顧客に商品を買ってもらうには、質の良い商品を提供するだけではなく、顧客サービスの向上が大事になる。顧客サービスが向上すれば会社のイメージが良くなり、売上アップにつながっていく。
そのときに役立つのが、今回紹介する「接遇5原則」だ。全ての社員が内容を理解しておけば、どの社員が応対しても顧客に喜んでもらうサービスを提供できる環境が整う。本記事では接遇5原則の項目を紹介しつつ、項目ごとに意識すべき内容を解説していく。
接遇とは、顧客を気持ちよく迎えるために必要な知識のことだ。接遇を理解できている方は、顧客の心情を理解しており、満足度の高いサービスを提供できる。
必要最低限のサービスを提供する「接客」と比べると、ワンランク上の内容となっている。
接遇は5つの原則によって構成されている。ここでは5つの原則を紹介する。
相手から見て、気持ちの良い挨拶ができなければならない。社員の挨拶がなかった場合、顧客からの第一印象が悪くなったり、クレームの原因になったりする。
笑顔で接することも求められる。明るい表情で接すると、場も明るくなり顧客との会話が弾みやすくなる。逆に暗い表情だと場が静まり、話しづらい雰囲気を与えてしまう。
身だしなみでは「清潔感」を与えなければならない。不潔感があると、相手を不快な気持ちにさせてしまう。挨拶と同様に第一印象を左右するため、気を付けた方が良い。
態度にも気をつけなければいけない。横柄な態度をとると、上から目線の対応に見えてしまい、顧客からの印象が悪くなる。逆に丁寧な態度をとれば、応対に上品さが出て顧客に良い印象を与えられる。
他の4つができていても、言葉遣いができていないだけで、接遇のクオリティは下がる。乱暴な言葉遣いは下品に見えるため、丁寧な言葉遣いを心掛けることが大事だ。
ここでは、接遇5原則の項目ごとに意識すべきことや身に付けるためのポイントを紹介する。
挨拶では、以下のことを意識すると良い。
相手から挨拶されるのを待つのではなく、自ら挨拶しに行くことが求められる。たとえば顧客が来店した際に、店員から挨拶がなかった場合、店に対して悪い印象を持つ。その結果、顧客の購買意欲が下がる。
しかし店員から挨拶すれば、店に対する印象は悪くならない。そのため、挨拶をしない場合と比べて、商品を購入してもらいやすくなる。商品の売上を落とさないためにも、積極的に挨拶をした方が良い。
相手の目を見ながら挨拶することで、「店員さんが挨拶をしてくれた」と顧客が認識しやすくなる。仮に挨拶をしたとしても、顧客に認識されなければ挨拶をしていないのと同じだ。挨拶をしない社員だと誤解されないためにも、目を見ながら挨拶をした方が良い。
相手によって挨拶の仕方を変えるのも大事だ。たとえば顧客が商品を見ている最中に、後ろから大声で挨拶をすると驚いてしまう。しかし声のトーンを落として挨拶をすれば、顧客は驚かずに済む。
このように、挨拶の仕方で顧客の反応は変わる。顧客に煙たがられないよう、挨拶をすることが大事だ。
笑顔では、以下のことを意識すると良い。
普段から笑顔をつくるためのトレーニングを行っておくと、自然な笑顔をつくりやすくなる。ここでは2種類のトレーニングを紹介する。
1つ目は口角を上げるトレーニングだ。口角が上がると、自然と笑顔をつくりやすくなる。以下の手順で行うと良い。
⓵割りばしを真横に加え、口を「い」の形にする
⓶口角が割り箸より上の位置にいくよう、鏡を見ながら調整する
⓷口角が上にいった状態を、1~2分キープする
マスクをしている状況だと、目元のみで笑顔であることを伝えなければならない。よって目元のみで笑っていることを伝える、トレーニングも行った方が良い。以下の手順に沿って行うと効果が出やすくなる。
⓵目を思いっきり開けて、つぶる行為を何度も繰り返す
⓶眉毛を上げて、目をパッチリさせる
⓷口角を引き上げる
大きな口を開けて笑うと、人によっては下品に見られてしまう。そのため、笑うときは前歯が見える程度にした方がいい。
メンバー達がポジティブシンキングを心掛ければ、顧客と明るい話題の会話ができる。よってネガティブな話題が減り、笑顔をつくりやすくなる。
しかし人によっては、ポジティブシンキングを心掛けようと思っても、ネガティブシンキングになってしまう方もいる。その場合は、以下のことを意識させると良い。
自己肯定感を高めると、自分に自信がついてポジティブシンキングを身につけやすくなる。自分の長所や短所を把握したり成功体験を積んだり、主体性を持って動いたりすることが、自己肯定感を高めるポイントだ。
たとえば「できない」を「どうすればできるだろうか」というように、前向きな言葉に言い換えることも大事だ。前向きな言葉に言い換えると、ネガティブワードを発する機会が減り、ポジティブシンキングが身についていく。
ポジティブシンキングの方と一緒に過ごす時間をつくると、自然と言葉や行動が似る。結果、ポジティブシンキングの習得へつながる。ポジティブシンキングの社員とグループワークをさせたり、メンター制度を導入して一緒に行動させたりするといいだろう。
