ヒューマンエラーを繰り返す部下が多いと、仕事をストップさせる原因になる。他の社員に迷惑をかけてしまうため、社内で起こっているヒューマンエラーはいち早く解決した方が良い。解決するには、正しい方法を知らなければならない。
本記事ではヒューマンエラーの概要や起こる理由、対処方法などを紹介していく。
ヒューマンエラーとは、人為的に起こるミスや失敗のことだ。ヒューマンエラーの内容によっては、会社に大ダメージを与える。ヒューマンエラーの頻発は、余計なコストや機会損失が発生させる原因になるため、早い段階で解決した方がいい。
ヒューマンエラーと言っても、ミスの内容は様々だ。ここでは、どのような種類のヒューマンエラーがあるか紹介する。
メモリーミスとは、忘れたことによって起こるミスだ。指示されたことを脳内で覚えようとしても、時間が経つと忘れる。自分の記憶に頼った結果、メモリーミスが起こってしまう。
アテンションミスとは、見落としによって起こるミスだ。他の物事に集中すると、見落としが発生しやすくなり、アテンションミスへとつながる。とくに複数の作業を同時進行していると、他のことに目がいき、アテンションミスを引き起こしやすくなる。
コミュニケーションミスとは、コミュニケーション不足によって起こるミスだ。相手と齟齬が発生し、ミスや失敗につながる。
発信者であれば「伝えなければいけない情報を省略する」、「相手が理解していない様子なのに話を途中で切る」。受け手であれば「伝えられた情報を都合よく解釈する」、「理解していないのに分かったふりをする」など、様々な原因によってコミュニケーションミスは起こる。
ジャッジメントミスとは、誤った判断をしたことで発生するミスだ。固定観念に捉われることによって起こる。思い込みが激しいと、自分の価値観のみを頼りにジャッジを行う。その結果、判断ミスが生まれやすくなり、ジャッジメントミスの頻発につながる。
ヒューマンエラーを取り除けば、同じミスを繰り返すことは減る。ここでは、さきほど紹介した4種類のミスに関する対処方法を紹介する。
メモリーミスへの対処方法は以下の通りだ。
人間は伝えられたことを忘れる生物だ。よって相手に伝えるときも、「忘れる」を前提にした方が良い。
前提条件を「忘れる」にすれば、忘れても大丈夫なように指示を与える習慣がつく。結果、メモリーミスの減少につながる。
指示した内容をメモに記入させれば、何度も確認できる。メモを見れば思い出せるため、メモリーミスの減少が期待できる。
ちなみにメモをとらせる時は、1冊のノートに書かせた方が良い。色々な場所にメモをさせると、書いた内容を見つけるのに時間がかかってしまう。無駄な時間を削減する意味で大事だ。
記憶を呼び起こすものを、用意するのも効果的だ。たとえば会議の前日にアラームを設定しておけば、アラームが鳴るたびに「翌日が会議だった」ことを思い出せる。
このように予定を連想させるものを用意すると忘れずに済む。よって、メモリーミスを減らすのに役立つ。
符号化とは、覚えるまでの過程をデータ化することを指す。たとえば「出勤後にAの作業をする→Bの作業をする→昼休み前にCの業務をする」というように流れをつくれば、忘れずに済む。様々な業務で符号化を活用すれば、メモリーミスの減少が期待できる。
アテンションミスの対処方法は以下の通りだ。
自分を過信すると作業工程を飛ばしたり、確認をせずに作業を行ったりして、アテンションミスが発生する原因になる。よって、自分を過信するのは良くない。
たとえ経験年数が長い社員だとしても、初心を忘れることなくマニュアル通り作業をすることが大事だ。
頑張らずに行動できる仕組みをつくれば、仕事のモチベーションを落とさずに済む。モチベーションの低下による見落としが減るため、アテンションミスの減少が期待できる。なお、頑張らずに行動できる仕組みをつくるときは、以下のことを意識すると良い。
ハードルが高すぎると、頑張らないと作業を進められない。すると精神的に消耗しやすくなり、集中力が持たなくなる。その結果、アテンションミスが増えてしまう。
しかしハードルが適正であれば、頑張って行動しなくても業務をこなせる。余計なプレッシャーを感じずに作業を進められるため、精神的な消耗も少なくて済むはずだ。
苦手なことをする場合と比べてハードルは低い。したがって、頑張らなくていい状態をつくるのに有効だ。部下が強みを発揮できる状態をつくれるかが、ポイントになるだろう。
チェックリストをつくって確認すれば、見落としは減る。よってアテンションミスの減少につながる。なおチェックリストの作成では、以下のことを意識すると良い。
流れを書き出さずにチェックリストをつくると、抜け漏れの原因になる。それを防ぐ意味で、作業の流れを書き出すのは大事だ。時系列に沿って書き出すと、業務を思い出しやすくなる。
