「新入社員研修の期間は適切か」という悩みは人事・研修担当者が一度は考えたことがあるものだろう。
着任後にスキル不足や現場での教育負担が大きいなどの声が現場から聞こえる場合、研修内容や目的と期間に問題がある場合がある。
研修の期間をどのように決めるかは企業や配属先、職種により大きく異なる。ただし、「昔からこの期間だから今もこのままで良い」という考えが必ずしも正しいとは限らない。
本記事では、新入社員研修として適切な期間やその決め方、注意するポイントについて解説する。
まずは、新入社員向けの研修や教育を実施する目的から確認する。目的は「社会人へのマインドセット」だ。学生から社会人への切り替えをスムーズに行いつつ、ビジネスシーンで必要な基礎スキルを身に付けることを内容として実施する企業が多い。
新入社員研修の期間は、1週間から3ヶ月以内など幅がある。一般職と技術職によって以下のように異なる形だ。
営業、事務など、一般職として配属になる新入社員に対しては、入社式後~一週間程度で研修を終わることが多い。
基礎となる部分や社会人としてのマインドセットをした上で、できるだけ早く職場に着任させることで慣れてもらうことが大きな目的だ。
着任後は、新人1人に先輩社員1人がつく「OJT制度」を活用しながら、業務実施を通して学ぶことが多い。
研修内容 | 説明 |
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新入社員研修 | 新入社員に必要なスキルをまとめて学ぶ |
新入社員 社会人基礎研修 | 学生から社会人へのマインドセットをする |
新入社員ビジネスマナー研修 | 社内・社外への適切な対応をするためのマナーを学ぶ |
新入社員ビジネス文書研修・ビジネスメール研修 | わかりやすい文書・メール作成方法を学ぶ |
新入社員電話応対研修 | 電話の受け方、かけ方、クレーム電話対応を学ぶ |
新入社員向け Excel(エクセル)研修 | 基本的な関数やグラフ・表が活用できるようになる |
技術職についても、入社式~一週間後までは一般職と同じく基本的な部分・ポイントを研修で学ぶ。その上で、業務を行うために必要なスキルを1~3ヶ月以内の研修で学ぶという流れだ。
SEなどの技術職では、企業内での部署・現場に配属となっても基礎的な部分やプログラミング言語への理解ができていなければ「そもそも業務が進まない」ということが多いため、このような形が取られる。
入社時には配属先が決まっていない場合もあり、研修を通して適正を見つつ配属先が決まるという形だ(もちろん、企業によって異なる)
研修内容 | 説明 |
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IT基礎研修 | 基礎から学び、全体像を把握する |
Java研修 | 様々な開発に利用されている、Java言語を習得する |
Python研修 | ビジネスでの応用範囲が広く、活用できるプログラミング言語を習得する |
※上記カリキュラムは1日での簡易的なものだが、基本的にはこれらの内容を開発演習も含めて3ヶ月程度で実施する。
では、具体的にどのように研修期間を決める必要があるのだろうか。その流れとポイントについて解説していく。今年の新入社員研修の期間に悩んでいる人事・研修担当の方はぜひ参考にしてほしい。
期間から決めるのではなく、「今年の新入社員が、研修を受け終わった後どのような状態になってほしいか」を考えることからはじめよう。
その目的に合わせて、必要な研修テーマが決まり、それをこなすためにどのくらいの期間が最低でも必要かが明確になってくる。
目的が決まったら、内容を決める。実施する内容が決まると自然と必要な時間数が出てくるため期間が決めやすい。
職場では「研修で学んできてほしい」「この程度はできるようになってほしい」というレベルが、研修に反映されていないケースが多い。
職場からよく挙がる声としては以下のようなものだ。
「今の職場で、必要なスキルは何か」を管理職やマネージャー層にアンケートすることも良いだろう。それより少し下のOJT担当者や教育担当者向けにヒアリングする形でも構わない。
研修の役割の一つである「現場での育成負担を減らす」ということにつなげるためにも、これらを把握した上で研修テーマ・期間を決めていきたい。
入社から半年以内で、新入社員は会社や仕事に慣れていくと言われている。その期間内は適切なフォローをしていくことが重要だ。
入社式→研修実施の後に、どのようにフォローするかも考えておきたい。
新入社員フォローアップ研修を実施することや、研修最後に「入社半年後までの目標」をたててもらい、半年後には部署の上司と面談をしてもらうなど方法は様々だ。
「研修って結局何やったか覚えていない」「研修が職場での業務に活きなかった」とならないようなスケジュール立てをしていこう。
最後に、研修期間に関連する注意点についていくつか触れていく。
研修期間が決まった後に会場を押さえることでは間に合わない場合も多い。
とりあえず例年通り場所と期間を押さえた上で、上記の流れで考えることも良いだろう。
特に、新入社員に人気のビジネスゲームやレクリエーションなどを活用した研修では、通常の会議室では狭すぎる場合もある。
外部会場の場合は2~3月には4月のスケジュールが埋まってしまうことも多いため注意したい。
また、会場へのPCや機材の運び出し、テキストの手配などについても計画的に行い、研修当日スムーズに学びが開始できるようにしよう。
オンライン研修も主流になってきた今だからこそ、どのような研修形式で実施するかを検討しておきたい。
リスキルでは、オンラインとオフラインを同時に行うハイブリッド研修等も提供している。様々な研修形式を検討した上で、受講生である新人が一番ストレスなく受けられる状態にしたい。
新入社員研修を社外の研修会社に依頼する場合も多い。本記事を書いているリスキルも研修会社のうちの一つだ。
評価の高い講師は早めに埋まってしまう。できるだけはやく研修会社や講師の選定をしておこう。
社内講師で実施する場合も同様だ。研修に慣れている社員が多くいる場合は別だが、ある程度準備期間を設けられるような配慮をしていきたい。
新入社員を受け入れる側として「いつから新人がくるのか」「何をどこまで学んでくるのか」は最も知りたいことだ。
4月から部署目標達成に向けて動いていることがほとんどのため、新人育成計画やフォローの仕方についても部署ごとで異なる。
人事・研修担当側から、必要な情報を早急に共有しておくことが良いだろう。(新人に許可を取った上で、感想やレポートを作成してもらい上司側に共有することも、企業ではよく行われている)
また、もし本人に不安な点があれば事前に共有しておくことも良い(ただし、メンタル的なものや個人的なものについては、新入社員本人の了承を得てから共有するように気をつける)
本記事では、新入社員研修として適切な期間や目的、その決め方に関して注意するポイントを解説してきた。
研修期間以外にも、上記で触れた研修カリキュラムについて悩む企業も多い(内容や新人に合わせたケースワークなどをどうするか)リスキルなども含め、外部の研修会社を活用することで負担を減らすことも一つの手段だ。
採用フローを経てめでたく入社となった新入社員が、自身の強みを活かして活躍できるために適切な研修期間、スケジュールを立てておきたい。