会社の業績を上げるために、目標設定をすることは大事だ。しかし目標設定をする方法はいくつもあり、どの方法を使うかで効果の出方は変わる。
今回紹介するOKRも、そのうちの一つだ。OKRを活用すれば、社内の目標を全従業員に伝えることが可能だ。本記事ではOKRの概要を紹介しながら、導入するときの7つのステップや注意点を紹介する。
OKRとは「Objectives and Key Results」の略語で、会社が設定している目標・望むべき結果をチームや個人に落とし込むことで、達成を目指す手法のことだ。
1970年代にアメリカのインテル社で始まったと言われており、現在では数多くの企業で採用されている。
OKRの特徴は会社で設定された目標と必要な結果を達成するために、チームや個人にも目標と必要な結果を設定させることだ。
OKRでは社内の目標を達成するために、チームや個人単位でも目標や必要な結果を設定させる。
そのため全従業員が一丸となって、共通の目標に向かって行動できる。
会社の目標を全従業員に伝え、経営側と社員側で連携しながら達成を目指したいのであれば、OKRはおすすめだ。
ここでは、OKRを導入している企業を紹介する。
2000年代からOKRを導入している。四半期ごとに社内ミーティングを開き、OKRの評価を行っている。
上司は部下が設定しているOKRの内容や進捗状況を把握するため、定期的に1対1でミーティングする機会を設けているとのことだ。
2015年からOKRを導入した企業で、3カ月ごとに目標を設定している。グループ全体で設定されたOKRは、事業部、部署、チーム、個人へと落とし込んでいく。
特徴は難易度が異なる目標を複数設定していることだ。簡単に達成できそうなものから、成功率が20%程度のものまで様々だ。
場面に応じて、OKRの難易度を使い分けているのがメルカリの特徴だと言えるだろう。
Chatworkでは、従業員数が増えて一人一人の管理をしたり社内の目標を共有したりするのが難しくなったことをきっかけに、2017年からOKRの導入を始めた。内容を設定するときは、目標達成率が70%になることを心掛けている。
OKRの達成率は人事評価と連動させないものの、OKRによってどれだけチャレンジングなことができたかは評価対象にする。継続・改善を繰り返しながら、OKRを運用しているようだ。
ここからは、OKRを設定するメリットを3つ紹介する。
達成すべき目標が決まっているため、ゴールまでのプロセスが見えやすい。よって、逆算しながら業務計画を立てられるので便利だ。
OKRを達成するために必要な作業かという基準を設ければ、仕事の優先順位を決めやすくなる。優先順位を決めると、様々な効果が期待できる。
優先順位を明確にすれば不要な作業が浮かびあがってくるため、無駄な作業を減らすのがラクだ。
本来割くべき業務にコストをかけられるようになるので、労働コストを有効活用したい企業にピッタリだ。
優先順位の高い業務が分かりトータルの作業量を減らすことに成功すれば、社内の残業も減る。そのため従業員のワークライフバランスに力を入れたい企業にもいいだろう。
働き方改革の波に乗って、残業0を目指す企業にとっても、優先順位を決める効果はあるはずだ。
優先度順に業務を進めればいいため「どの業務から取り組むべきか?」を、考える必要がない。出社するたびに、どの業務から始めるべきか決めなくていいため、業務を進めやすくなるはずだ。
OKRでは会社が設定した目標や必要とする結果に向かい、全従業員が行動する。
それに伴い社内のモチベーションが上がれば、従業員の愛着心などを示すエンゲージメントの向上につながる。
実現できれば退職率を抑えたり、不満を言う従業員を減らせたりできるため、会社にとっていい機会となるはずだ。
OKRを上手く活用して職場環境を良くしたり、従業員満足度を上げたりしよう。
OKRを成功させるには、順番通りにステップを踏むことが大切だ。ここでは7つのステップに分けて紹介する。
会社全体の目標を設定するところからスタートしよう。以下のことを意識すると、OKRに効果的な目標を設定できる。
全従業員に共有するため、経営陣だけが分かる目標にしても意味がない。新入社員でも理解できる目標を設定しよう。
OKRを運用するときは、定期的に進捗状況を確認する。その際に、数値化して確認できる目標にしよう。
たとえば「社内の雰囲気を良くする」という目標だと、進捗状況を伝えるときに数値化しづらいため、共有されても分かりづらい。
しかし「3カ月間で売上を上げる」という目標であれば、進捗状況を伝える時に「現段階で売上〇万円を達成しました」と数字で進捗状況を報告できる。
そのため進捗状況を伝えるときは、可視化しやすい目標を設定しよう。
絶対に達成できない目標では、設定する意味がない。従業員が「頑張れば達成できそうな気がする!」と思える難易度の目標にしよう。
社内に役立たない目標を設定しても意味がない。経営陣のエゴのみで決めるのではなく、会社全体のことを考えて設定しよう。
OKRは長期にわたってダラダラ行うものではない。そのため、〇カ月間というように期限を設けることが大事だ。
目標設定が雑だと、その目標を達成させるために従業員がどのように動けばいいか分からなくなる恐れがある。したがって、全従業員が把握できる目標を設定することが大事だ。
