新人の早期離職を防ぐためには、新人側の努力だけではなく、受け入れる側の準備も必要だ。
しかし、日々の業務に追われてしまうことにより十分な受け入れ体制の準備・育成の対応ができていない場合も多い。
本記事では、新人を受け入れる側の上司・先輩社員として、どのように受け入れ育成していくことが良いかをポイントを押さえて解説する。これから新人を受け入れる側の方はぜひ参考にしてほしい。
新人を受け入れる体制を整える理由は、早期離職を防ぐためだ。
コストを使って採用し、新人研修を通してベースを固めてきた状態の新入社員を活かすのは現場の上司・先輩社員だ。もちろん新人本人が努力しなければならない面も多いが「企業に馴染む」という意味では、上司や先輩社員が受け入れる体制・育成する体制を整えることが必須事項となる。
即戦力として活躍してほしいということであれば、受け入れ側としても必要な準備を行うことが必要だと再認識しておきたい。
新人研修後に受け入れる際、準備したおきたいことは多くある。当日までに準備しておくことと、初日に行うことに分けて解説する。
配属後に歓迎されていると感じてもらうためには、業務を始めるための準備をある程度しておくことが必須だ。具体的には以下の通り。
特に育成担当者である先輩社員に必須の項目がここだ。何をどこまで学んできたのかを理解することで、今後の育成時に活用できる。
「これは研修でもやった内容だから重なる部分も多いけれど…」
「研修でExcelを習ったかもしれないから、今日教えるのはそれを使って行くんだけど、不安な点があったら教えてね」 など
また、教える内容が重複することも防げるため、カリキュラム内容だけでも確認しておきたい。
こちらは企業によるが、アンケート内容が開示されている場合「どのようなフォローが必要か」という角度からアンケート内容を確認しておくことも良いだろう。
などの状況では、「準備されていない・歓迎されていない」と感じる場合がある。別部署(情報システム部や人事)が準備してくれたものであっても、「職場で自身がこのPCを使うと想定して、使いづらい点はないか」という目線で準備していこう。
人事関係の資料はすでに手渡されている場合が多いが、部署で回収するものやマニュアル・商品やサービスのパンフレットの配布など、必要なものは準備しておこう。
「初日に渡すもの」としてリスト化しておくと、今後の新規加入者(新人・中途採用者)にも活用できるためおすすめだ。
配属初日は、部署メンバーとランチを取ることでコミュニケーションのきっかけとしている企業も多い。こちらも人事主導であれば行う必要はないが、部署ごとで実施する場合は事前に準備をしておこう。
参加する先輩社員はOJTやメンター担当者などをピックアップしてあらかじめ声をかけておくことで、スケジュールをあけてもらう手配をしたい。
初日に行うこと、スケジュール、それを担当するチームメンバーを誰にするかなどは準備しておきたい。
当日誰も対応することができないと、新人が放置されたままになってしまう。初日だけでも対応者を決めておきたい。
座席が決まっているような職場環境であれば、デスクの整理整頓をして綺麗な状態で受け入れる準備をしよう。
ここが以外と忘れられがちだ。新人として仕事を頑張るスペースであるため、ある程度は綺麗な状態にととのえておきたい。「誰が行う」を決めておかないと誰もしないことが多いため、このあたりも確認しておきたいところだ。
なお、これらの準備を育成担当者に全て任せる場合、管理職やリーダー層が一度チェックすることも良いだろう。抜け漏れがないようにチーム全体で新人を受け入れる体制をつくることが重要だ。
次に、配属初日に行うことだ。
新人にとって「スキルや知識がないけれど、大丈夫かな」という不安は誰しもが持ってるだろう。そのため、部署やチームメンバー全員で歓迎をすることが重要だ。
まずは相手の存在を承認する挨拶、声がけを一人一言でも構わないので、やってみてほしい。「ここにいて良いんだ」という安心感は、今後のモチベーションにもつながる。
人間関係が上手くいくのか、という不安も持ってしまいやすいものだ。配属後はメンバーの自己紹介や簡単な業務内容を伝える場を設けることが良いだろう。
朝にミーティングを行う・朝礼時に軽い自己紹介をしてもらうなど、方法は部署によって様々だ。今後の人間関係のより良いスタートができる方法を検討してほしい。
