春に入ってきたメンバーも職場に溶け込んできた夏、人事担当としてはもう一歩踏み込んだ研修を用意して更なる人材育成を図りたいところだろう。
社員たちはそれぞれ新しいチームで本腰を入れて業務を進めていることも多く、例えば管理職には職場全体のモチベーションをさらに高めるコミュニケーション能力、中堅・若手層には仕事の効率や成果を底上げさせる論理的思考力、新人にはフォロー研修など、それぞれのキャリアステージに沿った研修を用意することが望ましい。
本記事では、管理職、中堅・若手層、新人と、それぞれのステージにあった夏に人気の研修メニューについて解説する。夏が終わる頃には、社員それぞれがもう一段階成長し、会社全体としての勢いをつけるべく、是非とも夏の研修を前向きに検討してみてほしい。
はじめに、管理職向けの研修メニューについて見ていく。
コーチング研修は、組織の目標に基づいた、適切な部下の目標設定の仕方を学ぶ研修だ。
部下を抱える管理職は、もちろん部下を指導する立場にもあり、部下の能力や主体性を引き出すスキルが必要となってくる。
似た概念として「ティーチング」も挙げられるが、ティーチングが基本的な知識や技能を教えることを目的としていることに対して、コーチングは、部下それぞれが持っている能力ややる気、強みを引き出すことを目的としている。
そのため、「メンバーの考えを引き出し、新たな価値を生み出したい」「部下には自立して仕事を行えるようになってほしい」「OJTやティーチングとは異なる視点から指導スキルを高めたい」と考えている人にとって、コーチング研修は非常に有意義な研修となるだろう。
人材や価値観が多様化する昨今、組織やチームを統括する管理職の役割はますます重要になってきている。部下の能力や人間性を「引き出す」スキルの開発として、コーチング研修は管理職に非常におすすめできる研修である。
管理職は「目標のマネジメント」「業務のマネジメント」「人のマネジメント」など、様々なマネジメントが必要となってくる。
それぞれの目標を立て、PDCAを回してチームのパフォーマンス向上を図るためには、それら様々なマネジメントを適切に扱わなくてはならない。
マネジメント研修では、管理職の役割や求められるスキル、組織からの期待に関する啓蒙はもちろん、目標の立て方や傾聴力、指導の仕方など、一歩踏み込んだ内容も大切だ。夏の研修としては、基礎的な学習項目だけではなく、より実践的な内容も網羅している、一歩発展した研修内容のものを選ぶと良いだろう。
部下育成研修を受けることで、以下のような様々な悩みを解決するきっかけとなることが期待できる。
・「部下のやる気を引き出したい」
・「育成に時間が取られて自分の仕事が進まない」
・「多様な価値観を持つ若い部下の育成方法がわからない」
・「テレワークによってこれまでの指導方法が難しくなってしまった」
部下指導や組織運営は、コンテンツ数が多い研修テーマのひとつである。そのため、細分化された様々な内容の研修から、会社にあったものを選択できるという点も魅力的だ。
近年のトレンドとして、従来の足並みを揃えて標準化させる教育から、一人ひとりに合った個々人の個性を活かす育成策への移行が挙げられる。
管理職となった中年・壮年層にはこうした最近の考え方に触れる機会がなかった人も多く、世代間のギャップを埋めるためにも、管理職には最新の教育についてしっかりと理解を深めさせておきたいところだ。
部下の働くモチベーションや帰属意識を高めるスキルを身につける、管理職向け エンゲージメント向上研修も積極的に実施していきたい研修だ。
管理職のよく持つ悩みとして、「部下との関わり方やコミュニケーションの取り方がわからない」「メンバーの離職や休職を減らしたい」「部下のモチベーションを上げるのが難しいと感じている」といったことが挙げられる。
そこで、従業員エンゲージメント向上研修を行い、部下本人ではなく、管理職からのアプローチを取るという方法は有益に働くだろう。
従業員エンゲージメントとは、働く本人が幸せを感じ、会社に愛着を持って、成果を上げて組織に貢献しようとする自発的な意欲を指す。
従業員のモチベーションを高めることで全体的な生産性を継続的に上げることができるため、人事としても積極的に研修を行なっていきたい項目だ。
続いて、中堅・若手層に向けた研修メニューを見ていく。
クリティカルシンキング研修で扱うスキルは、中堅・若手のうちに身につけておきたいスキルである。
現状を疑い、物事の本質を捉えて日常に潜む問題を発見する能力であるクリティカルシンキングは、あらゆるビジネスにおいて有益に働く能力であろう。
クリティカルシンキングは、自分の仕事の仕方に自信がなかったり、発想が前例の範疇から抜け出せず新しい企画を思いつくことが苦手であったりといった場合に非常に役に立つ。さらには日常の中の「ムダ」に気がつけるようになるため、業務の効率化にも大いに貢献する。
しかしクリティカルシンキングは新たな考え方を取り入れる学習であるため、自己学習で習得を進めるのはあまり効率的ではなく、研修のカリキュラムや実践的な練習によってスキルを磨いていくことが得策だ。
会社としてそうした機会を夏の研修として設けることで、従業員は立ち止まることなくクリティカルシンキングを磨いていけるだろう。
また、春に基礎的な営業研修を終えた夏だからこそ、さらに踏み込んだ内容まで着手する営業力強化研修を取り入れてみるのも非常に有意義だ。
営業力強化研修では、基本的な営業の進め方や概要説明にとどまらず、より発展的な内容を扱うことを目的とし、売れる/売れない営業パーソンの違いの解説や具体的なロールプレイングなど、実践的な内容を積極的に学んでいく。
