日本の全企業のうち、約9割を占めるのが中小企業だ。大部分を占める中小企業が抱える課題として挙げられることが「管理職の育成不足」である。
管理職層の人数が少ないなどの問題もあるが、日々の業務に追われるあまりマネージャー・管理職に必要なスキルを身に付ける場がないということも理由の一つだ。
本記事では、中小企業でより活躍できる管理職を育成するためにできることを解説していく。研修や教育体制を整える人事・採用側や管理職自身にも参考にしてほしい内容だ。
まずは、中小企業の定義から解説する。中小企業庁によると以下のように定められている。
中小企業庁、中小企業・小規模企業者の定義より引用。
なお、令和6年4月より、日本標準産業分類が改定された。詳しくは第14回改定(令和6年4月1日施行)を確認してほしい。
日本企業の約99%を占める中小企業において、課題として挙げられるものは以下の通りだ。人材不足から取引先への依存が高いなど様々なものが課題として取り上げられていることがわかる。
本記事では、この中の「成功者・リーダーが不在」という課題に対して対処する方法を解説していく。
中小企業庁「激変する世界・日本における今後の中小企業政策の方向性」より引用
中小企業の管理職として目指してほしい姿は、プレイングマネージャーだ。プレイヤーとして働きつつマネジメントをするという役割を経て、次第にマネージャー業務に比重を傾けていく。
プレイングマネージャーとは、自身が業務を遂行するプレイヤーの役割と、チームの管理や指導を行うマネージャーの役割を兼ね備えた職務のことだ。自身も現場で働きながら、他のメンバーの仕事を管理し指導やサポートをする。
プレイヤーからすぐにマネージャーになることは、スキル的にも業務量的にも難しい場合が多い。そのため、プレイングマネージャーを目指してもらうことが良いだろう。
マネージャースキルを研修や業務経験で強化しつつ、徐々にプレイヤーとしての業務割合を減らしマネージャー業務の比重を大きくしていくことがおすすめだ。
これは、管理職自身でコントロールすることがベターだ。しかし「自分がやった方がはやい」「人手が足りていないのにそんなことできない」とプレイヤー業務をなかなか手放せない場合も多くある。そのため、上司にあたる立場の方がマネージャー業務への以降やチーム全体の業務分担を見直すなどを促すことが良いだろう。
ここからは、企業で活躍する管理職を育成するために行いたい施策を解説していく。どれを選択・実施するかは企業の状況や、管理職の育成進捗にもよるため参考までに見てほしい。
まずは、プレイングマネージャーからマネージャーへ業務の比重を移していく部分についてだ。
具体的な手法としては、管理職自身も含めたチーム全体の業務改善を行った上で、各メンバーの業務管理をしていくことが良いだろう。
業務改善とは、部署やチームにおける業務を洗い出し、改善・効率化できる箇所を見つけ対応することを指す。具体的な手法と流れは以下の通りだ。
特に、無駄を省くというフローが重要だ。チーム内で同じ業務を複数人で行っていないか、管理職自身がやっている業務を他に任せられないかを整理整頓していく。
チーム全体の業務をスリム化させることにより、管理職として管理すべき業務の全体像が見えてくる。また、自身のプレイヤー業務を移譲することでマネージャー業務に専念する余裕ができる。
詳しくは業務改善研修などを受けさせることでも対応できる。ぜひ検討してほしい。
業務をスリム化し、業務分担を改めて行った上で進捗状況を確認し適切なフォローをすることが業務管理のメインだ。
マネージャー自身で全て行うのではなく、ある程度チームメンバーに任せた上でそれをコントロールしていくことが重要だ。業務管理ツールやWBSなどを活用し、日々実践していきたい。
マネージャーに必要なスキルを、研修や勉強会という形で学んでもらうことも重要だ。短い時間でも学べる研修は多くある。具体的に学んでほしいテーマは以下の通り。
マネージャーの役割の一つが「チームで大きな成果を上げ、企業に貢献すること」だ。
そのためには、マネージャーがプレイヤーとして代わりに結果を出すのではなく、部下を育成していく必要がある。
中小企業の管理職はプレイヤーとして優秀な方面多く、部下育成が上手くいかないというケースも多い。優秀であるがゆえに自身でやってしまった方がはやいと感じてしまうのだ。
部下育成・後輩指導研修や管理職研修を実施し、役割を理解してもらった上で「教えるスキル」「仕事の任せ方と管理方法」を学ぶこともおすすめだ。管理職自身ではできていると思っていても育成力が足りない場合もあるため、外部研修などでスキルを磨くことがよいだろう。
マネージャー研修などで、マネジメント力つまり管理する力を磨くこともおすすめだ。
プレイヤーとして優秀であっても、マネジメントスキルをもともと持っているという人は少ない。学びの場を提供することで、マネージャーとして自身に足りない部分に気づいてもらうことができる。
なお、研修を社外・社内いずれで実施する場合でも「自身の部署ではどうすれば良いか」と現場で活かせるようなワークを入れると良い。
研修を受講してもらう対象者はとにかく忙しく、1日まるまる研修に時間を割くことができない場合も多い。
そのため、1名から気軽に申し込めるオンライン研修公開講座や、eラーニング動画講座なども活用することが推奨される。短い時間でポイントを押さえて学ぶことができるため、ぜひ検討してほしい。
中小企業として管理職を育成するためには、経営層にも協力を仰ぐ必要がある。具体的には以下の通りだ。
経営層がマネジメントなど、チームの全てに関わることでプレイングマネージャーがいつまでたってもプレイヤーの業務割合を減らせないという場合がある。
もちろん、繁忙期や企業内の状況にもよるが「部署のことは管理職にある程度任せる」という姿勢を取ってもらうことが良いだろう。
管理職に対してのフィードバックや評価は随時行ってほしい。今行っている方向性で正しいのか、改善すべき点は何かなどについては研修を実施したり本人に意識させることだけでは気付けない場合もあるためだ。
フィードバックにより行動を改善することが期待できるため、ぜひ行ってほしい。
本記事では、中小企業における管理職を育成する方法についてポイントを押さえて解説した。
中小企業にとって、管理職のスキル底上げはそのまま企業力アップに繋がる。
記事を読むことで、自身の企業の状態を一旦立ち止まって見直し、改善すべき部分がないかを考えるきっかけとしてほしい。