チームの仕事の出来は、部下の働き方によって変わる。積極的に業務を受けてくれる部下が増えれば、上司の負担は小さくなる。その結果、チームとして生産性の高い働き方を実現させることが可能だ。その状況を実現させる上で、必要なのが「フォロワーシップ」だ。フォロワーシップを強化すれば、上司を支えようとする部下が現れて、チームの状態が良くなっていく。
しかし、正しい方法が分からなければ強化するのは難しい。そこで今回は、フォロワーシップの概要を解説しつつ、強化する方法やポイントを中心に紹介する。
フォロワーシップとは、チームの成果を最大化させるために、自律的かつ主体的にリーダーや他メンバーに働きかけ支援することだ。強化されると、リーダーが困ったときに力を貸してくれる部下が増える。チームの業務を円滑に回すときに大事だ。上司の指示がなくても、部下が自ら動こうとするのが特徴だ。
ちなみにメンバーシップと呼ばれる言葉もあるが、これは自分の力を発揮させて、チームの成果を挙げようとする行為であるため、別物だと言える。
フォロワーシップが大事な理由は以下の通りだ。
上司のために頑張ろうとする部下が増えれば、業務を早く終わらせることが可能になる。繰り返すことで業務の時間は短くなっていき、業務効率が高まっていく。時間を確保したいチームにとって、フォロワーシップは大事だ。
メンバー間で信頼関係を生み出すのも大事な理由だ。リーダーとフォロワーの間で生まれる場合もあれば、フォロワー同士で生まれる可能性もある。チームの中で信頼関係を築ければチーム一丸となって業務に取り組める体制が出来上がり、まとまりができていく。メンバー達が同じ方向を向くようになるため、チームで活動しやすくなる。
他の社員のやる気に影響され、自身のやる気を高める効果が期待できる。それが社内に広がれば、職場の士気を高めることになるだろう。積極的な行動をする社員を増やす意味でも、フォロワーシップは必要だ。
ロバートケリー教授は貢献する力と批判する力を軸にして、フォロワーのタイプを5つに分類した。全ての部下が同じタイプであれば良いが、そうなることは珍しい。
タイプに合わせて接し方を変えないと、フォロワーシップの強化に支障をきたす。ここでは5つのタイプを紹介しながら、どのような特徴があるか紹介する。
このタイプはリーダーに生産的な意見を言いながら、チームを良くしようとするのが特徴だ。リーダーシップも高くチームへの貢献度も高いため、5つの中で最も理想的なタイプだと言われている。
リーダーに批判はするものの、自分で行動したりプロジェクトに関与したりすることは少ないのが特徴だ。意見を言うのは好きだが、チームへの貢献度は低い。チームのために取り組む姿勢を覚えさせることが大事だ。
リーダーから指示されたことは積極的に行うものの、否定的な意見は言わないのが特徴だ。意見に逆らわず行動する分、リーダーにとっては扱いやすい。しかし意見は言わないため、発言力を高めてもらうことが大事だ。
自分で責任をとったり、積極的な行動を起こしたりするのが苦手だ。指示されたとしても、最低限のことしかやらないのが消極的タイプの特徴だ。チームへの貢献度、発言力ともに低いため、5つのタイプの中でも存在感が薄いフォロワーだと言える。行動力・発言力ともに高めてもらうことが大事だ。
適度に自分の意見を言ったり、業務に取り掛かったりするのが特徴だ。ほどほどに動くケースが多い。無難に取り組んでいく一方、新しいことに挑戦するのは苦手だ。チャレンジ精神を身につけさせるといいだろう。
フォロワーシップを強化するには、様々な方法がある。ここでは5つの方法を紹介する。
社員同士のコミュニケーションの機会をつくれば、メンバー間で絆が強まりリーダーをサポートする気持ちが生まれやすくなる。それがフォロワーシップの強化につながっていく。
なお、社内でコミュニケーションを活発化させたいときは、以下のことを実施すると良い。
懇親会や社内旅行、チーム対抗の運動会など、様々な種類のイベントがある。自然と社員同士で集まる習慣ができるため、コミュニケーションの活性化につながるはずだ。楽しみながら交流させたいときに便利だ。
社員同士で話す機会を設けるのも、コミュニケーションの活性化に役立つ。上司とメンバーが1対1で面談する「1on1」。全メンバーで情報のやり取りなどを行う「ミーティング」など、様々な方法がある。
意見を伝えやすい雰囲気にすれば、社員達は発言しやすくなる。意見交換が活発になれば、お互いの状況が分かってくるため、フォロワーシップの強化につながっていく。意見を伝えやすい雰囲気にするときは、以下のことを行うと良い。
たとえばミーティングであれば、開始前に雑談したり、ちょっとしたゲームを行ったりすると、場の緊張はほぐれる。ワンクッション挟んでから発言させることで、メンバーも意見を言いやすくなるだろう。
相手を睨むなど威圧的な態度をとると、メンバー達は委縮してしまい、発言しづらくなる。相手が発言しやすい状況をつくるためにも笑顔を見せるなど、相手が話しやすい雰囲気の表情をすることが大切だ。
