分かりづらかったり、オンラインによるタイムラグが生じたりする。しかも自分の熱量の伝わり方も変わるため、対面のときと同じヒアリングの仕方では成果を挙げづらい。
ヒアリングの仕方を臨機応変に変えなければならない場面が増えてきたため、ヒアリングスキルは重要だといえる。
働く人の多様化が進むと、相手が何を求めているか予想するのが難しくなる。そのため、より細かくヒアリングする場面も増えてきた。今まではOKと言われていたものでも、現在では納得してもらえないケースもある。
今後も深堀しつつ相手の話を聞いていくことが大事になる可能性が高いため、ヒアリングスキルは必要だといえる。
生産性の向上を図る必要があるのも理由だ。相手のことを聞き取れないと、コミュニケーションを上で齟齬が生じてしまう。齟齬が生じると、相手が求めていない物を提示してしまい、仕事で支障をきたす恐れがある。
結果、生産性の低下を招く。生産性アップのためにも、ヒアリングスキルは重要だ。
ヒアリングスキルを習得させるメリットは以下の通りだ。
ヒアリングスキルを向上させれば、相手の意見や要望を正確に把握できる。結果、コミュニケーション能力が向上し、仕事を進めるのが楽になるだろう。作業時間が短縮されるため、他の業務に時間を割きやすくなるはずだ。
ヒアリングスキルが高ければ、従業員や部下の意見を尊重する能力が上がる。リーダーとしてメンバーたちの意見をまとめられるようになり、リーダーシップを身につけるのに役立つだろう。
ステークホルダー(利害関係者)の意見や要望を正確に把握できる。相手が求めているものを考慮しながらプロジェクトを進めていく力が身につく。結果、プロジェクトマネジメント力の習得につながるだろう。
※「ステークホルダー」とは、ある組織やプロジェクトに関心を持つ、または影響を受ける全ての個人や団体を指す。こちらのコラムでも詳しく説明をしている。→ステークホルダーとは?ビジネス初心者にも分かるよう簡単に説明【言い換えの言葉は?】
ヒアリングスキルを習得すれば、他のメンバーの意見や要望を正確に把握できる。チームにまとまりができて、メンバーたちで部署を良くしようとする姿勢が身につく。そのため、チームビルディングに役立つ。
ここからは、現代で求めているヒアリングスキルを高めさせるポイントを紹介していく。
人の話を聴く習慣をつくらせて、相手が何を求めているか知る訓練を実施させるといいだろう。この姿勢がつけば、相手との会話がスムーズに進む。そのため、コミュニケーション能力の習得が期待できる。
ちなみに人の話を聴く習慣をつくるときは、以下のことを意識させるといい。
相手の話を遮らない理由は、場の雰囲気を盛り下げないためだ。話を遮られた側からすると、「割り込まれるなら話さない方がいい」と思ってしまう。
相手が話さなくなり情報を聞き出すのが難しくなる。大事な情報を聞き漏らさないためにも、相手の話は遮るべきではない。
相手に共感しながら話を聞くのも大切だ。相手と対立していると、場の空気感が悪くなり話が前へ進まなくなるからだ。相手に次々と話をさせるためにも、共感しながら聞くことが大事だ。
相手が理解できる質問や答えやすい質問をすれば、相手は話しやすくなる。相手の口数が増えるため、情報を聞き出すのが楽になるはずだ。相手が答えづらい質問を極力しないことが大切になるだろう。
その他に、相手の性格によって話す量を変えるのも重要だ。相手が話し好きであれば聞く量を増やし、相手が話せない人であれば話すきっかけをつくることが大切になる。相手によって自分のスタイルを変えることで、コミュニケーションがとりやすくなるだろう。
相槌の仕方に気を付ける理由は、不快な気持ちを与えないためだ。「はい、はい」と同じ言葉を連発したり、オーバーリアクションな相槌だったりすると、会話の妨げになってしまう恐れがある。したがって、相手に違和感を与えない相槌を打つことが大事だ。
部下の意見を聞いた上で行動させる理由は、周りの意見を無視した行動をとらないためだ。周囲の意見を聞く習慣がつけば、他のメンバーを尊重する姿勢が身につく。結果、リーダーシップを発揮できる人材に育つ。
なお部下の意見を聞かせるときは、以下のポイントを意識させるといいだろう。
部下が意見を言っているにも関わらず全て否定すると、部下は話したくなる。なぜなら「上司に怒られるのではないか」という気持ちを持つからだ。
たとえ、自分の考えと違う意見だとしても「そうなんだね」と、受け入れることで部下の安心感につながり、上司との関係性を良くすることにもつながる。
自分の考えを押し付けるのも良くない。相手の意見が正しい場合もあるからだ。仮に自分の意見が正しかったとしても、主張することで相手は煙たく感じ、上司と部下の関係性が悪くなるかもしれない。
職場で働きづらい状態をつくらないためにも、自分の考えを押し付けるのは控えるべきだ。
