社会に出て働く上で、ビジネスマナーはとても重要だ。企業や組織では、ビジネスマナー研修として、入社当初叩きこみ社外の人と円滑に仕事を行えるようにすることが多い。
しかし、最低限身に付けておくべきビジネスマナーは何かという定義は難しい。また、どのようにビジネスマナーの教育をすればいいのか、悩んでいる人事担当者の方もいるのではないだろうか。
そこで、今回はビジネスマナーの基本について解説する。新入社員や中途入社に向けての研修や勉強会を実施する前にぜひ読んでほしい。
仕事をするための土台となるビジネスマナーの基本を紹介する。
ビジネスマナーとは社会人が働く上で必要とされるマナーのことを言う。
ビジネスマナーと一口にいっても内容は多岐に渡る。まず社会人としてきちんと挨拶をすること、時間を守ることといった基本的な内容から名刺交換、来客対応などは当然といえる。
新入社員には仕事で関わる相手を不愉快にさせないこと。仕事は人とのつながりとコミュニケーションが不可欠であるため、ビジネスマナーがないと成り立たないということを研修で理解させよう。ビジネスマナーの基本は相手を尊重する気持ちだ。気持ちが伝わるため仕事を円滑に進めることができ、信頼関係が生まれる。
表情、挨拶、身だしなみ、言葉遣い、態度をマナーの5原則と言い、印象形成のポイントと言える。詳しく説明しよう。
新入社員は明るい表情も大事だ。相手に不快感を与えないためにも不貞腐れた表情や暗い表情では失礼にあたってしまう。挨拶の際、明るい表情の社員は好印象をもたらす。 常に笑っている必要はないが、不快な印象を与えないような表情を心掛けよう。
人の話を聞くときには相手の顔を見ない、ふてくされた表情をするなど、ビジネスの場においては、周囲の人に不快感を与えるような協調性のない態度は禁物だ。
仕事中の態度は大事なことは当然だが、あいさつは元気に行うことが新入社員の基本ということを覚えてもらおう。オフィス内では積極的に仕事に取り組む姿勢を見せることが大事だ。そのためには朝は元気に「おはようございます。」帰りは「お先に失礼します。」といったように気持ち良い挨拶ができる新入社員は自分の仕事への切り替えもしやすい社員となる。
気がつかないまま取ってしまいがちな態度とあわせて挨拶をきちんとすればすがすがしい立ち居振る舞いもついてくる。ハキハキと挨拶することは、ビジネスにおいて、挨拶はすべての基本だ。
身だしなみも重要なビジネスマナーだ。第一印象がビジネスにおいては重視されるため、常に身だしなみを整えておくこと。髪型が乱れていたり、シワだらけのスーツや汚れた靴では相手から不快に思われることもさながら、信用されないこともある。
社員を教育する立場の人間もきちっとした態度で社員を教育しなければ説得力がないはずだ。社員の身だしなみが悪ければ指導しなければならないので、社員全員が高いものを着なくてもいいので、不快感を与えないような身だしなみを心掛けよう。
身だしなみを整える際は、以下の箇所をチェックしよう。
・髪:清潔か。
・スーツ:シワをとり、シャツの襟や袖が汚れていないか。
・ネクタイ:曲がっていないか。
・ボトムス:適度な裾の長さか。
・スカート:丈の長さが短すぎないか。
・靴:汚れ、痛みはないか。
・男性:髭が生えていないか。
・女性:ナチュラルメイクで派手すぎないか。
きちんと整えられた身なりは相手に好印象を与えるだけではなく会社のイメージアップにもなる。
正しい敬語が使えているか、という部分が言葉遣いで気をつけたい部分だ。会話だけではなく、ビジネスメールや電話応対の中でも適切な言葉遣いが活用できることが求められる。
仕事において、指導を受けた際にふてくされたり無口になったりするなど反抗的な態度、嫌いな人に挨拶や返事をしないなどの態度は相手にも不快感を与える。挨拶や態度がきちんとできないと次のような仕事の姿勢も出やすいので注意する。
・あくびをする
・あぐらをかく
・ひそひそ話をする
・返事が小さい
・返事をしない
・呼ばれてもすぐに動かない
またデスクの整理整頓も大事なこと。整理整頓されていない机では、書類を探すのにも時間がかかり、非効率的であることも教えておきたい。セキュリティの観点からも、重要な情報が書かれた書類などを出しっぱなしにしないように研修しておく必要が企業としてはある。
基本の5原則を理解したうえで、基本的な勤務中のマナーを紹介する。
時間を守らない人は、仕事や待ち合わせの相手のことを大切に思っていない人と思われてしまう。始業に関しても、遅くとも5分前には席に着くようにしよう。
人の名前を覚えることはマナーの基本中の基本。社内のメンバーに関してはできる限り下の名前も覚えておくといいだろう。
話しかけられた際、パソコンに向かったまま返事をするのではなく、できる限り体ごと相手側に向かせるようにするべきだ。
感謝は伝えてマイナスになることはなく、プラスの要因にしかなりえないため、感謝は必ず伝えるようにしよう。
虚偽の報告をすると後々大きな問題に発展する。見つかった場合は信用がこれ以上無いほど落ちるため気をつけるべきだ。
同僚や先輩へのお金の貸し借りには注意しよう。貸すのであれば返ってこなくても構わないという気持ちで貸すべきだ。
人間、誰しも好き嫌いはあるが、個人的な感情で、言動を左右することがないようにしなければならない。
部下から上司に対して行う仕事を進める上で大切なのがコミュニケーションだ。社会人として必要なコミュニケーションを習得しなければいけない。
円滑な人間関係を作ることが仕事に馴染むためのコツとなる。職場の人間関係を作っていく上で、いくつかのポイントがある。