相手の意見を拒否すると、発言を躊躇う原因になる。仮に自分の意見と違ったとしても、一旦聞き入れることが大事だ。上司に聞き入れてもらえたと思わせれば、発言しやすくなるだろう。
部下に考えさせる時間を与えれば、自身で創意工夫しようとする。積極的に上司をサポートしようとする気持ちが生まれやすくなるため、フォロワーシップの強化が期待できる。
これが上司からの指示が当たり前の状況になると、部下が積極的に行動を起こさなくなり、フォロワーシップの強化に支障をきたす。
フォロワーシップ研修を実施することで、スキルが強化しやすくなる。フォロワーシップの大切さを理解したり、上司を支援する社員の生み出し方を知ったりなど、様々な研修内容があるため、リーダーなどに受講させるといいだろう。
ちなみに社内で研修を実施する場合、プロの講師に任せたり、研修会社に助言をもらいながら、カリキュラムを決めたりすることが大事だ。ノウハウがない状況で行っても結果は出ない。時間やコストを無駄にしないためにも、ベストな状態で実施すべきだ。
部下が行ったことに対して、フィードバックするのも効果的だ。部下がアクションを起こしやすくなるため、フォロワーシップの強化につながる。なおフィードバックでは、以下のことに注意すると良い。
人格否定は社員の自信を削ぐことにつながる。最悪の場合、仕事ができない状況になってしまい、チームの業務をストップさせる事態が起こるかもしれない。結果、フォロワーシップの強化が難しくなってしまう。
フィードバックは改善点を伝えるだけではない。良かった箇所を褒めるのも必要とされる。自分の長所を把握させれば、長所を伸ばそうと努力する状況を生み出す。自主的に行動する社員を増やすことになり、フォロワーシップの強化にもつながる。
早いタイミングで伝えることも大事だ。遅くなると改善までに時間がかかったり、社内の状況が変わって効果的なフィードバックができなかったりする恐れがある。その状況を防ぐ意味でも、気付いた段階でフィードバックすべきだ。
最後にフォロワーシップを強化するときのポイントを紹介する。
クリティカルシンキングとは、批判的思考とも呼ばれる。事象に対して、自分なりに分析し最適な答えを出そうとする考え方のことだ。
クリティカルシンキングのスキルを習得させれば、相手の意見に対する懸念点や疑問点が浮かびやすくなる。意見を言える社員が増えるため、効率的にフォロワーシップを強化できる。とくに発言しない部下に対しては、行った方がいいだろう。
チーム内でネガティブな発言が増えると、フォロワーシップの強化に支障をきたしてしまう。なぜならリーダーに非協力的な部下や、自分本位の部下を増やすことになるためだ。チームにとって良くない状況が出来上がるため、ネガティブな発言は控えさせた方が良い。ちなみにネガティブな発言をする部下に対しては、以下の手法が効果的だ。
成功体験を積ませれば自信がついてポジティブな発想が増える。したがって、ネガティブな発言を控えさせるのに役立つ。ちなみに仕事で成功体験を積ませるときに、いきなり難しいミッションを与えるのはNGだ。
プレッシャーに押しつぶされたり、失敗するリスクが高くなったりして、成功体験を積ませたりするのが難しくなる。したがって、少し努力をすれば成功できそうなミッションを与えることが大切だ。
ポジティブな社員と交流させると発言や行動などを、いつの間にか真似するようになる。その結果、ネガティブな発言を控えるようになる。定期的に交流する機会をつくるといいだろう。
業務を強引にさせると、部下は不快な気持ちを持ってしまい、リーダーをサポートしなくなってしまう恐れがある。万が一、部下が納得していない状況だとしても、強引に納得させてはいけない。この状況をつくってしまうと、フォロワーシップの強化は難しくなる。よって、部下に納得してもらった状態で働いてもらうことが大切だ。
たとえば部下の目線に立って話したり、分かりやすい言葉で伝えたりすると、相手が納得しやすい状況ができる。その状況をつくれば、フォロワーシップの強化も楽になるだろう。
部下が上司をサポートする体制をつくるには、フォロワーシップの強化が欠かせない。部下が積極的に行動を起こしてくれれば、チームを管理するのが楽になる。
全ての部下が上司をサポートする人材になれば、チームの運営も楽になる。しかし、その状態をつくるのは難しい。部下と言っても、様々なタイプがいるためだ。「上司に意見は言うが行動を起こさない」、「意見を言うことも行動を起こすこともない」と言った形で、様々なタイプの部下が存在する。
その状況を放置する会社もあるが、フォロワーシップの強化を目指すのであれば改善に力を入れるべきだ。そのため、部下のタイプによって接し方を変えることを忘れてはならない。以下の方法を上手に使い分けるといいだろう。
上手に使い分けることができれば、大きな効果を発揮してくれるはずだ。さらに、フォロワーシップ強化のポイントもあるため紹介する。
効率的にフォロワーシップを強化させたいのであれば、これらを抑えておくことが大事だ。部下が上司をサポートする体制ができれば業務の効率化が進み、社員達が働きやすい環境になる。社員達で協力し合う環境をつくるためにも、フォロワーシップの強化に力を入れていただきたい。