パワーハラスメント(以下パワハラ)は法律もでき、管理が厳しくなってきている。なかには「単に指導するつもりだったのに、パワハラとされてしまった」というケースもある。
パワハラと指導は似て非なるものだ。本記事では、パワハラと指導の違いを解説しながら、指導するときに意識すべき内容を紹介する。
はじめにパワハラと指導の違いをそれぞれ見ていこう。
パワハラとは「パワーハラスメント」の略で、自分の権力を振りかざして、相手へ苦痛を与える行為のことだ。以下の5つに該当すると、パワハラとして認定される。
パワハラによっては、人を死に追いやる場合もあるため許されるものではない。
なおパワハラのパターンは大きく分けて6種類存在する。どのような種類があるか見てみよう。
暴行・傷害など体にダメージを与えようとする行為だ。このような内容が当てはまる。
当たり前だが、ケガがなかったとしても、条件に該当すればパワハラ認定になる。
相手が落ち込んだり仕事ができなくなったりなど、精神的に傷を負わせてしまう行為のことだ。以下の内容が当てはまる。
精神的なダメージを与えられて、働けなくなったり精神疾患を患ったりする人もいる。
複数の従業員で、特定の人を仲間はずれにするのもパワハラだ。このような行動が該当する。
職場の中で孤立させようとするのが特徴だ。従業員の中には、仲間はずれにしたくないものの、上司からの命令に逆らえず、渋々従ってしまうケースもあるようだ。
明らかに達成不可能な業務量を与え、精神的に参らせようとする行為だ。これらの内容が該当する。
上司によっては業務が終わらなかったことに腹を立てて、殴ったり罵倒したりしてくる。他のパターンのパワハラと併用しやすいのが特徴だ。
誰でもできるような仕事のみ与え、自信を失わせていくパワハラもある。以下のようなケースがある。
まともな仕事を与えず、やりがいのない時間にしようとするのが特徴だ。
個人の特徴や性格などに関することを否定するのも、パワハラの一種だ。このような事例が該当する。
人によっては、親の悪口まで言ってくるケースもあるようだ。
パワハラと言っても様々なパターンがある。
仮に社内でパワハラが問題視されている場合は、どのようなパターンが多いか調べてから対処しよう。
指導とは相手のことを思いながら、伝える行為を指す。たとえば、このようなケースが当てはまる。
常に「相手のため」というのを意識しながら行動しているのが指導の特徴だ。ただし、自分では指導だと思っていても、伝え方によってはパワハラだと捉えられてしまう恐れがあるから気をつけよう。
パワハラになる確率が高いケースと指導になる確率が高いケースを表にまとめてみた。内容は以下の通りだ。
パワハラになる確率が高いケース | 指導になる確率が高いケース |
---|---|
相手を見下すために言っている | 期待の意味を込めて言っている |
業務において不要なことばかり指示している | 業務において必要なことを指示している |
威圧的・否定的な態度をとった | 受容的・肯定的な態度をとった |
会社や自分を守るための発言をした | 相手のことを守るために発言した |
上司に言われたから無理矢理行動している | 自主的に行動している |
見ての通り相手の想いを無視した行為はパワハラ、相手のことを考えた行動は指導になる確率が高い。
表の中でどれに当てはまるか分かれば、パワハラか指導か見分けやすくなるだろう。
従業員に指導するスキルが身に付けば、社内のパワハラ問題は減る。ここではパワハラ問題を起こさないための、従業員への指導方法を紹介する。
指導をするときは、その理由を伝えよう。たとえば、このようなイメージだ。
指導している理由を伝えて相手に理解してもらうことで、パワハラだと言われる確率を下げられる。ポイントは専門用語を使わずに、分かりやすく話すことだ。
横文字や業界用語を言い換えるだけでも伝わりやすくなる。
指導する理由を話すにしても、相手が理解していなければ伝えたことにはならない。
「一方的に話された」と思われると、威圧的な態度をとったパワハラだと言われる恐れがあるため気を付けよう。
仕事の仕方を注意するにしても、改善点を伝えることが大事だ。たとえば、このようなイメージだ。
「否定する部分+改善点」の形で話せば、パワハラではなく指導として扱われる確率が高くなるだろう。
自分の価値観を押し付けたり、完璧を求めるあまりに厳しく注意したりするのはNGだ。仕事上で必要な話のみを伝えさせることが大事だ。NG例はこちらだ。