具体的な業務レクチャーに入る前に、部署としての目指す方向性や目標を伝える場を設けることもおすすめだ。
「ただ任された業務を行う」だけではなく、「チーム全体でこの目標を達成するために、自身の業務やその他できることを手伝う」という姿勢を醸成することで、チームへの帰属意識も高まる。
管理職から方針を伝える際の最後に実施しても良いだろう。現時点で不安に思っていること、確認したいことを聞く場を設ける。
もし全体に対して言いづらいことがあれば、個別に聞いてほしい・メールでも良いなどのフォローをすると、研修期間中に思っていたことや不安を早期に解決することができる。新人側からは言い出しづらい場合も多いため、上司や先輩社員からアプローチすることがおすすめだ。
実際に働く職場を案内してまわる。デスク周りだけではなく、部署の場所や会議室、倉庫や清掃関係に関する場所などを案内しておきたい。
使い方に独自のルールがある場合は、マニュアルを作成しそれと併せて見て回ることが良いだろう(ロッカーの使い方、倉庫の開け方、土日出勤時の鍵の開け方など)
このあたりは部署やチームにもよるが、扱う商品・サービスの説明や部署内の業務の流れなどを説明する場は設けておきたい。
なお、上記でも解説したが、レクチャーすることについて新人研修でどの程度やってきたかを確認してからスタートすると良いだろう。
例)PowerPointでの企画書作成レクチャーを行う場合
配属から1ヶ月後に、個別面談(1on1ミーティング)を実施することもおすすめだ。
配属してからを振り返り、不安や疑問点があればこの時点で解決策を一緒に考える場とする。もちろん、新人によってはもっと早く面談を実施した方が効果的な場合もあるため、あくまで1ヶ月は目安として考えてもらいたい。
いきなり「明日面談だから」と言われても、新人側としてプレッシャーに感じたり不安に覚える場合もある。
「配属後1ヶ月たったら、全ての新人に個別面談をしているんだ。準備することは特にないから不安なことや疑問点を共有する場にしたい」など、目的を伝えた上でスケジュールを開けてもらおう。
面談時に「最近どう?」と聞かれても、困ってしまう新人も多い。何が課題か・何が不安かが明確でない場合も多いためだ。ある程度面談をする側が準備をしていく必要がある。
普段の働きぶりや良かったことをメモしておくことで、この場でフィードバックすることができる。直接新人を褒めることができる場でもあるため、普段から書き留めておくことがおすすめだ。
1ヶ月勤務をし続けてくれたことへの感謝を伝えよう。学生から社会人になった際、1日働き続けるということは思っている以上に負担が大きい。まずは承認からはじめたい。
その上で、面談を実施する目的を改めて伝える。
また、面談内で話したことは口外しないということも伝えておきたい。本人の許可なく口外することはなく、評価にも影響がないことを伝えた上で面談を開始する。
面談のメインは、新人の現状をヒアリングすることだ。具体的に確認したいことをは以下の通り。(面談対象者により、聞く内容を変更しても構わない)
上記の中で、どれをどのように改善していくか一緒に考えていく。必要なリソースがあれば提示し、すぐに改善が難しいものについては方向性を示した上で「今ならここまで対応できる」と実現可能な範囲を伝えよう。
ここで過度に期待させてしまうと叶わなかった場合に逆効果となるため注意が必要だ。
定期的に行う場合、次回面談日を決めて終わりとなる。もし次回が人事評価面談となる場合はその旨を伝えた上で、不安な時は全員にいつでも面談は実施可能と伝えている、と話しておきたい。
不安な状態になった時の窓口を提示してあげることで、ある程度のリスクマネジメントとなる。
本記事では、新人研修を終えた社員に対して、受け入れ側として行いたいことを確認してきた。
上記で確認してきたことについては、オンボーディング研修 新入社員編でも詳しく解説している。ぜひ確認してほしい。
なお、受け入れ側がここまでしなければならないのか、という意見も出てくるだろう。現状、早期離職を防ぐために新人本人だけに頼ることは難しい。そのため、はじめの1ヶ月程度までは計画だてて支援をしておくことで独り立ちできるスピードも上がっていく。
また、一度プランを立ててしまえば今後の新規加入者(新人・中途採用者)にも活用できるため、ぜひ配属した後の流れや支援方法を部署全体で考える場を設けてほしい。