上司になると部下と話す機会も増える。しかし部下と話す機会が増えても、接し方を間違えてしまうと、部下の信頼を失ってしまう。部下と接するときに大事になるのが「聞き上手」であるかだ。聞き上手な上司は、部下の信頼も集める。
しかし聞き上手になりたいと思うものの、方法が分からない上司もいると思う。そこで今回は、聞き上手になるポイントを4つの視点から紹介する。
はじめに聞き下手な方に見られがちな特徴を紹介する。
部下の話を聞かずに、自分の意見ばかり語ってしまう方だ。このパターンの上司は、自分の目線に立って話す場合が多い。部下が話しているにも関わらず会話を遮断してしまう。結果、聞き下手な上司だと認定される。
部下が話しているにも関わらず、どんな話もスルーする上司も聞き下手に見られがちだ。「面倒だからと言ってスルーする」「興味がない話だから聞かない」など、自分の気分に合わせた行動ばかりとる。その行動に呆れてしまい、部下は別の上司に相談するようになるだろう。
部下の話を聞いているときに、リアクションが下手な上司も聞き下手だと思われてしまう。部下の気持ちに寄り添えなかったり、相手のことを考えずに突拍子な態度をとったりする上司が該当する。
部下と一緒に仕事をするのであれば、聞き下手よりも聞き上手の方が仕事を進めやすい。ここでは、仕事を進めやすくなる理由を紹介する。
聞き上手になれば部下と話す機会が増えていく。結果、コミュニケーションの活発化が期待できる。コミュニケーションの機会が増えれば、社員との距離感を縮めやすい。部下との関係性を構築しやすくなるため、仕事を進めるのも楽になる。
話を聞いてくれる上司だと思ってもらえる確率が高くなり、部下の相談頻度が増える。相談頻度が増えればトラブルを未然に防いだり、部下が悩む前に対処したりすることが可能だ。さらに業務上のイレギュラーが減る効果も期待できるため、仕事を進めやすくなる。
様々な社員に慕われて、社内での評判が良くなっていく。他の社員からの印象が良くなっていき、社内間のやり取りが楽になるはずだ。大勢の社員から信頼を得ていれば、業務の指示をしたときに、言うことを聞いてくれる確率が高くなる。したがって、仕事を進めるのが楽になると言える。
聞き上手になるには、様々な視点においてポイントを抑えることが大事だ。
部下の目を見て話を聞けば、部下に興味があることをアピールできる。部下に対して真正面に体を向けると、真剣に話を聞いているように見えるだろう。
ただし部下が話しているときに、目を見続けるのは控えた方がいい。なぜなら上司から見続けられると、緊張して話せなくなる恐れがあるためだ。部下が緊張しないためにも時々、目を見る程度にした方がいい。
話しているときに上司の表情が変わらないと、部下は不安になってしまう。安心させるために、話題に合わせて表情を変えながら話を聞くべきだ。部下が楽しそうに話しているときは笑顔で聞くといいし、悩みを話しているのであれば真剣な表情で聞いてあげるといい。すると上司が寄り添ってくれていると思われ、部下からの信頼度が増す。
しかし表情が硬い上司もいるだろう。そのときは、鏡を見ながら顔についている「表情筋」を動かすトレーニングをするといい。自分の表情を操れるようになり、部下も話しやすくなるだろう。
部下の話を聞いていると、相槌を打つこともあると思う。しかし、相槌を打つときは以下のことに気を付けないと、部下に不快感を与える。
「うん」や「なるほどね」といった相槌を何度も繰り返すと、部下の耳障りになってしまい、思うように相談できなくなってしまう。そのため、いくつものパターンを使い分けながら相槌を打つべきだ。
部下が話している最中に相槌を打つと、会話のペースが乱れてしまう。すると部下の話を全部聞けずに終わる恐れがある。部下の話を全て聞き出すためにも、話している最中に相槌を打つのは控えるべきだ。
部下を睨みつけて話を聞くなど高圧的な態度をとると、部下は話せなくなってしまう。そのため、高圧的な態度はとらない方がいい。以下の方法を実践すると、高圧的な態度を取らずに済む。
威圧的な態度をとる原因として、感情的になっている場合がある。そのときは深呼吸をして、冷静さを取り戻すといいだろう。すると冷静に自分と見つめ合うことができて、高圧的な態度をとることも減るはずだ。
部下と戦う姿勢が出来上がると、高圧的な態度を生む場合もある。それを回避するには、部下に勝とうとしないことが大切だ。
