ジョブローテーションとは、社員の能力開発のために、人事計画に基づいて行われる戦略的人事異動のことを指す。かつては長期雇用を前提とする日本企業ならではの仕組みと捉えられていたが、今日では柔軟で多様な経験を持つ社員育成のために導入されるケースが増えている。社員の異動をともなう人事制度であることから、制度の理解を深めたうえで設計することが重要だ。
そこで今回は、ジョブローテーションを導入する上でのポイントを紹介する。
ジョブローテーションとは、人材育成の目的を持って、計画的に、従業員の職場や職務を変更することを指す。さまざまな場所で経験を積んでもらうことで、従業員のスキルアップや知識の充実、さらにはお互いの仕事をカバーできる体制や組織風土をつくることを狙いとしている。
ジョブローテーションは、単なる配置転換ではなく、目的をもって人事戦略として行うことが必要とされる。ジョブローテーションの主な目的を下記に紹介しよう。
社員に幅広い業務を経験させることで、業務や職種への理解が深まる。各部署の具体的な業務や、異なる部署間の関連性は組織図を見るだけでは把握しにくいが、ジョブローテーションによってさまざまな業務を経験することで、業務や部署の関連性を把握することが期待できる。それぞれの業務の役割や重要性が見えてくれば、組織の一員としての意識が高まるだろう。
社員に幅広い業務を経験させることで、適材適所、適正の見極めが可能となる。ジョブローテーションで、一定期間さまざまな業務を経験することは業務の関連性も社員が経験できることとなる。
ジョブローテーションは会社の全体像をつかむためにも有効といえる。いままである一部分だけを見ていたものが、ローテーションをすることにより木を見て森を見ることができるようになる。社員側の視点、成長も期待できるため、移動させられる方にもメリットがあるだろう。ジョブローテーションとは、社員育成には欠かせないものともいえる。
ここでさらに具体的なメリットをそれぞれの立場から見ていこう。ジョブローテーションのメリットは、企業側と従業員側の双方にある。
部署内で業務が固定化されると、社員の視野が狭くなり、組織全体にとっての最適な回答が見いだせないことになる。部署の垣根を越えたジョブローテーションで、さまざまな分野にチャレンジさせ、組織全体を活性化させることが可能になる。
いろいろなことにチャレンジできる企業は、新入社員の早期退職の防止にもつながるともいわれている。固定観念だけで人事配置をしない方が良いという面があるともいえるだろう。
ジョブローテーションにより他部署との幅広い人間関係の構築が可能だ。また部署外のつながりが増えれば、所属部署内で課題が生じた場合に、客観的なアドバイスも受けられる。部署内だけでは見落としていた部分でも、客観的な視点を取り入れることで、課題の早期解決につながるだろう。
自身の適性を知り、その適性や能力を生かすための前向きなきっかけになるのもジョブローテーションだ。キャリアアップも、もちろん期待できるだろう。
つぎにジョブローテーションの注意点を見ていこう。
ジョブローテーションを行うためには、しっかりした研修や目的のプランニングが必要だ。単にごちゃごちゃ動かせばよいというわけではない。研修やセミナーなどもふまえてしっかりとしたプログラムを組み立てる必要がある。
ローテーションするための人材分析や、本人の長所と得意なものとそうでないものの理解も必要だ。人事がそれを理解していなければ、あまりに畑が違いすぎて本人が異動を生かせなくなってしまう。
異動した際にはその人材にはサポート体制を移動部署側の管理職とともにきちんととっていくことが大切だ。異動者に不安を持たせないようなサポートが必要だ。
異動の業務に関して、自己申告で半期ごとの目標や成果をまとめられるシートなどを常に作っておくと、見直しや問題点を見つけやすくなる。
異動した社員が何か困っていないか、悩んでないかなどを定期的に面談でヒアリングすることも忘れないようにしたい。社員が現場を知ることで悩みも出てくるであろう。キャリア考慮しつつ、定期的にフォローしていく。
ジョブローテーションの成功事例を見ていこう。
公募をしてポジションを動かす制度を持っている。自由度の高いジョブローテーションを自ら利用するにあたって、社員はやりたいことが見つかり、一つのことに拘らなくていいということで好評のようだ。
ジョブローテーションを導入することで、労働環境が整い、早期退職する社員も減ることが期待される。
家族が介護中の社員に対してもジョブローテーションを行っている。在宅勤務がOKとして就業させ、時間を調整する勤務体制にすることで業務負担を減らしながら長く働くことが可能となる。基本的にはこのような事情や子育てや出産などを控えている社員がいたとすると転勤に同意の上で現職に就いていても、転勤できない理由があればそれを調整することができる。
今回ジョブローテーションのメリットや、導入する上でのポイントや注意点をご紹介してきた。ジョブローテーションを行うことで、企業も社員も双方にメリットがあることがお分かり頂けただろう。
社員それぞれの得意不得意を理解しながら適正を見極め、紹介したポイントや注意点を意識しながら効果的な運用をして頂きたい。そして、組織の活性化や早期退職防止に役立てて頂ければと思う。