入社してある程度の年が経つと、新入社員だった人も中堅社員として扱われる。
中堅社員は新入社員と比べて、多くのことを要求されるため、覚えておくことも多い。中堅社員には、果たすべき役割や目標がある。しかし理解できていない中堅社員は多い。仕事において自身には何が求められているかを正しく理解していないと、周囲に迷惑をかけることになる。
本記事では、中堅社員の概要を紹介しつつ、果たすべき役割や目標を説明する。
中堅社員とは入社から2年以上経っており、かつ管理職に就いていない社員が対象とされることが多い。ただし中堅社員の基準は各会社によって異なるため、明確な基準はない。
例えば、以下の記事でいうと年数の目安を 3~7年目としているが、同様に「経験や業界によって異なる場合も」としている。
中堅社員って何年目から?中堅社員の果たすべき役割と目標、その立場について解説!(デジタル化の窓口)
ここでは中堅社員が果たすべき役割や目標を4つ紹介する。
中堅社員は自分の業務をこなすだけではなく、後輩の指導やサポートも任されるため、バランスを考えながら業務に取り組まなければいけない。
後輩がうまく育てば自身の業務の引き継ぎができるため、自分の仕事をある程度任せられるようになる。また、単に仕事を教えるだけでなく、会社や上司が設定した目標や方針への正しい理解を促すことも大切だ。ちなみに後輩の指導や育成を行うときは、以下4つのことを意識するといい。
後輩に理解してもらえるよう、分かりやすく説明することが大事だ。言葉をかみ砕いたり、後輩のペースに合わせて話したりなど、相手目線に立って説明するのがいい。正しく理解をしてもらえないと、後々改めて説明をすることになったり、トラブルが発生する可能性がある。
指導・育成の時間を節約したくても、一気に教え込むのは良くない。キャパオーバーして、頭が混乱してしまうためだ。新しいことを覚えられなくなったり、今までの業務をこなせなくなったりする恐れがある。後輩に順序良く仕事を覚えてもらうためにも、教える量を調整することは大切だ。
悩み事をたくさん抱えていて苦しむ後輩もいる。心身ともに滅入り追い詰められている状況になっている場合もあるため、相談されたらしっかり話は聞くべきだ。
その際、相手やその話に興味関心を持って積極的に聴く姿勢、積極的傾聴(アクティブリスニング)を持つといい。積極的傾聴は話す側と聴く側がお互いに納得することをゴールにしている。後輩の悩みの本質を理解できるようになり、ストレスや不安を和らげる効果がある。
後輩自身が自分のミスに気付くのは難しいため、できていない箇所があったときは、フィードバックを行うべきだ。問題、欠点に着眼点を置くのではなく、今度からこうしようと未来に向けてするべきことを教えるといい。
なおフィードバックのときは、上下関係など関係性を重視するのではなく、相手と助け合っている意識を持つといい。「教える」ではなく、相手の心に「寄り添う」存在であることを忘れないようにすべきだ。
こちらのコラムでも詳しく紹介されている。
→ 中堅社員の後輩指導力を育成する方法とポイント|アルー株式会社
中堅社員となると、チームをマネジメントする機会もでてくるだろう。その際に必要なことはリーダーシップであり、果たすべき行動は以下4つだ。
リーダーシップの最たるものが方向性を示す「行動」だ。どこを目指すべきなのか明確にする必要がある。
方向性を宣言するだけ意味がない。目標を達成するためには、個人ではなく、チームとして業務に取り掛かる必要がある。
コミュニケーションによりエンパワーメントを進めていくのがリーダーの行動だ。メンバーが主体的に進んでくれるように支援を行わなければならない。
リーダーは他メンバーから模範となる人間性と行動が求められる。
中堅社員だからこそ求められるのが、「周囲を巻き込んで、ことを成していく力」だ。