たとえば、自分の髪に触れたりスマートフォンを触ったりしながら話を聞くと、部下はそっちに目がいってしまい、集中できなくなる恐れがある。部下の気を散らさないためにも、他の物を触らずに話を聞くべきだ。
部下が言ったことに対して答えるときは、以下のことを実践するといい。
自分の話を聞いてほしいと思っている部下は多い。その状況で次々とアドバイスをすると、部下は話したいことが最後まで話せなくなる。結果、消化不良で終わってしまう。そのためアドバイスをするときは、部下から求められたときに、する程度がいい。
仮に自分の考えと違う意見を言われたとしても、部下の話は受け入れた方がいい。否定すると、部下のプライドを傷つけてしまう恐れがあるためだ。それが原因で仕事に対するモチベーションがなくなったり、上司に対して不快な気持ちを持ったりする部下もいる。その状況をつくらないためにも、否定する前提で部下の話を聞くのは辞めた方がいい。
しかし今までの習慣で否定するのが直らないケースもあるだろう。その場合はポジティブな言葉に置き換えて、会話を進めるといい。たとえば「〇〇は良くないよ」という会話であれば、「〇〇をするとスキルが伸びると思うよ」といった形に変える。すると否定的な発言をせずに済む。
バックトラッキングとは、相手が話した内容を繰り返し伝えることだ。「オウム返し」とも呼ばれている。たとえば部下が「時間がなくて仕事が進まない」と言ってきたら、自身も「時間がなくて仕事が進まないんだね」と返す。すると部下は、上司が話を聞いてくれていると安心して話しやすくなる。なおバックトラッキングを実践するときは、以下のことを意識することが大事だ。
部下の発言と違う内容を言ってしまうと、話を聞いていない上司だと思われて信頼を失う。それを防ぐには部下の話をしっかりと聞いて、間違った内容を言わないようにすべきだ。
毎回、部下の言葉を返しているだけだと、自分の意見がない上司だと思われてしまう。そのため、バックトラッキングの何回かに1回は「相手が言った言葉+自分の意見」という形で返すといいだろう。
バックトラッキングを多用しすぎると、会話が前に進まなくなり部下をイライラさせてしまう。場の空気が悪くなってしまう恐れがあるため、適度に使うことが大事だ。
話すボリュームに関するポイントは以下の通りだ。
会話全体のうち自分が話すのは3割未満に抑えて、残りは部下の話を聞くイメージが良い。部下の話をメインに進めていくのがポイントだ。
聞き上手になるには、部下への質問の仕方も大事だ。質問時は、以下のことを実践するといい。
部下が答えづらい質問をしてしまうと、会話が途切れてしまい、話が前に進まなくなる恐れがある。よって答えやすい質問をした方がいい。
たとえば「〇〇のことを知りたいから××の質問をしたい」のように「目的+質問」の形で伝えると、部下はどのような回答を求められているかイメージしやすい。部下から理想通りの回答を得たいときに役立つだろう。以下2点に気をつけて伝えるとよりわかりやすい伝え方となる。
オープンクエスチョンとは、選択肢を設けず自由に答えてもらう質問を指す。対してクローズドクエスチョンとは、選択式で答えさせる質問のことだ。「YES/NO」で答えさせる質問や、選択肢を複数用意して答えさせる質問が該当する。
質問内容によって、2つの方法を使い分けることが大事だ。たとえばクローズドクエスチョンが適切なのに、オープンクエスチョンの形式で質問してしまうと、部下は答えづらくなる。どちらの質問形式を使うと、部下が答えやすくなるかという視点で選ぶといいだろう。
上司には聞き上手な方と聞き下手の方がいる。聞き下手だと部下に信頼されなくなり、損をしてしまう。一方で聞き上手な上司は部下から信頼され、仕事を進めやすくなる。
部下の目線に立つと、上司には話を聞いてほしいと思っているケースが多い。上司が聞き上手となることで、部下との距離感が縮まって連携感が生まれる。その結果、業務の生産性が向上していく。
なお、アサーティブコミュニケーション研修などを、部下・上司いずれに対しても実施することが良いだろう。基本的なコミュニケーションスキルを身に付けられることはもちろん、言いづらいことを上手く相手に伝える手法についても扱っている。参考にしてほしい。
チームを上手に運用するためにも、聞き上手になっていただければと思う。