「気弱な性格だから何も言えないだろう」といった形で、部下に対して勝手な考えを持つのも良くない。上司の思い込みで、間違った方向へ話が進んでしまうケースがあるからだ。
部下への固定観念が、解決までの時間を長くしてしまう恐れがある。そのため、勝手な考えを持つのは良くない。
相手が何を求めているのかイメージしながらヒアリングさせることも必要だ。自分の目線のみで推測すると、ヒアリングしても思うような成果に結びつかない。
相手目線に立ってヒアリングすれば、両者の間で齟齬が生じづらくプロジェクトをスムーズに進めていける。よって、プロジェクトマネジメント力の向上が期待できるだろう。
なおステークホルダーが求めている内容をイメージするには、以下のことに力を入れさせることが大事だ。
交渉術を磨かせる理由は、ステークホルダーとの話をスムーズに進めさせるためだ。「Win×Win」となる交渉をした方がいい場合もあれば、自分が折れて相手を勝たせた方がいい「Lose×Win」となる交渉をした方がいいケースもある。最適な交渉の仕方を見極める意味でも、交渉術を磨いた方がいい。
なお交渉術を磨くときは、筋道を立てながら話を進めるスキルを身につけることが大事だ。会話の内容が支離滅裂になると、ステークホルダーに話の内容を理解してもらえなくなるからだ。ロジカルシンキングの考え方を身につければ、筋道を立てて話を進めていく能力を高められるだろう。
ステークホルダーの考えを聞く理由は、相手の考えが分からないと話が上手く進まない恐れがあるからだ。自分の中では良かれと思っても、相手からすると良くないと感じるケースもある。
お互いの考え方にギャップがあると、ステークホルダーとの話を上手く進められなくなってしまう。話を前進させるためにも、ステークホルダーの考えも聞くべきだ。
プロジェクトの進捗具合を把握させる理由は、ステークホルダーの立場を知るためだ。「どのような作業を進めているか?」「ステークホルダーは誰とやり取りをしているか?」などを把握できる。ステークホルダーの立場を理解できるようになるため、ヒアリングしやすくなるだろう。
チームメンバーから仕事でやりたいことをヒアリングさせると、メンバーたちは当事者意識を持ちやすくなる。他人事として話を聞くメンバーが減り、一致団結しやすくなる。結果、チームビルディングに役立つだろう。
なお、仕事でやりたいことをヒアリングさせるときは、以下のポイントを抑えるといい。
質問の意図を伝える理由は、メンバーに変な疑いを持たれないためだ。急にやりたいことを聞かれると、自分の本音を言えない恐れがある。
「どのように答えるのが正解か?」と考えてしまい、メンバーから本当の気持ちを聞けなくなるかもしれない。その状況を防ぐためにも、メンバーにやりたいことを聞いている理由を伝えるべきだ。
たとえば「新規事業を考えているからやりたいことがないか聞きたい」「仕事に余裕ができたから、メンバーがチャレンジできる場を与えたいと思っている」などと伝えれば、メンバーは質問の意図が分かる。よって、答えやすくなるはずだ。
メンバー全員に聞くのも意識させた方がいい。一部のメンバーにしか聞かない状況だと「自分には聞いてくれなかった」と、従業員から不満を持たれる恐れがあるからだ。
メンバーとの信頼関係をなくさないためには、全員の声を聞くことが大切になる。したがって、役職に関係なく全員に聞いた方がいい。
メンバーの中には「思いつかない」「やりたいことがない」と発言する人がいるかもしれない。そのときに、強引に発言させる行為はNGだ。なぜなら、パワハラだと捉えられてしまう恐れがあるからだ。
発言するのが苦手だったり、その場で思いつかなかったりするメンバーもいる。メンバー全員が咄嗟に発言できるとは限らない。メンバーを追い込んでしまう場面をつくらないためにも急かすのは厳禁だ。
営業新人研修など、営業初心者向けの研修を受けさせることも一つの手段だ。
社内で先輩社員が講師になって実施しても良い。社外の研修を受けさせることで、他業種の営業を行っている方との交流をさせることもおすすめだ。
現代で求められるヒアリングスキルについて解説した。ヒアリングスキルは、さまざまな業務において必要とされている。必要な理由は以下の通りだ。
上記のことが理由で、ヒアリングスキルは必要とされている。従業員たちのヒアリングスキルが高くなれば、会社としての力も強くなっていく。そのため、グローバル競争の中で生き残っていける確率が高くなるはずだ。
しかも従業員たちのコミュニケーション能力の向上やリーダーシップ・プロジェクトマネジメント力の習得、チームビルディングにも役立つため、社内において良い影響を与えるといえるだろう。なおヒアリングスキルを向上させて、これらを実現させるためには以下のことが大事だ。
これらを実践させれば、従業員たちのヒアリングスキルは向上し、会社の状態も良くなるだろう。従業員の戦力を高めるためにも、会社としてヒアリングスキルを向上できる状態をつくっていただきたい。