チェックリストの項目を増やしすぎると、チェックに膨大な時間を割くことになる。他の業務に割く時間が減ってしまい、社内の業務を止めたり、機会損失を生み出したりする恐れがある。よって、必要な項目のみ盛り込むことを意識した方が良い。
しかし、なかにはどの項目にすべきか決められない方もいると思う。その場合は、抜き出した業務に優先順位をつけると良い。優先順位が高いものを中心に項目を埋めれば、自然と優先順位が低いものはチェックリストに盛り込まれなくなる。不要な項目を載せずに済むため便利だ。
チェックリストの内容は、全ての社員が理解できなくてはならない。よって、文章を簡潔に記載するべきだ。たとえば至る所に難しい言葉が記載してあると、チェックする側を混乱させてしまう。瞬時に判断できる状態をつくるためにも、簡潔に記載すべきだ。
項目の中で、重要な箇所もある。その場合は、太字にしたり文字や背景に色をつけたりして、目立たせるといい。社員に重要な項目だと認識させることで、見落としを減らすのにも役立つ。
チェックリストをつくっても、業務に使われなければ意味がない。したがって、対象者に共有することも大切だ。関係者にメールでデータを共有したり、ミーティングの中で話したりなど、様々な方法で共有できる。社内の様子を見ながら、使い分けるといいだろう。
コミュニケーションミスの対処方法は以下の通りだ。
自分本位のコミュニケーションをとると、相手の都合を考えない状態ができる。相手が言っていることが耳に入らなくなり、コミュニケーションミスを引き起こす。
なおコミュニケーションをとるときは、相手に興味を持つことが大事だ。相手に興味を持てば、知ろうとする気持ちが生まれる。時間が経つにつれて、相手の気持ちを考える習慣ができて身勝手な行動をとらずに済むだろう。
その他に相手が考えていることを、発言内容や表情から推測する習慣もつけた方が良い。この習慣が身につけば、何をすれば相手に喜んでもらえるか考えるようになり、円滑なコミュニケーションがとれるようになる。よって、コミュニケーションミスの減少が期待できる。
社員の中には相手に気を遣ってしまい、不明点があるのに質問しない場合がある。しかし不明点を放置したまま行動すると、コミュニケーションミスにつながってしまう。不明点をなくすためにも、上司から質問がないか聞くべきだ。
ジャッジメントミスの対処方法は、以下の通りだ。
ジャッジの前にチェックの時間を設けることで、本当に正しいジャッジか見極められる。チェックをしないと、ジャッジメントミスに気付くまで時間がかかってしまう。
気付くのが遅くなると、会社に与えるダメージも大きくなってしまう。それを防ぐためにも、チェックに時間を割くべきだ。なおチェックのときは、さきほど紹介した「チェックリスト」を活用すると、効率的に進められるため便利だ。
部下の場数を増やすと、どのようなときにジャッジメントミスが起こりやすいかデータが溜まる。傾向がつかめるため、ジャッジメントミスを減らすのに役立つ。
ただし、何でも作業をさせればいいわけではない。ミスをすると莫大な損失を被る業務もある。社員のスキルを考慮したうえで、作業を決めた方がいい。
判断するときの基準が設けられていないことが原因で、ジャッジメントミスを起こす場合もある。それを解消するには、ある程度の判断の軸となる基準を用意しておくと良い。判断の軸となる基準があれば、それをもとに正しい判断ができる。したがって、ジャッジメントミスの減少につながる。
ヒューマンエラーには、無意識のうちに発生するものもあれば、意図的に発生するケースもある。しかし、いずれにせよ社員の業務を妨げたり、会社に損失を与えたりする原因になるため、早急に対処した方が良い。
しかしひと口にヒューマンエラーと言っても、様々なパターンがある。
・メモリーミス
・アテンションミス
・コミュニケーションミス
・ジャッジメントミス
パターンごとに対処方法を変えれば、自然とヒューマンエラーも減っていく。
また、ヒューマンエラー研修を開催することも良いだろう。一人ずつで実施するよりも、部署やチームで受けてもらうことでミスを全体で軽減することが期待できる。ぜひ検討してほしい。また、ヒューマンエラーとして最も避けたいリスクである個人情報保護法研修についても実施することが推奨される。
社内のヒューマンエラーを減らせば、ミスをカバーする時間が減るため、別のことに時間を使える。空白の時間が生まれると他の業務に割いたり、新規事業に充てたりできるため、会社の成長につながる。生産的な時間を生み出すためにも、ヒューマンエラーをなくし、同じミスを繰り返す状態から脱していただければと思う。