新入社員は、業務に役立つスキルを習得するために入社後研修を実施する。しかし、研修後に配属先にて適切な育成や指導がされていなければ効果を発揮することは難しい。
本記事では、研修後に現場でどのような育成・OJTをしていくことが良いか、3つの目的と9つのポイントを紹介する。
OJTとは先輩社員が新入社員に対して、現場で指導する教育方法のことだ。先輩社員がトレーナーとして新入社員の傍についているため、分からない所があったときも聞きやすい。
ちなみにOJTと似た言葉でOFF-JTと呼ばれる教育方法も存在する。これは現場とは違う場所で指導する教育方法のことだ。座学や講義形式の研修などが該当する。
OJTには様々な目的がある。ここでは3つの目的を紹介する。
新入社員の中には、社員としての自覚を持てないケースもある。OJTでは先輩社員と一緒に現場へ行くため、社内の臨場感が新入社員に伝わりやすい。社員としての自覚を与えやすいため、OJTは新入社員のマインドを変えるのに最適だ。
いきなり新入社員に仕事を命じても、スキルや経験がなければ活躍してもらうのは難しい。しかし事前にOJTを実施しておけば習ったことを業務に活かしやすく、スキルや経験がない新入社員でも取り組める。このようにして、現場で活躍できる人材に育て上げるのもOJTの目的になっている。
OJTではトレーナー役の先輩社員とコミュニケーションをとれる。業務で困ったことをすぐに確認ができるし、会社全体でも不明確な部分を教えてもらうことができる。結果社内の理解を深められ、社内に馴染みやすくなるのだ。
OJTには様々なメリットがある。ここでは3つのメリットを確認する。
1対1で行う教育方法であるため、新入社員によって教え方を変えられる。先輩社員に教わったことを理解するのが早い新入社員であれば、スピーディーにOJTを進めていけばいい。逆に理解するまでの時間がかかる新入社員は、ペースを落として指導するという風に調整できるのもOJTの特徴だ。
OJTは現場で先輩の様子を見ながら、スキルを習得できる研修だ。とくに口頭で伝えるのが難しいスキルの場合は、OJTを用いると新入社員はどのように業務をこなすべきかイメージしやすい。結果、仕事を覚えるのに役立つ。
トレーナーは社員であるため、外部から講師を呼ぶ必要がない。したがってコストを抑えられる。
また外部から呼んだ講師は社員とは違い、社内に在籍しているわけではない。外部講師によっては研修の打ち合わせ時間をとってもらえない場合がある。その場合、社員に講師をしてもらう場合と比べて手間がかかる。よって実施するまでの手間を省きたい企業にも、OJTは向いているのだ。
OJTを成功させるには手順が大切だ。ここでは、5つのステップを紹介する。
目的を決めていない状況でOJTを行うと、トレーナーが効率よく教育できなかったり、OJT終了後に思ったような結果を得られなかったりする恐れがある。しかしOJTの目的を決めておけば、トレーナーはゴールに向かって進めやすくなる。運営側が期待している成果を新入社員に得てもらうためにも大事だ。
OJTをどのようなスケジュールで進めていくか計画を立てる。計画を立てるときは、以下のことを決めるといい。
なお計画を立てるときは、予備時間を設けた方がいい。トレーナーに急用が発生したり、想定したよりもOJTの進み具合が遅くなったりするケースも0ではないからだ。
他のカリキュラムの時間を短くしなければいけない場合もあるが、それはOJTの質を下げる行為につながる。その状況を回避するためにも予備時間を設けて、遅れが出たとしても他のカリキュラムを削らない進め方を意識すべきだ。
新入社員に指導するトレーナーを決めるときは「お互いの相性・トレーナーのスキル」などを参考にすべきだ。新入社員よりも社歴が長い社員だとしても、相性が悪かったりスキルが低いトレーナーを採用したりすると、OJTの成果が見込めなくなる。テストを設けたり仕事における成果を見たりして、トレーナーを決めるといい。
SaaSの比較・資料請求サイト「kyozon」では、OJTに向いてない人の具体例も紹介されているので参考にしてみてほしい。
「OJTとは一体何なのか?意味を分かりやすく解説!向いてない人の具体例も紹介」
OJTの目的を伝える理由は、運営側で敷いた道に沿って教育してもらうためだ。トレーナーに全て任せると予期せぬ方向に指導されて、失敗に終わるケースがある。なかには会社の印象を悪くする発言をしてしまうトレーナーもいる。そうならないよう、前もってOJTの目的をトレーナーに伝えるべきだ。
OJTの計画や目的を参考にしながら、新入社員の指導をしてもらう。トレーナーによっては、新入社員への指導にてこずる場合がある。トレーナーに相談されたら、親身になって聞いてあげることを社員へ伝えておくといい。1人で悩みを抱え込んでしまうトレーナーもいるため、社員総出でサポートする体制を作ることが大事だ。
最後にOJTのポイント・注意点を紹介する。
習得するのが難しいスキルは、身につくまで継続的にOJTを行った方がいい。中途半端な状態でOJTを終わらせると、新入社員の芽を潰すことになってしまうためだ。新入社員が活躍できるようにするためにも、何度もOJTを行った方がいい。
