AI、IoT、フィンテックなど、新たな技術やビジネスアイディアが続々と登場する現代では、自社の競争力を高めるため正確ですばやい問題解決能力が求められる。そうしたシーンで役立つのが、ロジカルシンキング(論理的思考)だ。
ロジカルシンキングを学ぶと、これまでに経験したことのない問題をスマートに解決したり、顧客やビジネスパートナーに説得力のある提案を行ったり、ビジネススキルを飛躍的に高めることが可能だ。
この記事では、ロジカルシンキングをトレーニングする方法を紹介していく。
ロジカルシンキングとは、日本のビジネスシーンで生まれた業界用語で、目の前の問題の本質を見抜き、論理的な推論を展開して結論を導くスキルのことだ。
よく似た言葉として、物事を客観的に分析するクリティカルシンキングや、独創的な思考のフレームワークであるラテラルシンキングがある。
ロジカルシンキングを鍛えるメリットは3つある。具体的には以下の通りだ。
適切な施策を打ち出すには、まず解決すべき問題を特定しなければならない。
ロジカルシンキングを学ぶことで、会社や部署として取り組むべき課題をはっきり定義できるようになる。
例えば、ロジックツリーのフレームワークを使ってみよう。会社が抱える現状の課題やその規模、問題の具体的な原因となっている部署やグループなどを視覚的に表現することが可能だ。
ロジカルシンキングを学べば、論理的かつ客観的な議論を展開できる。演繹法や帰納法を正しく使用すれば、一般的な事実や具体的なデータに基づき、説得力のある結論を導ける。
また、ピラミッドストラクチャーを使えば、会社として目指すべきゴールや、上層部に提案したい案件に対し、根拠となる事実や事柄を積み重ねて、筋道の立った議論を展開できる。
ロジカルシンキングを習得すると、インプットだけでなく、アウトプットのスキルも改善する。
自分の主張を相手に理解してもらうためには、要点や論点を整理し、ロジカルな提案を行う必要がある。ロジカルシンキングはコミュニケーション能力と表裏一体の関係にある。
ロジカルシンキングを学べば、ビジネス上利害が対立するようなケースでも、説得力のある議論を積み重ねることで、意見や立場の違いを超えて合意に達することが可能だ。
論理的な思考に共通する枠組みや骨組みを学べば、企業戦略やマーケティング戦略の立案から、日々のちょっとした問題解決にまで応用可能だ。
具体的には以下の4つのフレームワークを活用していく。
演繹法は「三段論法」とも呼ばれ、一般的なルール(大前提)や観察できる事柄(小前提)から、論理的な結論を得る方法だ。
たとえば、便益が費用を上回るときのみ投資するという大前提を置く。
次に、立案中のプロジェクトは費用便益分析において、メリットのほうが大きいという小前提を置く
小前提は大前提に当てはまっているため、このプロジェクトは実行すべきという結論が得られる。
帰納法は演繹法とは反対に、一般論からではなく、一つひとつの観察事項から説得力ある結論をみちびく。たとえば、新しいダイエット商品を使ったA~Zの被験者が、いずれも減量に成功したため、新商品には一定の効果があると判断するような場合だ。
帰納法は統計的な手法とも関連がある。アンケートを使った市場調査も、身近な帰納的推論の実例のひとつだ。
演繹法と帰納法については、「演繹法と帰納法とは?具体例を中心に、わかりやすく解説!」でも詳しく解説している。
ロジックツリーは、問題点を定義し、体系的に整理するのに役立つフレームワークだ。
まず、ツリーの上位にテーマを置き、その要素となる事柄や事実をツリー状に配置する。
たとえば、「会社の売上が低下している」というテーマを置く場合、下位のツリーに事業部ごとの課題を、さらに下位のツリーには商品別の課題を書くことで、会社の抱える問題が視覚的にわかる。
ロジックツリーを使うときに大切なのが、「MECE(ミーシー)」という観点だ。MECEとは、「漏れなくダブりなく」を意味する。ロジックツリーを書く際は、ツリーに漏れがないか、同じツリーを書いていないか注意しよう。
ロジックツリーとは逆に、ピラミッドの上部に結論を置き、下部に結論を支える根拠を積み重ねていくのが、ピラミッドストラクチャーだ。
ロジックツリーは「集合と要素」のツリーでしたが、ピラミッドストラクチャーは「結論と根拠」のストラクチャーをつくる。
例えば、「新たな市場Aに参入すべき」という結論を頂点に置き、「市場の将来性」「自社の強み」「財務状況」などの根拠を下部に配置する。
会社として目指す結論とその根拠がグラフィカルに表現されるため、問題や課題の解決に役立つフレームワークだ。
上記のフレームワークを使いこなすだけでも十分スキルは身に付く。ただ、個人の学習に任せる形になりがちなため、企業としては以下のトレーニング方法を活用することが推奨される。
ロジカルシンキングを鍛えるのにおすすめなのが、「フェルミ推定」の問題を解くことだ。
フェルミ推定とは、実際に数えると時間がかかるような問題を、論理的推論によって短時間で概算することだ。問題の分析力や頭の柔らかさを問われるため、ロジカルシンキングを学ぶのにぴったりだ。
たとえば、ロジカルシンキングを学べる例題として「日本に電柱は何本あるか」を考えてみよう。電柱をひとつずつ数えると膨大な時間がかかるが、ロジカルシンキングならすぐに概算できる。
2016年度の電柱の数は、34,071,436本だ。フェルミ推定により近似値が得られたとわかる。[注1]
ロジカルシンキングのトレーニング方法として有効なのが、ディベートだ。
ディベートとは、1つの主題に対し、賛成側と反対側の2つの立場に立って議論することを意味する。
さまざまな課題やテーマを深く掘り下げ、肯定・否定の両面から客観的に検討する練習となるため、ロジカルシンキングの習得に適している。
司会者や審判などを用意できず、社内でディベートを行う機会がない場合は、セルフディベートもおすすめだ。時間と場所を選ばず、ロジカルシンキングを身につけられ、さまざまなテーマの理解も深まる。
ディベート研修などを開催することも一つの手段だろう。
部署やグループ単位でロジカルシンキングを底上げしたい場合は、ロジカルシンキング研修や問題解決研修の中でグループワークを開催し、参加させることがおすすめだ。
ロジカルシンキングは推論能力だけで成り立っているわけではない。問題を分析する力、論理的に議論を展開する力、それを説得力ある言葉で伝達する力など、さまざまなスキルが関わっている。
ロジカルシンキングをテーマとした研修カリキュラムは、こうしたスキルをひとつずつ身につけ、客観的に考え、伝えられるビジネスパーソンを育成することを目的としている。
問題解決力、論理的思考能力、ロジカルシンキングが社内の課題となっている場合は、研修を利用するのもひとつの選択肢だ。
今回は、ロジカルシンキングの鍛え方や学ぶメリットを解説した。考え方ややり方を知っていても、仕事にて活用しなければ意味がない。本記事を参考にしながらぜひ問題解決等にロジカルシンキングを活用してほしい。