中堅社員は仕事ができるようになってきた結果、「自分の仕事」に集中してしまいがちだ。しかし、中堅社員には自己完結の仕事ではなく、より大きなプロジェクトを達成する力が求められる。
一人では物理的や能力的にできないことに取り組み、成果を上げるためには、部門や部署を超えた周囲の人々との協働が必ず必要だ。巻き込むために必要なスキルを3つ紹介する。
共に仕事を行っていくためにはまずコミュニケーションによる関係構築力が必要だ。また、中堅社員の「つなぎ役」としての仕事が多くある。関係構築能力はその役割を果たすために必要なスキルとなる。
チーム間や部署間など利害が対立することはよくある。その結果としてひとつのチームにならず、行動が小さくまとまってしまう場合もある。調整力を発揮し、社内の他のメンバーと積極的に前に進めるようにするのは中堅社員の仕事だ。
社内で人を巻き込むためにはまず上司を巻き込む必要がある。上司も巻き込んで仕事を行っていくためには、フォロワーとしての役割を自分が担えているかが重要となる。会社や上司の方針に沿っていなければ、勝手な行動としてブレーキがかかるのは当然だ。
中堅社員にもっとも求められるのは「大きな成果をあげる」ことだ。個人での成果はもちろん、より大きな仕事に対して、チームと共に「やり抜く力」が求められる。前述の巻き込む力があっても、目標を達成できなければ意味がない。
適切な計画を立て、メンバーの進捗を管理し、目標に向かっていく必要がある。同時に、大きな成果を上げるにはこんなんやトラブルがつきものであることを理解しなければならない。発生時の冷静な状況分析力と判断が必要不可欠だ。
ここからは中堅社員を育成するポイントを5つ紹介する。
中堅社員の立場を自覚させれば、新入社員時代とは違う行動をとるようになる。自覚させる方法を2つ紹介する。
部下をつけると部下の面倒を見たり、業務を管理したりする作業が発生する。それを何日間も繰り返すと中堅社員は部下について考える時間が増えていく。結果、中堅社員の立場を自覚させることにつながるのだ。
プロジェクトの部門管理など、権限が大きいポストに就かせるのもいい。自分だけではなく他のメンバーを扱う業務も多く、自身のマネジメントスキルを磨くきっかけになる。よって中堅社員の立場を自覚させるのに向いている。
キャリアの方向性が定まっていないと、どのようなプロセスを経ればいいか分からなくなり、中堅社員としての業務を全うするのも厳しくなる。自分が進むべき道を作り、中堅社員として前へ進みやすくするためにも、キャリアの展望を示すことは大事だ。
中堅社員がキャリアをイメージしやすいように、いくつかの具体例を示すといい。たとえば「Aのキャリアはマネジメントを行いながら、将来的には営業の管理をするコース」、「Bのキャリアはマーケティングスキルを身につけながら、広報やPRのプロを目指すコース」と言った形で説明すると、中堅社員側はキャリアの種類や違いが分かる。
あとは中途社員が進む道を決めることができれば、道に沿って前進するのみであるため、自信を持って仕事に取り組めるはずだ。
中堅社員はリーダーとして背中を見せる機会もあるため、リーダーに必要なスキルを上げるためのサポート活動も大事だ。中堅社員はリーダーシップやコミュニケーションスキル、チームの目標設定方法などが必要になる。
これらのスキルを習得してもらうためにも、スキルアップサポートをすべきだ。なおサポートするときは、以下2つの方法を使うといい。
中堅社員の業務内容に合わせて、おすすめの資格を紹介しながらサポートするといい。
たとえば「PMP」と呼ばれる資格の場合、プロジェクトマネジメントの知識を得られる。また簿記の勉強も、財務分析のスキルを高めたり、財務諸表の数字を読み取ったりするスキルが上がる。予算の資料を見る機会が多い中堅社員は身につけるべきだ。役に立つ資格を紹介してスキルアップの手伝いをするといい。
