顧客の心の満たし方が、イメージできない社員もいる。そんなときに役立つのが「接遇マナー」だ。
接遇マナー研修などでもおなじみのスキルだが、現状自身がどの程度までスキルを持っているかを確認しているビジネスパーソンは少ない。
接遇マナーを習得すれば、顧客が喜ぶサービスを提供できる。接遇マナーを習得すれば、顧客が喜ぶサービスを提供できる。今回は、接遇マナーの解説をしながら習得方法やポイントについて紹介する。
接遇マナーとは、顧客への「おもてなし」で必要なマナーのことだ。接遇マナーの有無で、顧客の印象はだいぶ変わる。
接遇マナーは、5つの要素から成り立っている。
単に大きな声で、挨拶をすればいいわけではない。場面や客層を考え、その場に適した挨拶をすることが大事だ。
不機嫌そうな表情は、顧客をブルーな気持ちにさせる。口だけではなく目も笑っている笑顔が良い。
身だしなみによって、第一印象が決まるとも言われている。不潔感があると、顧客からの印象を悪くしてしまうため、清潔感を出すことが大事だ。
1つ1つの所作によって、態度の見え方が変わってくる。乱暴な態度に見えると、顧客の気分を損ねてしまうため、丁寧な態度をとっているように見せることが大事だ。
言葉遣いが雑だと下品に見えてしまう。上手に敬語を使い分けたり、丁寧な言葉で話したりすることが大切だ。
上記5つの内容を全てクリアして、接遇マナーを習得できたと言える。接客マナーと呼ばれる言葉もあるが「顧客に対して最低限のサービスをする」という意味合いが強いため、接遇マナーとは違う。
接客や接遇はともに「おもてなし」や「応対」を意味するが、どちらも同じものではない。接遇の「遇」の字には、「人をもてなす」という意味があり、心を伴うことが最重要である一方、接客には「客と接する」という意味しかなく、もてなすという意味は存在しない。
つまり、お客様に対して必要最低限のサービスをするのが「接客」であり、そこにプラスアルファのおもてなしを加えたものが「接遇」ということだ。
接遇マナーは、全ての職種・業種において求められる。どの職種・業種においても、顧客と接する可能性が十分にあるからだ。
たとえば取引先の担当者が来社された際、事務職や技術職が対応するかもしれない。その際、接遇マナーが身についていないと、自社に対して悪い印象を持つ。それが原因で、顧客離れが起こってしまうかもしれない。そのリスクを避ける意味でも、全ての社員に接遇マナーを習得させるべきだ。
接遇マナーを習得するメリットは以下の通りだ。
接遇マナーを習得すると顧客に質の高いサービスを提供できる。よって、顧客満足度アップにつながっていく。顧客満足度の向上は売上アップにも結び付くため、業績を良くする効果も期待できる。
接遇マナーが身につけば、顧客からクレームを言われても、適切な処理ができるようになる。顧客の怒りを増幅させずに、要領よくクレーム処理できるスキルが身につく。
接遇マナーを上げれば、自社の対応が良いと評価される。それが、同業他社との差別化につながる。差別化できると、同業他社から消費者を奪われずに済む。その結果、顧客離れが起こらなくなる。
接遇マナーを身につければ、社員同士の接し方も自然と変わってくる。良好な人間関係を築きやすくなり、従業員満足度を向上させていく。
従業員満足度が上がれば、顧客への対応が丁寧になったり、クオリティの高いサービスを提供したりする環境が出来上がる。結果、顧客に喜んでもらう機会が増えていく。
ここでは、接遇マナーを習得する方法を4つ紹介する。
コミュニケーションスキルを磨くのは、接遇マナーを向上させるときの必須条件だ。以下の内容を中心に磨くと良い。
傾聴力とは、相手の話に興味・関心を持ちながら聞くことだ。コミュニケーションスキルが高い方は相手の話を聞くことが多い。よって、傾聴力は鍛えた方が良い。
傾聴力を鍛えるときは、以下のポイントを抑えると良い。
相手が話している途中に割り込んではいけない。会話が途切れてしまい、相手のペースを乱してしまう恐れがあるためだ。その状況をつくらないためにも、相手が話し終わるまで待った方が良い。
自分の考え方と違っても一旦は相手の意見を受け入れるべきだ。否定ばかりすると会話が進まなくなり、場の空気も悪くなってしまう。場合によっては、相手を突き放す行為に見えてしまう恐れがあるため控えた方が良い。
質問する力を鍛えるのも、円滑なコミュニケーションをとる上で大事だ。相手へ質問することで会話がスムーズに進んでいく。ちなみに質問の方法は、2種類ある。
オープンクエスチョンとは、選択肢を設けず自由に答えてもらう質問形式のことだ。「今の仕事を始めたきっかけは何ですか」「やりがいを感じることは何ですか」といったイメージだ。自由に答えられるため、多くの情報を得やすい。
クローズドクエスチョンとは、選択肢を与えた状態で答えてもらう質問形式のことだ。「仕事は楽しいですか」「3つの中で最も興味があることは何ですか」といったイメージだ。選択肢が設けられているため、自分の言葉にするのが苦手な方でも答えやすい。
相手に分かりやすく伝える力を磨くことも大事だ。伝え方を磨くときは、以下のことを抑えると良い。
言葉を置き換えたり、例を挙げたりなど、表現方法を意識すると伝え方を磨ける。言われた内容をそのまま伝えるのではなく、自分なりに編集することも大事だ。
相手の立場を考えながら、伝えることも大事だ。たとえば入社20年の社員と、新入社員では理解度が違う。
