多くの企業では、会社の将来を担う人材を見つけるために面接を行う。自社に適した人材を採用できるかは「面接官」の腕にかかっている。面接官としてのスキルが低いと、優秀な人材をとりこぼす。それは会社へ損失を与えることになる。
会社に貢献できる面接官になるには、さまざまなことが必要だ。本記事では、面接官の目的・役割を紹介しながら、必要なスキルについて解説する。
はじめに面接官の目的・役割を紹介する。
面接官の最も重要な目的・役割は、自社にマッチする人材か見極めることだ。見極めを誤ると戦力にならない方が入社して、現場に迷惑をかける。その状態を防ぐ意味で必要だ。
本来の能力を発揮させる理由は、優秀な人材を面接で落とさないためだ。面接の場では緊張して能力を発揮できない方でも、業務になると発揮できる人もいる。
志願者に本来の能力を発揮させる環境を与えれば、ダイヤの原石を見落とさずに済む。潜在的能力を見つけやすくなるため、必要だと言える。
中途半端な気持ちで入社した社員は、やりがいを感じないケースが多い。同僚からしても、一緒に働きづらい。その状態を事前に防ぐ意味で、面接官は志願者に決断させる流れをつくるべきだ。
流れをつくれば、志願者は入社すべきか自分で決断できる。その結果、入社したい気持ちが強い方ばかり入社し、モチベーションの高い方が集まる状態をつくれる。結果、職場の士気が高まっていく。
ここからは、面接官に求められるスキルを紹介していく。
面接では言葉のやり取りが発生する。志願者に質問をする機会も多いため、質問するスキルは求められる。志願者が理解できるように尋ねたり、応募者の本質を見抜ける質問をしたりする力を身につけることが大切だ。
悔いなく面接を実施できるよう、前もって質問のバリエーションを用意しておくことも有効だろう。
※参考:採用面接の質問集52選!面接官必見の人材を見抜く質問事例(HRドクター)
緊張して話せない志願者もいる。そのときに必要となるのが、共感するスキルだ。所々、面接官がうなずいたり、肯定したりする動作をすれば、志願者は共感されていると感じる。志願者が次々と話す状況をつくれるため、話を引き出すのも楽だ。
面接の場は、企業側がジャッジするための場だけではない。より良い人財を逃さないために企業としての魅力を伝える場でもある。
企業や組織の魅力についての表現が下手だと、志願者に誤解を与える。その結果、優秀な人材が内定辞退をしたり、口コミによって自社の悪いイメージが広まったりする。志願者にマイナスイメージを与えないためにも、表現するスキルも磨いていきたい部分だ。
面接には基本的な流れが存在する。ここからは、6つのステップに沿って流れを紹介していく。
事前準備を怠ると、面接がスムーズに進まなくなる。さらに志願者も、面接で本来の能力を発揮できない。面接官・志願者ともに進めやすい状態をつくるためにも、事前準備は行うべきだ。ちなみに事前準備では、以下のことに気を付けると良い。
履歴書や職務経歴書などの書類をもとに、志願者の状況確認を行う。気になる箇所があれば、メモしておくといいだろう。
志願者から提出された書類を参考にしながら、質問事項を決めていく。しかし質問事項を考えても時間の都合上、全ての内容を聞けない場合がある。
そのときは、質問事項に優先順位をつけると良い。どの質問からすべきか分かるため、面接がスムーズに進んでいく。
タイムスケジュールを組む理由は、予定通りに面接を進めるためだ。タイムスケジュールがないと、時間を意識せずに面接を進める恐れがある。すると後の予定がズレ込み、他の方に迷惑をかけるかもしれない。その日の予定を時間通りに進めるためにも、タイムスケジュールは組むべきだ。
ちなみにタイムスケジュールを組むときは、時間に余裕を持たせた方がいい。なぜなら、イレギュラーが発生する場合があるからだ。たとえば、受け答えが長くなったり追加の質問が発生したりすると時間がズレ込む。臨機応変に対応するためにも、予備の時間は設けた方がいい。
アイスブレイクとは、志願者の緊張をほぐすために行う行為だ。志願者の多くは緊張する。緊張した状態で面接を進めても、思うような受け答えができない。志願者が話しやすい状態をつくる上で、アイスブレイクは必要だ。
面接の際は、雑談をすることで志願者の緊張感をほぐすことが多い。ちなみにアイスブレイク時は、以下のことに気を付けるといい。
面接官から自己開示する理由は、志願者が話しやすい状態をつくるためだ。面接官が「私は〇〇が趣味です」と伝えれば、志願者も「私も〇〇が大好きです」といった形で返ってくるかもしれない。この状態をつくることで、会話が盛り上がっていく。
応募者との共通点を見つける理由は、会話を盛り上げるためだ。出身地・経歴など履歴書の内容を見て、共通点がないか見つけるといいだろう。
志願者に共通点を伝えれば、面接官に親近感が湧いて自分から話したくなる。そのため、自然と話が盛り上がっていく。
面接官はアイスブレイクのときに、自分の話ばかりしてはいけない。面接官のペースに飲み込まれて、志願者が余計緊張する場合があるからだ。志願者が話しやすい状況をつくるには、自分のペースで話をさせることが重要だ。志願者に話をさせることで、面接官とのやり取りをどうすべきかイメージしやすくなる。結果、緊張感をとかすのに役立つ。