育成の方法の一つに中堅研修や中堅社員研修の実施が挙げられる。研修の実施はモチベーションアップやスキル向上に役立つ。
たとえば社内で起こった問題を解決するためのプロセスを理解する研修では、課題解決で必要な知識や手法などを習得していく。その他にリーダーシップを習得する研修では、リーダーに必要なスキルや行動などを知るための時間となっている。
ちなみに研修内容で迷ったときは、研修会社の担当者に相談するといい。研修の目的などを伝えれば、おすすめの研修内容を紹介してくれて業務が捗るためだ。自社だけで内容を決められないときは、活用するといい。
中堅社員が受け身の体制だと、他の社員がどのような動きをすべきか分からなくなり、困ってしまう恐れがある。中堅社員には後輩を引っ張っていく力も必要だ。そのため、以下2つの行動をとらせながら、攻めの姿勢を身につけさせた方がいい。
指示ばかり出すと「指示待ち人間」となり、受け身の体制になってしまう。自分で動いてもらうためにも、中堅社員に指示を出しすぎるのは控えた方がいい。
先に答えを言ってしまうと、答えを言われるまで待つ習慣ができてしまい受け身の体制ができあがってしまう。それを防ぐため、中堅社員には考えさせる時間を与えた方がいい。
考えさせる時間を与えると、新しい発想が閃いたり広い視野で物事を見たりする習慣がつきやすくなる。中堅社員に必要なスキルを身につけられるためおすすめだ。
モチベーションが下がると、仕事のやる気をなくしたり、人の話を真剣に聞かなくなったりする。結果、成長の妨げになってしまう。社内で活躍できる人材になってもらうためにも、モチベーションを下げない仕組みはあった方がいい。3つの仕組みを紹介する。
中堅社員に指導するときはマンネリにならないよう指導しよう。カリキュラムの内容を、毎回少しずつ変えたり、中堅社員が夢中になりそうなプログラムを入れたりするイメージだ。成長意欲が失せて仕事のモチベーションを下げないためにも、意識した方がいい。
「〇〇をやりなさい」というように、命令口調で話すと中堅社員から不快感を持たれる場合があるため良くない。話すときは「〇〇をしてみようか」というように、提案型で話した方がいい。強制されている感じが減れば、仕事のモチベーションが下がりにくくなるはずだ。
一方的に言ってしまうと、中堅社員は「自分の話を聞いてもらえない」と不満を持ってしまう。結果、お互いの関係性にヒビが生えてしまいコミュニケーションをとるのが難しくなる。
正論を言いたくなる場面があったとしても、まずは中堅社員の意見を受け入れることが先だ。話を聞いてあげると中堅社員は、相手に対して不快な感情を持ちにくくなる。中堅社員の気分を損なわないためにも、一通り言い終わってから話すことが大切だ。
基本的には、入社3年目に突入したら中堅社員だと言われている。しかし会社によっては入社3年目でも新人として扱うケースもあるため、あくまで目安だと思った方がいい。ちなみに中堅社員には様々な役割や目標がある。内容は以下の4通りだ。
1.後輩の指導や育成
2.リーダーシップを持つ
3.巻き込む力を持つ
4.達成力を持つ
他の社員に気を配りながら、チーム全体を良くするための業務が盛り込まれている。他の方のことを考えつつ、自分の業務をこなすのが中堅社員だと言える。
中堅社員として立派な姿になってもらうには、正しい育成方法を覚えておく必要がある。育成するときのポイントは以下の通りだ。
1.中堅社員の立場を自覚させる
2.キャリアの展望を示す
3.リーダーとしてのスキルアップサポート
4.受け身の体制を取らせない
5.中堅社員のモチベーションを下げない仕組みを作る
以上のことをすれば、中堅社員として積極的に動いてくれる人材になってくれるはずだ。能力の高い中堅社員が社内に多くいれば、会社全体の業務効率は上がる。有能な中堅社員を1人でも多く生み出して、快適な職場環境を作っていただければと思う。