ベテラン層など、優秀な管理職が培った長年の経験やノウハウが失われることは、業務の遂行だけでなく組織全体の士気にも悪影響をもたらします。
本記事では、管理職が辞める主な理由やその対策、さらには離職防止のための成功事例について詳しく解説します。
管理職が会社を辞める・転職を考える理由には、以下が挙げられます。
管理職としての責任が重くなる一方で、上司や企業側でのサポートが不十分な場合、離職につながりやすくなります。例えば、業務の幅が広がりすぎる・業務量が多すぎるなど原因で業務時間が増加しワークライフバランスが崩れることもあります。人材不足のしわ寄せがすべて管理職に向いてしまうなども含まれます。このようなことが原因で家族との時間が取れず精神的にも肉体的にも疲弊する場合もあります。
人間関係の問題は、管理職が辞める大きな理由の一つです。管理職は多くの場合上司や部下との間で板挟みになることが多く、そのストレスから離職する傾向があります。また、昨今では部下から上司へののパワハラも大きな問題として取り上げられています。業務経験がない部署を取りまとめなければならない状況で、専門的な知識を持った部下からのパワハラを受けるなども離職の原因となります。
キャリアパスの不透明さも、管理職が辞める大きな理由の一つです。管理職は日々の業務で多大なプレッシャーにさらされています。その上でキャリアの進展が見えないと、現状への不満や将来への不安が募り最終的に退職を選択するリスクが高まります。具体的には、昇進や役職の基準が曖昧であったり、管理職としての評価が公平にくだされる仕組みがあるかどうかなどです。
管理職としての責任が増える一方で報酬や待遇がそれに見合わないと感じる場合、仕事に対するモチベーションが低下しやすくなります。「何をもって見合う・見合わないを判断するか」は難しい部分ですが「自身やチームの実績が適切に評価される仕組みが企業側にあるか」「評価の仕組み自体は誰が行っても公平なものか」という部分が重要視されるところです。
管理職は企業の方向性や価値観を部下に伝える役割があり、自身が賛同できない価値観を伝えることは非常にストレスフルな状態となります。(例:短期的な利益追求ばかりを重要視する企業において、長期的な視点を持つ管理職は自分の信念との間に大きなギャップを感じるなど)長年企業に務めている管理職であれば、年次を重ねるごとに価値観の違いを感じてしまう場合があります。なお、中途採用の管理職の場合、採用時に十分に自社の理念や価値観を伝えられていなかったという、別途の要因が考えられます。
管理職が退職することは、企業にとって重大な影響を及ぼします。具体的には以下の通りです。
管理職が辞めると、チーム全体の士気が低下する可能性があります。管理職は組織の方向性を示し、重要な意思決定を行う役割を担っているため、離職をしてしまうことで「私達もこの企業にいて大丈夫なのだろうか」と社員に不安や不信感を与えてしまう場合があります。
また、後任が決まるまでの間マネジメントや業務管理が適切にされない状態になり、成果が下がってしまうことも考えられます。
管理職の退職がプロジェクトや業務の停滞を引き起こす可能性があります。例えば、管理職が離職した後プロジェクトの意思決定が遅れたり、業務の進行がストップしてしまうケースが見受けられます。引き継ぎが十分にされないケースもあり、クライアントからの信頼を失うなどの問題が発生します。
管理職が会社を辞めると、新たな人材育成と採用に多額のコストが発生します。この過程には非常に多くのリソースが消費されます。
管理職自身の退職を引き止めることは難しいものです。そのため、退職したいと思ってしまう要因は何かを分析し、一つずつ改善することが必要です。管理職の離職を防ぐために具体的に行うべき対策をいくつかご紹介します。
管理職が長く勤務するためには、職場環境の改善が重要です。職場環境と言っても様々なものがありますが、具体的には「業務負担を適正なものにする」「オープンなコミュニケーションを推奨する」の2つが挙げられます。
適正な業務負担の配分は、管理職の離職を防ぐために重要です。業務負担が均等に配分されていないと、特定の管理職に過度な負担がかかり、ストレスや疲労が蓄積します。燃え尽き症候群や離職の原因にもなります。
人事担当や対象となる管理職以上の方(課長層など)が、現状の業務分担やチームメンバーに上手く仕事を振れているかなどを確認することが良いでしょう。管理職自身に定期的に現状を報告させるなども一つの手法です。
オープンなコミュニケーションを推奨することは、職場の連帯感を高める鍵です。コミュニケーションが促進されることで、社員同士の信頼関係が築かれ、問題解決がスムーズになります。また、情報の共有が進み、意思決定の速度も向上します。
該当の管理職だけが頑張るということは難しいため、チームメンバーとコミュニケーションを取る機会を作るということが良いでしょう。週に一度の全体会議や、上司と部下との1対1ミーティングを設けることで、コミュニケーションの機会を増やすことができます。
企業理念の再確認と共有は、管理職の離職を防ぐために重要です。社員が企業のビジョンや使命に共鳴することで、組織全体の士気と結束力が向上し、離職率の低減につながります。(例:定期的に理念やビジョンを社員と共有するためのワークショップやミーティングを開催するなど)
「この企業にこのままいて、自分は成長できるのか」というような将来への不安に対応する方法です。キャリア成長支援と公正な評価は、管理職のモチベーションを高め、離職を防ぐ手段として有効です。管理職は業務の多忙さやプレッシャーによりキャリアの停滞を感じやすいため、継続的な成長機会と客観的な評価があれば、自分の努力が正当に認められていると感じ、会社に対する満足度が向上します。
管理職が自己啓発やスキルアップを行うための支援策を導入することも有効です。例えば、管理職研修など必要な研修やセミナーに参加する機会を提供することで、自己成長を実感できる環境を整えることができます。
管理職は、一般社員と異なり様々な知識をすでに持っています。そのため、複数の研修の中から自由に選択できるようにする・事前にアンケートを取って研修テーマを選ぶなど「学びたいものを磨いてもらう」という形式もおすすめです。
本記事では、管理職が辞める主な理由やその対策、さらには離職防止のための成功事例について詳しく解説してきました。
管理職は新入社員や若手社員の良いロールモデルとして、できるだけ長く企業で活躍してもらいたい人材です。企業として現状を把握した上で取れる対策から実施していきましょう。