身だしなみでは、以下のことを意識すると良い。
シワや汚れのついた衣類を着るのは、不潔感を与えるためNGだ。汚れやシワが目立ちにくい服を買うのも1つの手だ。洗濯機だけで対応できない場合は、クリーニングに出すといい。
寝ぐせやフケがついていると、ズボラな人間に見られてしまう。その印象を与えないためにも、髪はセットすべきだ。ワックスやジェルなどをつけて、その場にふさわしい髪形にするといい。
ただしワックスやジェルの香りが強すぎると、周囲に不快感を与えてしまう恐れがある。ニオイに敏感な方もいるため、弱い香りのものを使った方が良い。
顧客に肌を見られたときに、健康的だと思われた方が良い。化粧水やファンデーションを使って、血色の良い肌に仕上げるといいだろう。
また、男性であればヒゲを剃ったり整えたりすることも重要だ。無精ひげは相手に不潔感を与えるため、毎日の手入れを忘れてはならない。
爪を短くするのはもちろん、爪と皮膚の間に汚れが溜まっていないかチェックしたり、爪の表面を磨いたりすることも大切だ。
身につけているアクセサリーや小物が多かったり、派手なものをつけたりすると相手の気が散ってしまう原因になる。話に集中してもらうためにも、ワンポイントにした方が良いだろう。
態度では以下のことを意識すると良い。
座っているときに、台の上に肘をついたり足を組んだりすると、横柄な態度に見える。背筋を伸ばした状態で膝の上に手を置き、足を組まない状態で座るのがベストだ。
背筋を伸ばした状態で、地面に対して垂直に立ち上がると見栄えが良い。下腹部に力を入れると、姿勢の良い状態で立ちあがりやすくなる。
お辞儀を場面ごとで使い分けると、悪い態度をとっているように見えない。代表的なお辞儀の種類は以下の通りだ。
相手とすれ違うときに使用することが多い。15度を目安に上半身を倒す。ちなみに会釈をするときに立ち止まると、見栄えが良くなる。
お辞儀の中でも最もスタンダードなもので、初見の方への挨拶や見送りなど様々な場面で使われる。30度を目安に上半身を倒す。
謝罪のときに使われることが多く、45~90度を目安に上半身を倒す。自社に落ち度があったときに、最敬礼をすることが多い。
相手に対する物の渡し方も大事だ。以下のことを意識しながら渡すといいだろう。
両手で渡すと物を丁寧に扱っているように見えて、上品さが際立つ。小さい物だとしても、片手で渡してはいけない。
物が相手の手に接している状態で渡すことが大事だ。物を投げるのはもちろん、相手の手に落とすように渡すのもNGだ。
最後に言葉遣いで意識することを紹介する。
顧客によって、敬語を使い分けることも大事だ。ここでは代表的な敬語の種類を3種類紹介する。
尊敬語とは、目上の方を敬うときに使われる敬語だ。たとえば、以下の言い回し方が尊敬語に該当する。
謙譲語とは、自身がへりくだって相手を立てるときに使われる敬語だ。以下の言い回し方が、謙譲語に該当する。
丁寧語とは、どの相手に対しても使える敬語だ。以下の言い回し方が、丁寧語に該当する。
クッション言葉とは、言いづらいことを伝える前に挟む言葉のことだ。話の前につけることで、柔らかい言い方になる。たとえば、以下のクッション言葉がある。
クッション言葉を場面に応じて使い分けることで、角の立たない話し方になる。
顧客サービスに対して不満を感じてしまうと、その顧客は商品を買わなくなる。その状況をつくらないためには、全社員が「接遇5原則」を理解することが大事だ。接遇5原則を理解すれば、顧客を喜ばせる「おもてなし」ができるようになり、顧客満足度の向上や売上アップにつながる。
ちなみに、接遇5原則の内容は以下の通りだ。
上記のクオリティを高めることで、質の高い応対ができるようになる。接遇5原則で意識すべきことは以下の通りだ。
■挨拶で意識すること
-自ら挨拶をする
-相手の目を見ながら挨拶をする
-相手によって挨拶の仕方を変える
■笑顔で意識すること
-日頃からトレーニングをしておく
-大きな口を開けて笑わない
-ポジティブシンキングを心掛ける
■身だしなみで意識すること
-シワや汚れのついた衣類を着ない
-髪をセットする
-肌の手入れを行う
-爪の手入れを行う
-余計なアクセサリー・小物をつけない
■態度で意識すること
-座るときの姿勢
-立ち方
-お辞儀の仕方
-相手に対する物の渡し方
■言葉遣いで意識すること
-敬語を使い分ける
-クッション言葉を活用する
いくら質の高い商品を販売していたとしても、顧客を満足させられなければ会社の印象は良くならない。クレームが発生したり悪い噂が流れたりする原因にもなるため、業績悪化の道を辿ることになってしまう。
企業ブランドを落とさないためにも、接遇マナー研修や接客研修を実施するなど、接遇5原則を意識した取り組みを行っていただければと思う。