従業員間で本音を言えない関係性になっていないだろうか。本音を言えない職場環境は、会社にとってさまざまなデメリットを招く。
それが起こる原因として考えられるのが「トークニズム」だ。会社を良くしたいのであれば、トークニズムはない方が良い。
本記事ではトークニズムについて解説しながら、防ぐポイントを紹介していく。
トークニズムとは、一言で言うと「建前主義」のことだ。相手から言われたことに対し、アクションをとろうとしているものの、実際には何もしていないことを指す。口では「分かりました」と言っているものの、全く行動を起こしていない状況がトークニズムの特徴だ。
トークニズムが起こると人間関係に亀裂が入ったり、コミュニケーションを取りづらくなったりする恐れがある。そのため回避した方が良い。
ここからはトークニズムになってしまう理由を解説していく。
相手を不快な思いにさせたくない人だと、本音を言えないケースがある。結果、相手に嫌われないための会話をするようになり、建前で物事を進めることが当たり前になってしまう。最終的にそれが常態化して、トークニズムに陥る。
争いごとが嫌な人は自分の考えに自信があっても、相手と討論したくない気持ちが生まれやすい。結果、本音で伝えられずにトークニズムになってしまう。穏便に過ごしたいと思う人に多いだろう。
自分が得をしたいがために、あえてトークニズムの形をとる人もいる。相手からは本音を引き出すための会話をするものの、自分の想いは一切相手に伝えないイメージだ。
本当は自分の中で思っていることがあるのに、常に自分が得をするような流れに持っていくと建前主義になる。結果、トークニズムに陥ってしまう。
話を早く終わらせたいがあまり、トークニズムに走ってしまう傾向もある。会話のテーマによっては、本音で話すと会話の時間が長くなってしまう。
会話の時間を縮めたい人の中には、自分の本音を言わずに「そうだね」「はいはい」と流す。その状況も、トークニズムを生み出しやすい理由だと言えるだろう。
ここからは、トークニズムの例を見ていく。
女性の管理職を増やすと言ったのに一向に女性の管理職を増やさない場合は、話を流しているだけなので建前主義に陥っている。よって、トークニズムの一例だと言ってもいいだろう。
社内で争いが良くないと言っているのに、従業員間でケンカが起こりやすい状況をつくっているのもトークニズムの例だ。争いごとをなくすのであれば、従業員たちで対話する時間をとったり、お互いに落ち着ける地点を探したりするのが一般的だ。
しかし、それらの取り組みを行わずに従業員間で挑発し合ったり、トラブルが起こる状態をつくったりすると争いが起こりやすくなる。無意識のうちにやっているケースもあるため、気を付けるべき事案だと言えるだろう。
多様化が大事と言っているのに、社内改革をしない行為もトークニズムの一例だ。経営陣に受け入れられない考えを全て排除したり、相手が意見を最後まで聞かずに否決したりするのは矛盾している。多様化を推進せず、会社にとって都合が良い環境を維持しようとしているだけであるため、トークニズムの一例だと言えるだろう。
トークニズムには、さまざまなデメリットがあるため紹介する。
トークニズムだと、相手の本音を聞けなくなる恐れがある。なぜなら、こちらが本音で接してないからだ。建前で接していることが勘づかれると、相手が本音で話さなくなる。
本音が分からないと話を掘り下げられず、表面上の話だけで終わってしまう。結果、会話の時間が無駄になってしまう。
トークニズムだと表面的な話ばかりになって、思うようなコミュニケーションがとれない。結果、意思疎通が難しくなる。話のゴールまで会話を持っていくのに苦労し、話が進まなくなっていく。
問題点や課題が浮き彫りにならないデメリットもある。トークニズムの環境だと、問題点や課題があるのに強がって、言ってくれない可能性があるからだ。
その状況に陥ると、一向に課題解決ができなくなり、前に進めなくなってしまう。
最後にトークニズムを防ぐポイントを紹介していく。
職場の心理的安全性を高めると、お互いが安心して話せる関係性ができる。疑心暗鬼になることが減るため、トークニズムになりづらい。ちなみに職場の心理的安全性を高めるには、以下のことを行うことが大事だ。
ダイバーシティを大事にすることで、従業員たちが安心して働ける労働環境をつくることが期待できる。従業員たちの中に安心感が生まれたら、心理的安全性の向上につながる。結果、さまざまなタイプの従業員が会社でスキルを発揮しやすくなり、社内の戦力アップにつながっていく。
ダイバーシティ研修などを、管理職などマネジメント層に受けてもらうことも推奨だ。
偏見・差別による発言を失くす雰囲気をつくるのも大切だ。偏見・差別による発言が多いと、発言を聞いた従業員が委縮してしまう恐れがある。
従業員たちが自信を失くすと、思い切った行動を起こせなくなり、パフォーマンスを発揮しづらい。結果、心理的安全性が下がる。それを防ぐためにも、偏見・差別による発言を受容すべきではない。
心の余裕を持たせる理由は、各従業員たちがギスギスしない雰囲気をつくるためだ。各人の心に余裕が出れば、周囲のことを考える気持ちが芽生える。結果、従業員たちが安心して発言できる環境が生まれ、心理的安全性の向上につながっていく。
お互いが配慮し合う環境をつくれば、相手との信頼関係が強固になる。信頼関係を築けば、本音で言い合う雰囲気が出来上がっていく。結果、建前主義からの脱却につながるはずだ。