入社20年の社員であれば、仕事に関する知識を持っているため、話を端折っても問題ないだろう。しかし新入社員の場合、知識が少ないため、細かく伝えた方が良い。このように伝わり方が違うため、相手の立場を考えることは重要だ。
会話を進めていく中で、間ができる場合がある。場を盛り上げなければと思い、一生懸命間を埋めようとする方もいる。しかし毎回、間を埋めようとするのは良くない。なぜなら、相手が考える時間を奪ってしまうからだ。
そうなると、生産的な会話ができなくなってしまう恐れがある。相手の性格を考えながら間を活用するといいだろう。
顧客からの問い合わせに対応することもある。そのため、電話応対のスキルを磨くのも大切だ。たとえば以下のことを意識すれば、電話応対のスキルは上がる。
「電話が鳴ったら3コール以内に出る」「保留は短時間で終える」など、顧客を待たせないことが重要だ。待たされると、顧客はストレスを溜めてしまう。それが、怒りを増幅させる原因になるため良くない。
話の前置きが長いと、顧客に不快感を与える。それを回避するには、簡潔に話すことが大事だ。結論を伝えた後に詳細を話すことで、顧客にストレスを与えずに済む。
復唱して確認することで、確認ミスを防げる。確認ミスは、顧客の怒りを生む原因になるため気を付けた方が良い。
相槌が1,2種類しかないと、真剣に話を聞いていないと思われてしまう恐れがある。そのリスクを避けるには、様々なパターンの相槌を使うことが大切だ。言葉や声のトーンを変えながら、様々なパターンの相槌を使うといいだろう。
相手のライフスタイルを考えた上で折り返さないと、不快感を与える。たとえば、早朝に折り返すと、出勤前の忙しい時間でイライラさせるかもしれない。また夜に折り返しても、残業やプライベートの時間の邪魔になって怒られる恐れがある。
そのため時間の指定がない場合は、相手が出やすい時間帯を考えてから折り返すことが大事だ。
接遇マナーを上げるには、正しい方法を知っておかなければならない。接遇マナー研修を受講すれば、接遇の知識を持っている講師が指導するため、正しい接遇マナーを習得できる。
接遇マナーの知識があるだけでは役に立たない。実践に落とし込んで何度も使わないと、接遇マナーは身につかない。
なお落とし込んだ後は、実際に活用できているか確認した方が良い。習得した知識を活かし切れていない恐れがあるためだ。働いている様子をチェックしたり、社員から聞いたりすることで確認できる。身についていない社員には、フィードバックをして気付かせることも大事だ。
最後に接遇マナーのポイントを紹介する。
習得したものを全て使えばいいわけではない。その場で必要なマナーもあれば、不要なマナーもある。TPOに合わせながら、接遇マナーを使い分けることが大切だ。
先入観を持つと顧客に優劣をつけて、応対方法を変えてしまう恐れがある。そのことが、顧客に知られると悪い口コミが広まってしまう。会社の評判を落とさないためにも、先入観を持たず平等に接した方が良い。
クッション言葉とは、文章の印象を柔らかくするために、本文の前にくっつけて使う言葉だ。言葉によってはダイレクトに伝えると、顧客の気分を損ねてしまう。それを防ぐ意味で、クッション言葉は使われる。
たとえば「〇〇について教えていただけますか」という文章であれば、「クッション言葉+〇〇について教えていただけますか」と言った形で伝えていく。すると、顧客に悪い印象を与えづらくなる。代表的なクッション言葉を、5つのシチュエーションに分けて紹介する。
-何か尋ねたいときに使えるクッション言葉
→差し支えなければ・失礼ですが・お伺いしたいことがあるのですが
-顧客に依頼したいときに使えるクッション言葉
→恐れ入りますが・お手数おかけしますが・ご都合がよろしければ
-顧客の要求を断りたいときに使えるクッション言葉
→申し訳ございませんが・あいにくですが・せっかくですが
-顧客に改善して欲しいに使えるクッション言葉
→私どもの説明不足だったかもしれませんが・説明が十分ではなかったかもしれませんが
-顧客の力になりたい
→私どもにできることがあれば・よろしければ
顧客が想定しているものを提供しても、感動は生まれない。顧客に最高のおもてなしだったと思ってもらうには、イメージする以上の応対をすることが大事だ。
顧客がつくかは商品やサービスの内容だけではなく、社員の対応も大事になってくる。そのため、接遇マナーの習得は必須だ。全ての社員が接遇マナーを習得すれば、顧客満足度が上がったり同業他社との差別化が図れたり、従業員満足度のアップにつながったりする。会社にとって大きなメリットとなるため、積極的に習得した方がいい。
しかし接遇マナーを習得させようと思っても、正しい方法を知らなければ身につかない。以下の方法を試すと身につけやすくなる。
-⓵コミュニケーションスキルを磨く
-⓶電話応対のスキルを磨く
-⓷研修を受講させる
-⓸実践に落とし込む
上記の方法を実践することが、おもてなしの質を上げることにつながる。その他に、接遇マナーのポイントもあるため紹介する。
-顧客の心情を考えながら接遇マナーを使い分ける
-顧客に対して先入観を持たない
-クッション言葉を活用する
-顧客が想定する以上の応対をする
上記のことを意識して接遇マナーを実践すれば、顧客とのやり取りで失敗することも減るはずだ。
現代では消費者の目が年々厳しくなっており、企業に対して少しでも気に入らない箇所があっただけで、クレームに発展するケースもある。接遇マナーの習得は、そのリスクを抑える意味でも役立つ。顧客に愛されるためにも、接遇マナーの習得に力を入れていただければと思う。