大切なのは座学だけに留まらないということで、買いたくなる営業パーソン像を理解した上で、しっかりと自分に投影させることが狙いだ。
また、その場での営業だけではなく、その後のフォローアップ方法についても一通り触れられると理想的だろう。
社員全体として、「見やすく、わかりやすい資料を作れる人材が少ない」「業績アップにはプレゼンテーション能力の強化が急務である」「会議をより充実したものにしたい」「若手のうちから資料作成の方法を身につけて社内外へ発信してほしい」といった悩みを抱えている企業も多いだろう。
そこで夏に提案したいのが、プレゼンテーション研修である。
プレゼンテーションの目的は、「相手に行動を起こしてもらうこと」だ。営業の場合は購買、会議の発表であれば他者への解説と理解の促しと、プレゼンテーション能力はあらゆる職種において役立つスキルである。そのため、部門や個々人ごとに研修を分ける必要もなく、会社としても実施しやすい研修であると言えるだろう。
プレゼンテーションには、「構想」「準備」「実施」という3つのステップが必要である。
ただ発表を行う表層的な研修ではなく、「構想」「準備」の段階で考えておくべきことまでしっかりとケアした研修が望ましい。さらにはレポートや資料の作り方だけではなく、目線の合わせ方や話し方に関する講座も一緒に受講することで、より総合的なプレゼンテーション能力の向上が図れるだろう。
タイムマネジメントは、役職や業務内容、年齢層を問わず、有効的に時間を使いたい全てのビジネスパーソンに役立つスキルだ。
ビジネスがうまくいくかどうかは、タイムマネジメント能力が握っているといっても過言ではない。
タイムマネジメント研修を受けることで、社員それぞれの生産性を高める他、客観的な目線を持って仕事の優先順位を決められたり、計画通りに仕事が進められたりするようになる。さらに従業員個々人のタイムマネジメントが進められると、組織全体のタイムマネジメントもうまくいくようになることから、全体的な業務改善も図れるだろう。
それではここからは、新人向けの研修メニューを見ていこう。
新人が入ってきて3ヶ月前後となる夏は、新人フォローアップ研修を是非とも行なっておきたい時期である。
新人フォローアップ研修は新入社員研修と組まれることが一般的で、最初の新入社員研修の復習が大きな目的となる。目標達成状況やその過程をプレゼンテーションさせたり、再度復習的な座学を行なったりすることで、知識の定着度を高めることが大切だ。
また、新人フォローアップ研修には、知識の定着だけでなく、配属後の不安解消や業務の進め方を確認するといった目的もある。新人たちに仕事の意味や社会人としての姿勢を再確認させるだけではなく、会社としても新人の状況を確認できるため、春に新人を採用した企業にとっては優先度高く取り組んでいきたい研修だろう。
セルフケア研修とは、どうしても様々なストレスが生じてしまう職場という環境の中で、自分のストレスの要因やストレス反応に早期に気づいて自らケアを行えるようにする研修である。
メンタルの不調に陥らないように自己管理する能力や、ストレスに強い心を育てるための手法を学ぶことが研修の目的となろう。セルフケア研修を行なって各自が自分にとってのストレス要因を把握できることで、逐一会社で個々人をケアする機会を少なくできるほか、当然離職や休職の可能性も狭めることができる。春の環境変化のストレスが心身に現れ始める夏だからこそ、体調を崩す前に社員を守っておきたいところだ。
近年の新人の傾向として、不安を感じた時や何か問題が発生した時に我慢して、一人で抱え込む傾向が見られる。そうした社員たちの不安を和らげ、長く健康的に働いてもらうためにも、できるだけ早い段階で実施しておきたい研修であるとも言える。
会社は様々な年齢や性別・立場の人で構成される組織であるが、学生時代にそうした経験を十分に味わえている新人は少なく、どうしてもコミュニケーションに弊害が生じてしまうケースが多い。
これからますます連携をとる機会が増えてくる夏だからこそ、コミュニケーション研修を実施しておきたい。
コミュニケーション能力は、お客様との商談時の会話や、雑談などにおいて非常に重要なスキルである。社内でも上司や部下に伝えるべきことをしっかりと伝える能力ももちろん大切で、コミュニケーションの行き違いが大きな損失になることも珍しくない。キャリアを積めば積むほど、仕事量も増えてきて、そこからコミュニケーションの応力を育もうとすることは難しくなってくる。
新人のうちにしっかりとコミュニケーション能力を育てる研修を受けておくことで、今後何十年と効率的かつ効果的な業務を行えるようにしておくことが望ましいだろう。
また、どのような業種であっても、パソコンスキル研修は、基礎的なもの・応用的なものいずれも行なっておきたいところだ。
春、最初の研修として基礎的なパソコンスキルの研修を設けている企業は多いが、夏に発展編として更なるパソコンスキルの習熟を目指す研修を準備している企業は意外と少ない。
Microsoftなど一般的に使われるパソコンソフトの実習などを全社的に行なっておくことで、社内共通のスキルとしてソフトウェアを取り扱い、うまく連携を図ることもできるだろう。
また、IT企業などにおいては専門的なプログラミング言語の研修を一括して行うということも有益だ。いずれにせよ、社員全員が一定のスキルレベルを共有しておくことは、業務の認識の差異を減らすことができ、また一人ひとりの作業効率も上がるため、毎年の恒例研修として是非とも設けておきたいところであろう。
いかがだっただろうか。今回は、管理職、中堅・若手層、新人と、それぞれのステージにあった夏に人気の研修メニューについて解説した。
是非とも本記事を参考に夏の研修メニューを組み、より一層質の高い人材育成を行なってほしい。