仕事をしていく上で、会社や上司、同僚に対して批判をしたい気持ちが出てくることが必ずあるが、本人に聞かれなくとも、話を聞かされた人はあなたに対しての信頼感を下げてしまう。そのため、反対意見がある場合には、相手に直接伝えるべきだ。
会社の一員として、改善する必要があれば、自らの意思と行動で改善していける立場であることを意識する必要がある。
企業人としての立場をわきまえて、発言や行動をしなければならない。親しさの中でも一定の距離感を保たなければならない。特に上司とは、けじめが大切だ。
言葉遣いよりも大切な話し方の基本となるポイントを「聞く側」と「話す側」に分けて紹介する。
まずは「聞く」というより心と体を傾けて「聴く」ことを心がける必要がある。
・うなずく、あいづちを打つ
・相手を見る
・相手が話しているときは口を挟まない
・メモを取る
相手の話に共感を持って「聴く」姿勢がビジネスに繋がっていくと考えよう。
話す側になったときは、意図を簡潔にわかりやすく伝えることをゴールということを意識する。
・簡潔に話す
・ボディランゲージ
・相手を見る
・ユーモアを交える
上記だけでなく、話すときの姿勢にも注意しなければいけない。また、話す話題についても不愉快な話題(上司、同僚の陰口、自慢話など)は避けるべきだ。
言葉の使い方が不適切であるために誤解を招くことや、印象まで変わってしまうことに繋がる。そのため、敬語の苦手意識を払しょくし、好印象を与えられるようしっかり習得する必要がある。敬語は、年齢差、先輩・後輩との差、階級の差、相手との差や距離を埋める役目を果たしてくれる。
敬語を使うことで誰とでも会話が可能になり、社会人としての常識をはかる尺度友いわれている。正しい敬語そのものも大切ではあるが、それ以上に大切なのは敬意を払う気持ちであることも意識しよう。
社会人の言葉遣いとして、クッション言葉(お手数ですが~等)や、肯定的表現(~は出来ませんが~ならできます等)を使って、表現を和らげることも大切だ。また、語尾を依頼形にすることで、相手に決定権を移すことも可能になる。
会社の第一印象は最初に接する人の応対で決まる。特に、接客業をメインとして働く方は、以下をベースにした上で接遇マナー研修などを受講することと、スキルや考え方がさらに強化されるだろう。
どのような人であっても丁寧に迎えることを心がけなければならない。来客応対のポイントとしては以下4つの点だ。
・笑顔で対応する
・ 公平に接する
・ 来客を待たせない
・ 来訪の目的をしっかりと掴む
上記は基本項目であるため、常に意識できるようにしよう。
来訪してくれた人へはエレベーターホールまで見送ることや、ドアを開けて対応することも忘れてはならない。また来客予定があった際には会議室をあらかじめ予約しておくだろうから打合せの資料をもって、会議室へ案内する。ドアや照明、換気などにも気を配って部屋に案内しよう。
名刺とは相手の顔となるものだ。分身のようなものだと考え、丁寧に扱うのが基本となる。また反対に、自分の名刺は自分の顔となるため、汚れや折れ曲がっているなどすると、身だしなみと同じように信頼を失う原因となる。
名刺の出し方は次の通りだ。
受け取り方は次の通りだ。
その他にも、同時交換や、複数交換などの交換方法がある。
訪問のマナーとして、訪問前の準備と訪問時のマナーについて紹介する。
訪問前の事前準備として下記を確認してから訪問する。
・身だしなみの確認
・名刺の補充
・書類や資料の部数確認
・話の内容手順の確認
訪問時のマナーは以下の通りだ。
・時間厳守
・連絡先をメモする
・早く行きすぎない
・コート・マフラーを脱いでおく
・スマートフォンをサイレントモードにする
訪問先に到着した際、受付に担当の方がいた場合も電話しかない場合も「自社名」「名前」「時間」「訪問先」「内容」を明確に伝える。
日常的に社内で業務を行う場合、電話応対は欠かせない。新人の頃は電話に出るのが怖いという人も多いようだ。スマホばかりで普段あまり電話応対をしない場合でも、まずは、慣れ。積極的に電話を受けるようにしよう。電話に出ることで、顧客や取引先の理解も進む。
1.電話がかかってきたら、3コール以内に出るようにする。
2.電話をとるのが遅れたら、「お待たせいたしました」と入れる。
3.電話に出たら、会社名を述べ、部署名を述べる。「もしもし」は禁止。
4.はっきりとした口調で話す。
5.メモをとりながら話す。
電話をかけた側が先に切る。電話を受けた場合は、自分から切らない。電話を切る際は、受話器をそっと置く。または手でフックを押す。電話対応では相手の顔が見えないため、明るい声で話すのが望ましい。
会社の一員として胸を張って仕事してもらうためにも、社員のビジネスマナー習得は不可欠だ。また、ビジネスマナーはコミュニケーションの土台となる。 周囲の人を尊重する気持ちや思いやりの気持ちが新入社員の振舞いに表れていくものなので、自分自身も相手も心地よく仕事ができるよう意識をしていこう。
ビジネスマナー研修などを受けさせることも一つの手だ。本記事を書いたリスキルでも実施している。なお、会議室への案内と合わせて、飲み物を出すこともあるだろう。お茶の入れ方・運び方・出す順番などにもマナーがある。以下のコラムでも詳しく掲載されている。ぜひ参考にしてほしい。
本記事では、ビジネスマナーを身に付ける側についても扱ったが、新人を受け入れる職場づくりについても考えておきたいところだ。管理職研修を受けさせる、OJT研修を受けさせるなど、受け入れる環境作りを整えるところにも注力してもらいたい。