結果、トークニズムで話す状態を失くすのに役立つ。ちなみに相手を配慮する際は、以下のことを心掛けるといいだろう。
相手のタイミング・状況を意識しながら行動すれば、自分本位でアクションを起こしていると思われなくなる。
自分のことを気遣ってくれていると思ってもらえれば、相手から信頼を得やすい。相手を配慮する姿勢を見せる上で大事だ。
声を掛け合うことが大事な理由は、相手のことを気にかけていることをアピールするためだ。普段から声を掛け合えば、お互いの現状を把握しやすくなり、スムーズなコミュニケーションがとれる。しかも相手との距離感が縮まりやすくなるため、従業員間の関係性も良くなるはずだ。
ハラスメントが起こらない環境をつくる理由は、相手に不快な想いをさせないためだ。不快感を与えると相手との距離感が広がり、配慮に欠ける行動に見えてしまう。相手が清々しく過ごせる状態をつくるためにも、ハラスメントが起こらない環境は大事だ。
コミュニケーションは、個人の性格や持って生まれたものではなく「誰もが身に付けることのできるスキル」だ。そのため、社会人になってから学習を深めることや様々な価値観を持つ方と触れ合うことで、コミュニケーションスキルを高めることも可能だ。
社内コミュニケーション研修を受けてもらうことにより、スキルとしてどのように身に付ければ良いかが明確になる。「聞く」「伝える」スキルを中心に、「お互いにより良いコミュニケーションにするために、一人ひとりのコミュニケーションスキルを高める」という効果が期待できる。
普段から思い込みや決めつけがあると、うがった見方をしてしまい、トークニズムでしか話せないと勝手に決めてしまう恐れがある。結果、本音で話せなくなってしまう。
その状況を変える意味でも、思い込んだり決めつけたりしない状況をつくるのは大事だ。なお思い込みや決めつけを失くすには、以下のことを抑えるといい。
さまざまな視点を持って物事を見る習慣をつけておけば、自分だけの思い込みで行動する機会を減らせる。結果、さまざまな考えを受け入れられる人材になるだろう。
100%自分の考えが正しいと思わない理由は、第三者の意見を受け入れる状況をつくるためだ。自分の考えが全てだと思い込むと、他の人の意見が合っていても拒絶してしまい、思い込みや決めつけが強くなってしまう。
その状態を失くせば、思い込みや決めつけも自然と減っていく。
事実と自分の意見を切り分ける理由は、私情を入れないためだ。私情が入ると感情的になって、物事を冷静に見られなく恐れがある。中立的な立場で物事を見るためにも、事実と自分の意見は切り分けるべきだ。
ワークライフバランスがとりやすい環境を提供する理由は、職場で従業員をイライラさせないためだ。仮に仕事に大量の時間を割かれて、プライベートの時間を確保できないと、イライラしてしまう恐れがある。
早く退社したいという気持ちが生まれて、建前でもいいから早く会話を終わらせたい気持ちになるかもしれない。それがトークニズムのきっかけとなってしまう。従業員にその気持ちを持たせないためにも、ワークライフバランスがとりやすい環境をつくるのは大事だ。
不要な業務や会議を削れば、その分会社にいる時間を減らすことが可能だ。その結果、プライベートの時間が増えて、ワークライフバランスを整えやすくなる。
さまざまな働き方を用意すれば、自分に合った働き方ができるため、各従業員がパフォーマンスを出しやすい状況をつくれる。ライフスタイルに合う働き方ができれば、従業員のストレス緩和にもつながり、職場環境も良くなっていく。
結果、ワークライフバランスを整えやすくなる。
1日のスケジュールを可視化させると、自分がどのようなタイムスケジュールで動いているか把握しやすくなる。日々の行動が分かれば、プライベートを確保するために何をすべきか感覚をつかめるはずだ。結果、ワークライフバランスを整えるのも楽になるだろう。
具体的に伝える理由は、相手が理解していない状態で話を進めると会話の内容が分からなくなり、建前主義をつくってしまう恐れがあるからだ。
従業員によっては、話を理解するのが面倒だから何も考えずに適当なことを言ってしまうケースもある。その状態だと、トークニズムが生まれやすい。
しかし話を聞いている側がイメージしやすい状態をつくれば、何となくしか理解できていない状況で話を進めることが減っていく。
適当に相槌を打ったり話を聞き流したりする状況が減っていき、建前主義からの脱却につながる。したがって大事なことだと言えるだろう。なお具体的に伝えるときは、以下のことを意識すると良い。
全てのことを伝えようとすると、話にまとまりができなくなり、相手へ伝わりづらくなる。そのため、必要な情報のみ抽出して伝えることが大切だ。
難しい言葉を多用すると、相手が理解できなくなるかもしれない。たとえば専門用語や横文字を多用すると、シンプルな話が難しく聞こえてしまう。相手に理解してもらうためにも、簡単な言葉に置き換えて話すべきだ。
具体例を盛り込みながら伝えると、相手はイメージしやすくなる。そのため、話が伝わるまでの時間が短くなっていく。
トークニズムが起こると、会社にとってデメリットとなるケースがあるため、防いだ方が良い。たとえば、以下のデメリットがある。
これらは会社にとって悪い影響をもたらす理由になるため良くない。トークニズムを防ぐには以下の内容を覚えておくことが大事だ。
上記のことを意識すると建前主義がなくなり、トークニズムの予防に役立つ。従業員間がコミュニケーションを取りやすい状況をつくるためにも、トークニズムを失くす仕組みをつくっていただければと思う。