人間には睡眠欲や食欲など、様々な欲求が存在する。今回紹介する「承認欲求」も、人間に存在する欲求の1つだ。承認欲求が強い社員に困っている方もいるだろう。しかし承認欲求が強い社員の、育成や指導を怠ってわいけない。なぜなら、他の社員に迷惑をかける恐れがあるからだ。この状態が生まれると、チームの乱れにつながる。たとえ承認欲求が強くても性質を理解し、上手に接することができれば戦力になる。
本記事では承認欲求が強い社員の特徴を解説しながら、モチベーションアップの秘訣を紹介していく。
「他者から認められたい」「自分を評価して欲しい」と思うときに生まれる欲求で、子供から大人まで幅広い世代の方が持つ。昭和の時代と比べると、承認欲求の強い方が増えている。その理由として、以下の内容が挙げられる。
SNSではインターネットを通じて、自身の状況を不特定多数の方へ伝えられる。SNS上に投稿できる環境が整ったことで、自分を「認めてほしい」「共感してほしい」と思う方が増えた。結果、承認欲求が強い方を増やす結果となった。
幼少時代に共働きの家庭で育つと、家族から褒められる機会が減る。すると、他の方に褒められたい気持ちが強くなる。結果、承認欲求が強い大人になってしまう。一昔前と比べると、共働き世帯のもとで育つ子供が多い。そのため、承認欲求を強く持つ方が増えやすくなった。
ここでは、承認欲求が強い方の特徴を紹介する。
過度な自己アピールするのは、承認欲求が強い社員に多い。「大した成果を挙げていないのに、素晴らしい結果を挙げたかのように伝える」「自身の仕事ぶりをしつこくアピールする」などが挙げられる。これらは、自分の行為を褒めてほしいために起こる。
自身が悪いにも関わらず、自己正当性をアピールする社員も承認欲求が強い。「自分のミスを部下に押し付ける」「自分のミスが原因で起きたトラブルなのに、なかったことにする」などが挙げられる。自身が評価を得たいがために起こる事象だ。
承認欲求が強い社員は、周りの人を下に見る特徴がある。「自分と比べて、出来が良い社員の足を引っ張る発言をする」「同期の中で、自分の出来が一番良いと勘違いする」などが挙げられる。他の社員よりも評価を得たい気持ちが強いために起こる。
同情を得ようとするのも、承認欲求が強い社員に見られる。「自分がミスをしたのは他人をかばうためだった」「ミスが起こったのは仕方なかった」という自分を演じる。自身が悪者にならないよう、予防線を張っていく。
承認欲求が強くなる理由として、以下の内容が挙げられる。
自分に自信がないと、弱みを見せてはいけないと思い込んでしまう。過度に自分をアピールしたり自己正当性を訴えたりする行動が増えるため、承認欲求が強くなっていく。
仕事・プライベートともに上手くいかない状態だと、誰からも褒められない。周囲から褒められたい気持ちが生まれ、承認欲求を強くすることになる。
たとえば「仕事で成果を挙げているのに上司に褒めてもらえない」「成果を挙げても良い評価をしてくれない」社員は、自分の出来が良いことをアピールしたくなる場合がある。
その気持ちが生まれると、周囲から「認められたい」という願望が芽生える。結果、承認欲求が強くなっていく。
たとえ承認欲求が強い社員でも、うまく活用すればモチベーションアップにつながる。最後に、承認欲求を活用して社員のモチベーションを上げるポイントを紹介する。
社員の成果を褒めると、承認欲求が強い社員は嬉しいと感じる。結果、モチベーションアップにつながる。成果を褒めるときは、以下のことを意識すると良い。
「成果を挙げてすごいね」だと、何の成果を褒められているか分からない。しかし「先月と比べて、成果がプラス〇円上がっていてすごいね」と具体的に伝えれば、何を褒められたか分かる。褒めることに説得力が生まれ、承認欲求が強い社員のハートをつかむことになる。
他の社員がいる前で褒めると、大勢の社員に自身の成果が伝わる。多くの社員に注目されて気持ちが高揚していく。
承認欲求が強い社員は、大勢の前で褒められる状況を何度も味わいたい。それを実現するために、精力的に仕事へ取り組む。結果、仕事の質を向上させるのに役立つ。
大袈裟に褒めると、仕方なく褒めている雰囲気が出てしまう。承認欲求の強い社員でも褒められている気がせず、やる気がなくなる。そのため、大袈裟に褒めるのはNGだ。「表情・声の大きさ・身振り手振り」を意識しながら、自然体で接することが大事だ。
他人の成果と比較して褒めるのは良くない。なぜなら、比較された側の心を傷つける恐れがあるからだ。比較された社員の耳に入ると、その社員のモチベーションは下がる。それがチームワークを乱す恐れがある。
上司は部下から冷たい視線を浴びることになり、チームの居場所を失っていく。それを防ぐ意味でも、他の社員と比較すべきではない。
本人がいない場所で褒めた方が良い理由は、第三者から褒められていることを聞いた方が、モチベーションアップにつながる場合があるからだ。
「上司が褒めてくれた」「他の社員に自身の挙げた成果が伝わっている」という2つのことが伝わるため、モチベーションアップが期待できる。