しかし志願者の中には、自ら話せない方もいる。そのときは、面接官から話を振るといい。「ここまで、どうやって来たの」「暑くなかった」といった形で問いかけることで、志願者は話しやすくなる。
志願者の緊張感がほぐれたら、自社の紹介をする。自社の紹介をする際は、分かりやすく伝えることが大切だ。社内でのみ認知されている言葉や、専門用語・横文字を多用して紹介するのは控えた方がいい。ただ紹介するだけではなく、自社で働くと感じられるやりがいや魅力などを伝えることも忘れずに行いたい部分だ。
紹介後は、志願者から受け取った履歴書などを見ながら質問をしていく。最低限、以下の内容は聞いた方がいいだろう。
過去の経歴に関する質問をする。仮に働いていない期間があったら、空白期間の理由を尋ねる。また、未経験の業界へ転職を希望しているのであれば、経験した職種で働かない理由を聞く。経歴に関する虚偽がないか、自社が求めるスキルを身につけた人材か見極めるために行う。
ほとんどの企業では、人と一緒に働く。チームワークのない人材を入社させると、チームプレーが乱れる。それを防ぐために、協調性の有無を確かめる質問をしていく。
たとえば「社員たちと力を合わせて行った仕事はありますか」「メンバー達と進めた業務で最もやりがいを感じた作業は何ですか」といった質問をするといいだろう。
自社に合う価値観の人材か知るための質問もする。「仕事に対する考え方を教えてください」「失敗したときの対処法を教えてください」という質問をしながら、価値観を知っていく。
自分を理解できているかの質問をする理由は、自分を客観視できる人材か確かめるためだ。客観視できない人間は、自身の現状を把握するのが下手だ。そのため、ふさわしい行動がとれない。
「あなたの弱みと強みは何ですか」「周囲の人から、どのようなイメージを持たれていますか」といった形の質問をして、自分の現状を理解できているか確かめていく。
志願者の労働意欲を見極めるための質問も大切だ。「当社で働きたい理由は何ですか」「会社選びの基準はありますか」といった形で聞くといいだろう。
ひととおり聞き終えたら、志願者からの質問を受け付ける。志願者の質問内容を聞いて、適切な内容かチェックする。これを行う理由は2つだ。
1つ目は、自社に対する関心度だ。質問をしなかった場合、自社への興味が薄い恐れがある。関心度の高い方は、さまざまな疑問が浮かぶはずだ。それをチェックするために志願者からの質問を受け付ける。
2つ目は質問力の高さだ。いくら質問をしても、内容が薄いと意味がない。「面接官の立場を考えて質問ができているか」「ありきたりな内容ではないか」「公式サイトに載っていない内容か」などの視点で、質問力の高さをチェックする。
志願者からの質問が終わったら、今後の流れを志願者に説明する。面接に合格した場合の流れなどを伝える。面接の段階で落とすことが確定している人材でも、伝えた方がいい。
最後に面接官がとってはいけない行動を紹介する。
準備不足で面接当日を迎えると、面接がスムーズに進まなくなる。そのため、前もって準備をしておくことが大切だ。準備不足がないか不安であれば、面接官として高いスキルを持っている社員に助言をもらうといいだろう。
志願者に不適切な質問をするのもNGだ。本籍地や家庭環境、資産に関する質問などが該当する。現代では、人権侵害や侮辱に対する目が厳しくなっている。
不適切な質問をしたことが家族や知人などに伝わると、SNS上などで炎上するかもしれない。その状況をつくらないためにも、不適切な質問をするのはNGだ。
自己開示・募集背景の説明を一切しないのもNGだ。志願者はどのような態度で面接に臨めばいいか分からず、思ったことが言えなくなる。すると自社に適した人材か見極めるのが難しくなる。
さらに志願者も入社すべきか迷いが生まれるため、優秀な人材を逃してしまう。その状態を防ぐ意味で、自己開示や募集背景の説明は必要だ。
応募者に対する敬意が伴わない態度を取るのもNGだ。面接官の態度が理由で、内定を出しても辞退してしまう。応募者からすると「面接官の雰囲気=会社のイメージ」となる。応募者のモチベーションを下げないためにも、敬意を払うべきだ。
面接官によって、面接の進み方が決まる。必要なスキルや面接の手順が分かっていない状態で面接を行うと、質の低いものになってしまう。それを防ぐためにも、面接官について知っておくべきだ。ちなみに面接官の役割・目的として、以下の内容が挙げられる。
面接官は自社に合う人材か見極める以外にも、さまざまな役割・目的を持っている。会社としての立場を維持しつつ、志願者の立場に寄り添うことも必要であるため、会社と志願者の立場を考えながら、バランスよく立ち振る舞うことが大切だ。
ちなみに面接官に就く方は、最低限「質問するスキル」「共感するスキル」「表現するスキル」はあった方がいい。これらのスキルが1つでも欠けると、面接がぎこちなくなる。
採用研修などを受けることで、そのスキルを強化することもできるため、ぜひ参考にしてほしい。
その他に面接官は、面接の正しい流れも知らなければならない。面接の基本的な流れは、以下の通りだ。
面接官は潜在的な能力も見ながら、自社にマッチする人材か判断しなければならない。そのため、志願者が自ら話せる状態をつくるのも大切になってくる。
面接が下手だと、自社に必要な人材を逃す。その状態をつくらないためにも、面接官としての役割を全うしていただきたい。