ただし同じ内容のOJTを繰り返すとマンネリ状態になり、新入社員のモチベーションを下げてしまう恐れがある。そのため、新入社員が飽きない仕組みを作ることが重要だ。
OJTに抜け漏れが生じると、クオリティの低いものになってしまう恐れがある。そのため、チェックリストを作成して漏れがないようにOJTを実行することが大切だ。たとえば以下のような項目を盛り込むといい。
上記のようにOJTで行わなければいけない内容をリスト化することで、漏れのない状況でOJTを実行できるようになるはずだ。
最低限の知識を習得しておかないと、進められないOJTもある。その場合はOFF-JTを実施してからOJTを実施すべきだ。するとOJTで教えてもらった内容を理解するのが楽になるため、スムーズにOJTを進められるようになる。OJTを有効活用するためにも、OFF-JTを活用すべきだ。
OJTの時間を確保しないと、新入社員はスキルを磨けずに活躍できなくなる状況に陥る可能性が高い。そのためOJTの時間をしっかりと確保すべきだ。とくに理解度が遅い新入社員の場合は、OJTの時間を長めにとる形で調整するといい。
定期的に面談を実施する理由は、OJTが上手く進んでいるか確認するためだ。新入社員やトレーナーによってはOJTが上手くいっていないのにも関わらず、相談しないケースがある。
それを放置すると状況がどんどん悪化してしまい、取り返しのつかない状況になる。定期的に面談を実施して状況確認することは必須である。
トレーナーによってスキルにバラツキがあると、新入社員のスキルにも差が出やすくなる。それを防ぐためにも、均一化させた方がいい。代表例がトレーナーに同じスキルを習得させることだ。トレーナーの活動をするときに最低限必要となるスキルを決めておけば、均一化するのが楽になる。
均一化すれば、新入社員の中で「〇〇さんがトレーナーだったからスキルが習得できなかった」と愚痴を言われることもなくなる。社内の雰囲気を悪くしないためにも重要だ。
OJTが忙しくなるとトレーナーの実務が止まってしまい、最終的にはチーム全体の業務にも影響が出てしまう。そうしないための仕組みを、チームに作らせることも大切だ。
たとえばチームメンバーでトレーナーの業務をサポートしたり、実務が止まらなくなる業務体制を整えたりなど様々な方法がある。
OJTに役立つツールは数多く存在する。たとえば「banto」と呼ばれるツールの場合、目標を設定し進捗状況を入力すれば、どのくらい達成しているか把握できるようになっている。社員1人あたり毎月300円台(2021年9月28日現在)で利用できるため、コストを抑えたい企業に向いている。
また「Talent Palette」と呼ばれるツールには退職を考えていそうな社員を推測したり、社員の最適配置などを提案したりする機能などが完備されている。AI機能によるメニューが搭載されているので、社内の状況をいち早く知りたい企業に最適だ。
ただしツールによって特徴が異なるため自社に合うものを見極めなければならない。初期費用として数十万円するものもあるため、慎重に選ぶことが大事だ。
フィードバックをしなければ、新入社員はできていない所を全て改善できない。結果、克服するポイントが分からず、成長を止めてしまうことになる。そのためトレーナーは、新入社員へフィードバックすべきだ。
ちなみにフィードバックのときに大事なのが、新入社員が理解できるように伝えさせることだ。トレーナーがフィードバックをしても、内容を理解してもらえなければ意味がない。その他にフィードバックをした後に、新入社員へ不明点がないか尋ねるのも重要だ。新入社員の中にはトレーナーに遠慮してしまい、自分から質問できないケースもある。その状況を防ぐためにも、トレーナーから聞かせることが大事だ。
OJTは様々な企業で実施されているが、新入社員にとって効果があるものを行わないと意味がない。そのためOJTの目的をハッキリさせたうえで実施すべきだ。ちなみにOJTには、以下の目的がある。
1.新入社員のマインドを変える
2.現場で活躍できる人材に育て上げる
3.社内に馴染みやすくする
これらを重視しながらOJTを行えば、新入社員にとって効果的な教育を施すことができる。そうなれば新入社員の成長スピードも速くなるはずだ。その他にもOJTを行うときに意識すべきポイントや、注意点があるため紹介する。
1.習得するのが難しいスキルについてはOJTを何度も行う
2.チェックリストを作成し、抜け漏れがないようにOJTを実施する
3.OFF-JTと組み合わせながら、OJTを実施する
4.OJTの時間をしっかりと確保する
5.新入社員・トレーナー共に、定期的に面談を実施する
6.トレーナーのスキルを均一化させる
7.トレーナーの実務が止まらないようにする
8.ツールを活用してOJTを行う
9.新入社員へフィードバックする
上記のことを意識し続ければ、質の高いOJTを提供できるようになる。いち早く新入社員に現場で活躍してもらうためにも、OJTに力を入れていただければと思う。