ステップ①で設定した目標を達成するために、必要な成果を社内で設定する。設定するときは、数値などで可視化することが大事だ。たとえば、このようなイメージだ。
上記のように数値化して必要な成果を設定しておけば、進捗状況を報告したときにゴールまでどのくらいかが分かるため便利だ。
チームとして、会社が設定した目標や必要な結果を叶えるために必要なOKRを設定しよう。なお、決める時はステップ①と②で紹介した方法を使えば大丈夫だ。
チームで決めたOKRを参考にしながら、個人単位でも設定しよう。こちらもステップ①と②で紹介した内容を参考にしながら決めてもらおう。
ただ個人でOKRを設定すると、会社が定めるOKRとかけ離れたものになる恐れがあるため、上司と話し合いながら決めた方がいいだろう。
OKRの運用が始まったら、定期的に進捗状況を報告し合おう。報告するメリットは以下の通りだ。
他の人の報告を聞けば、自分がどのくらいの位置にいるかが分かる。さらに第三者からフィードバックをもらえるチャンスがある。
よって自分がやってきたことを、修正したり改善点を考えたりする機会が生まれやすい。新たな発見が生まれるチャンスもあるので、自分の見聞を広める意味で報告した方がいいだろう。
各個人が仕事をしているか確かめる場としても役立つ。全く仕事をしていなければ、進捗状況は0だし、どんな仕事をやったかも言えない。
逆に仕事をしている場合は進捗状況が変わったり、やってきた仕事の内容を言えたりする可能性が高い。
したがって、進捗状況は仕事をしているか確かめる絶好の場と言える。
定期的に進捗状況があると知っていれば、従業員は成果を出すために働こうとする可能性が高い。
だからこそ仕事をサボらない仕組みづくりとしても、報告し合うことは大事だと言える。
たとえば「〇〇さんが頑張っているから自分も負けないようにしよう」、「チームメンバーがいる前で上司に褒められたから、もっと行動しよう」など、モチベーションアップも期待できる。
他の人と共有し合えばモチベーションが下がっている人も、やる気を取り戻せるかもしれない。チーム全体の士気を上げる意味で大事だ。
様々なメリットがあるため、共有し合う機会は定期的に設けた方がいいのだ。週1、毎週金曜日というように組んでおくと、報告漏れの心配もない。
各メンバーが別の場所にいる場合も、オンラインツールを使えば共有し合えるため有効活用しよう。
期限を迎えたらOKRで設定した目標を達成できたか社内で共有する。達成率だけではなく、その結果になった理由も伝えさせることが大事だ。
共有した内容をデータとして残せば、OKR以外の場面で役立つ場合があるので議事録として残しておこう。
OKRの結果を共有し終えたら、次回のOKRに関する目標を立てよう。ステップ⑥で共有した内容や社内の状況に合わせるといいだろう。
OKRを運用しても最初は失敗するかもしれない。しかし何度か運用しているうちに、少しずつ形になってくる。改善しながら何度も挑戦し続けることが、OKRの運用を成功させるコツだ。
MBOやKPIなどOKRと似た単語はあるが、それぞれ意味は違う。ここでは、OKRとの違いを解説する。
MBOとは目標管理のことで、個人が達成すべき目標を決めて管理する手法だ。OKRとの違いは以下の通りだ。
目標設定の方法や、情報の扱われ方の部分でOKRと似て非なるものと言える。
KPIとは重要業績評価指標のことで、会社が定めた目標を達成するための行動を部署ごとで決めさせる手法だ。OKRとの違いはこちらだ。
目標が設定される範囲や、目標が変わる頻度の面でOKRと似て非なるものだと言える。
最後にOKRを運用するときの注意点を3つ紹介する。
感覚だけで目標を設定するのは危険だ。たとえば「景気が良くなると思うから高額商品の売り上げアップを目指す」というイメージだ。
感覚のみに頼ると、現状に合わない内容の目標を設定する恐れがある。それを回避するには、データを見て分析することが大事だ。実際に例を見てみよう。
このようにデータを見て、最適な目標か判断することが大事だ。時代背景によって最適な目標は異なる。感情的になるのではなく、事実と根拠に基づいてOKRの目標を決めることが大事だ。
難易度が高すぎても低すぎても従業員のモチベーションを削ぐ恐れがあるため、6~70%の目標達成率を意識して設定しよう。
紐づけてしまうと簡単に達成できそうな目標を設定する従業員や、評価を気にするあまり積極的に動けない従業員が増えるかもしれない。
チャレンジ精神を持たせるためにも、OKRの結果を人事評価や報酬に紐づけるのは辞めよう。
社内で定めた目標と望むべき結果を達成させるために、チーム単位・個人単位で共有するのがOKRの特徴だ。OKRのメリットは以下の通りだ。
OKRを運用すれば、従業員の仕事に良い影響を与えるかもしれない。ただしOKRを運用するには、適切なステップを踏むことが大事だ。ステップは以下の通りだ。
初めのうちはOKRを導入しても失敗するかもしれない。しかし適切なステップを踏んで、何度も回していけば少しずつ改善されていくはずだ。
ぜひ、今回紹介した記事を参考にしながらOKRを導入してほしい。