仕事の過程を褒めると、より良いプロセスを組もうとする気持ちが生まれる。結果、モチベーションアップにつながる。過程を褒めるときは、以下のことを意識すると良い。
社員が歩んできた過程を理解しないと、褒められない。よって、社員の過程を理解した上で褒めることが大事だ。
質問形式で褒めるのもいいだろう。たとえば「〇〇の過程を歩んできたのがすごいと思ったのだけど、何を意識したの」といった形で伝えると、相手は褒められた気分を味わえる。
しかも褒められた側は自身で返答内容を考えなければならないため、自身のプロセスを再確認できる機会になる。その環境を作ることで、承認欲求が強い社員を成長させていく。
プロセスによっては、失敗する場合もある。たとえ失敗したとしても、褒めた方がいい。なぜなら、チャレンジ精神を向上させることになるからだ。
失敗を責める文化だと、従業員は「失敗してはいけない」という考えになる。すると保守的になり、果敢に取り組まない雰囲気ができてしまう。最終的に既存のことしか取り組まなくなり、チャレンジ精神は0になる。
しかし失敗したことも褒める文化ができれば、社員は「成功率が低くてもやってみよう」という気持ちを持つ。その習慣が常態化すれば、前例のないことに取り組む姿勢が身に付き、チャレンジングな雰囲気が生まれる。結果、チームに攻めの体制ができて、能動的に動ける社員を増やすことになる。
過程の中には、結果と直接関係のないケースもある。それも褒めた方が良い。一見すると関係なくても、それがあったために結果へ結びついている場合があるからだ。
結果に直結しないプロセスを褒める文化ができれば、承認欲求が強い社員は褒められるために色々とトライしていく。結果、積極性を身に着けられる。
評価制度を設ける理由は、自身の評価内容を見ることがモチベーションアップにつながるからだ。承認欲求が強い社員は、良いスコアを挙げようと張り切る。その流れを作るためにも、評価制度はあった方がいい。評価制度を設けるときは、以下のことに注意すると良い。
評価制度は自社が求めるスキルや成果に、いかに近づくことができたかを示すものだ。よって、自社が求める成果と連動する評価基準にした方がいい。
評価制度を設ける前に、社員へ中身を共有することも大事だ。何を基準に業務を進めるべきか、社員たちに理解してもらうためだ。評価制度の基準が定まらないと、社員たちは動き方が分からない。結果、消極的な姿勢になってしまう。
基準が分からない状態で働くことに対して、不安を抱える社員もいる。思いっきり働ける環境を作るためにも、評価基準は明確にすべきだ。
会社全体で褒め合う文化ができれば、承認欲求が強い社員は気持ち良く働ける。それがモチベーションアップを生み出す。会社全体で認め合う文化を作るときは、以下のことを行うと良い。
社内でのコミュニケーションを活性化させると、メンバー間で話す機会が増える。結果、認め合う文化ができていく。チームメンバーの良かったことを発表する機会を設けたり、サンクスカード制度を作ったりすると、承認欲求が強い社員は褒められるたびに気分が良くなる。結果、仕事に対する熱量も増す。
社員の意見を否定することが多い職場だと「意見を言っても却下される」というイメージが脳内に刷り込まれる。そのため、社員同士で認め合う環境を作るのは難しい。
しかし否定ばかりする文化を取り除けば、相手の意見が良いと思ったときに肯定する文化が生まれやすい。よって、褒め合う文化を作るのに役立つ。
ダイバーシティ化とは、様々な価値観を受け入れる姿勢のことだ。ダイバーシティ化が進んだ職場では、ユニークな意見を取り入れる機会が増える。過去の前例にとらわれて、新しいものを排除しようとする空気感ではないため、認め合う環境が自然と形成されていく。
なおダイバーシティ化を進めるには、以下のことを意識すると良い。
経営陣がダイバーシティの推進に関する発信をすると、その言葉を受けて社員も取り組んでいく。多くの社員を巻き込みながら、効率的にダイバーシティ化を進められる。
ダイバーシティ化では、前例のないことに取り組むケースもある。しかし、おびえていると一向に前進しない。その状態を回避する上で必要なのが「変化を恐れない」ことだ。全社員が変化を恐れずに取り組む体制ができれば、自然とダイバーシティ化が進んでいく。
承認欲求が強い方は、どの企業にも少なからずいる。以下の特徴に当てはまる方は、承認欲求が強い社員である確率が高い。
できる自分像を作ったり、他の社員よりも能力が高かったりすることをアピールするケースが多い。上司からすると、承認欲求が強い社員を相手にするのは疲れるかもしれない。しかし承認欲求が強い社員をうまくコントロールすれば、会社の戦力アップになる。よって、放置せず育成すべきだ。
承認欲求が強い社員と関わるときは以下のことを実践すると、モチベーションアップにつながる。
上記のことに力を入れれば、承認欲求が強い社員はやる気を出す。するとチーム全体の業務効率が上がり、企業として成長する。変化の激しい市場で生き残るためにも承認欲求が強い社員とうまく関わり、会社の成長に貢献していただきたい。