上記の行動は社内で問題視される確率が高い。不要な発言をさせないよう、共有しておこう。
相手の言い分を全て聞き、そのような行動をとった理由や経緯などを聞くイメージだ。
相手が話しているときに否定すると、委縮してしまったり精神的ショックを受けたりして社内で問題視される恐れがあるからだ。
話を聞き終えてから、自分の話をさせよう。
人の好き嫌いによって、指導方法を変えないことも重要だ。指導するときは感情的になってはいけない。
「指導する理由」、「なぜその内容を指導しようと思ったのか?」などの根拠に基づいて伝えることが重要だ。
平等に指導しないと、他の人から反感を買うことになる。それを防ぐためにも、根拠に基づいて指導することを忘れてはならない。
同じ内容の指導をするにしても、ある程度理解できている方(Aさん)と、何も理解できていない方(Bさん)に話すときの内容は異なる。
Aさんには、基礎的な説明を省いたり専門用語を交えたりしながら伝えてもいいかもしれない。しかしBさんに指導する場合、Aさんと比べて詳しく説明をしたり専門用語をかみ砕いたりして、伝えることが要求される。
分かりづらく説明すると、自分だけ指導してもらえないと思われ、パワハラの疑いをかけられる場合があるからだ。
そのような事態を起こさない意味でも、相手の理解度に合わせた指導をさせよう。
社内でのパワハラを防ぎたいのであれば、従業員が相談できる体制を整えることが大事だ。
誰にもパワハラに関する悩みを相談できずに、悩んでいる従業員も少なくない。なかには自分だけで悩みを抱えた結果、心身ともに病んでしまう方もいる。
だからこそ、相談できる体制を整えるのは大事だ。最後に相談できる体制を作るときのコツを紹介する。
スタッフは男性と女性の両方をそろえておこう。相談者によっては、スタッフの性別を希望する場合があるからだ。
悩みを抱えているけど、女性(男性)のスタッフがいないから、相談できないというケースもある。そのような方が増えると、社内のパワハラ問題は解決しない。
全従業員が働きやすい環境を作るためにも心掛けよう。
相談者の中には相談したものの、今後の結果がどうなるか気になる人もいる。
それを防ぐには相談者がソワソワした気持ちを持たないよう、フォローすることが大事だ。たとえば、以下のことを行うといいだろう。
相談者が安心して働けるよう、細やかなフォローをしてあげよう。
従業員によっては新たな悩みが生まれて、再度相談されるかもしれない。仮にそうなったとしても、嫌な顔をせずに相談に乗ることが大切だ。
そうすれば、相手もホッとすることが増えるだろう。
外部相談窓口とは、弁護士や社労士など社外の専門家に相談できる窓口のことだ。プランによってサービス内容は異なるが、毎月決まった金額を支払うと利用できる。
社内に外部相談窓口を設けるメリットは以下の通りだ。
相談者の対応をしてもらえるため、社内スタッフのみで相談業務を回せなかったり、専門的過ぎる内容で回答できなかったりするときに便利だ。
また相談者の中には、社外の方に話を聞いてもらいたい人もいる。そのときも、外部相談窓口が役に立つはずだ。
社内の相談体制に関するアドバイスを専門家からもらえるのもメリットだ。運営方法や相談者への対応方法など、プロならではの回答を得られる。
その他にもパワハラをしている方向けの更生プログラムを作成するサービスや、社内スタッフ向けに勉強会を行ってくれる外部の専門家もいるため、相談体制を整えるときに活用するといいだろう。
このように外部相談窓口は、相談者にも社内スタッフの両方にメリットがある。相談業務をスムーズに回すためにも覚えておこう。
パワハラ研修を実施することも防止のための手段だ。上司から部下へのパワハラだけではなく、社歴の長い部下から短い上司へのパワハラも増えているため、役職や年次にとらわれず受講させることが良いだろう。
パワハラと指導の違いを紹介した。2つの違いは以下の通りだ。
簡単に言えば自分本位か相手のためを思っているかによって、どちらに該当するかが変わる。本記事内で紹介した表を見ると、理解しやすいはずだ。
しかし指導してもパワハラと捉えられるケースがあるので、相手に誤解を与えずに伝えることが重要だ。
これを実現させるには従業員にパワハラと指導の違いを教えることが大事だ。共有するときは、これらの内容を伝えよう。
上記のことを意識して相手へ話せば、パワハラだと思われる確率は減る。社内のトラブルを増やさないためにも、パワハラと指導の違いは覚えておいた方がいいだろう。