日本は世界各国の中でも、女性活躍推進ができていない国だと言われている。労働力人口の減少もあり、女性活躍の推進は日本社会の喫緊の課題と言える。国内には女性活躍推進の取り組みを行っている企業も存在するが、課題を抱えていて前進できないケースも多い。
そこで今回は、女性活躍推進の取り組みにおいて抱えやすい課題と、それを解決するためのポイントを中心に紹介する。
女性活躍推進が進められている理由は、社会において女性が活躍できる状況を増やすためだ。国内では少子高齢化により、今後労働者が不足していくと言われている。それを解消する方法として、女性活躍推進が注目された。
ちなみに政府でも女性活躍推進の取り組みは行われており、厚生労働省では「女性の活躍推進データベース」と呼ばれるサイトを開設し、女性が働きやすい職場を掲載している。さらに2016年には女性活躍推進法が制定されているため、今後も女性活躍推進が推奨される確率は高い。
女性活躍推進には、以下のメリットがある。
女性社員の強みを活かせる職場にすれば、チームとしての成果を挙げられる可能性がある。その結果、チームメンバーの負担が減るかもしれない。チーム業務を効率化するためにも大事だ。
優秀な女性社員を流出させずに済むメリットもある。別の会社へ転職されると、社員教育のためにかけた時間やコストが無駄になってしまう。その状況を起こさないためにも、女性活躍推進の流れはつくるべきだ。
女性活躍推進を行っていることが世の中に知れ渡れば、企業のイメージアップにつながる。したがって、会社として恩恵を受けられる確率も上がっていく。
女性活躍推進の取り組みを行おうとしているものの、課題を抱えている企業も多い。ここでは、課題を4つ紹介する。
上司や対象者が制度を把握していないと、職場で取り組もうと思っても足並みがそろわない。仮に人事部で女性活躍推進の取り組みをプッシュしたとしても、他部署に協力してもらえず失敗に終わってしまう。
女性が思うように働けなかったり、両立できない環境があったりするのも課題だ。優秀な女性社員がいても仕事を任せられず、人材を有効活用できない状況に悩まされてしまう。
女性社員というのを理由に、評価に対するバイアスがかかってしまう課題もある。たとえば「男性社員と同じ成果を挙げているにも関わらず、女性社員の評価を下げてしまう」といったイメージだ。その結果、実力が同じなのにも関わらず、女性社員よりも男性社員を出世させる状況が起きてしまう。
女性社員自身が、昇進したくないと思ってしまう状況を作りだしているのも課題として挙げられる。たとえば「仕事で忙しくなるのが嫌」「同僚に妬まれるのが怖い」という理由で、昇進のチャンスがあっても断られる。これも企業にとって、切実な悩みだ。
ここでは、前述で紹介した課題の解決方法を紹介する。
課題1の解決方法は以下の通りだ。
女性活躍推進に関する法律や制度を知ってもらい、認知度を高める方法だ。本記事の序盤で紹介した「女性活躍推進法」の内容や、政府で行われている取り組みの一例を伝えることで、女性活躍推進について知ってもらえる。結果、取り組みやすくなるはずだ。
女性活躍推進に関する研修を実施して、必要な知識を身につけてもらうのも手だ。女性社員の活躍をサポートするスキルを習得する研修や、ワークライフバランスを意識しながら働くコツを理解できる研修など、様々な種類の研修がある。受講生に習得してほしいスキルを考えながら、カリキュラムを決めるといいだろう。
課題2の解決方法は、以下の通りだ。
時短勤務やテレワーク勤務、フレックスタイムの導入などを用意し、自身に合う働き方を選んでもらう状況をつくると、両立しやすくなる。ただしチームの業務に支障をきたす場合もあるため、最低限のルールを決めてから運用すべきだ。
上司がアドバイスをして、両立できるケースもある。その場合は女性社員にフィードバックを行い、成果を出せるような指導をするといい。業務効率の上げ方や作業のやり方などを伝えると、両立しやすい環境が生まれるだろう。
課題3の解決方法は以下の通りだ。
主観を入れずに、事実ベースで評価することが大事だ。営業職であれば「個人成績が基準を上回っているから、良い評価をつける」と言った形にすると、バイアスがかかってしまう状況をつくらずに済むはずだ。
固定観念を0の状態で評価するのは難しい。したがって、固定観念があることを認識しながら評価した方がいい。自身に思い込みがあると認識しながら評価すれば、バイアスがかかってしまう状況を失くせるだろう。
課題4の解決方法は以下の通りだ。
アクションプランとは、目標を達成するための行動を示したものだ。目標達成までの道筋が載っているため、どのような働き方をすべきかイメージしやすい。結果モチベーションの高い状況が生まれ、昇進したいと思える状況をつくりやすくなる。
ちなみにアクションプランの策定は、以下の手順で行うといい。
目標を立ててもらうときは、「具体的」「計測できる(進捗状況が分かる)」「達成できる」「会社の目標と関連性がある」「期限が決めてある」の5つをクリアしているか確認すると良い。抽象的な目標は、アクションプランの作成に支障をきたすため良くない。
たとえば「新規顧客を1カ月間で〇件紹介してもらう」「顧客向けの資料を一新する」と言った形で、思い付いたものを次々と書いてもらうのが大事だ。箇条書きで書かせるといいだろう。
目標達成に必要なことを実現させるために、何をすべきかタスクを考えてもらう。その後、スケジュールに落とし込んでいく。スケジュールをもとに行動させ、目標達成を目指してもらうのが流れだ。
女性社員個人に対してではなく、チームの1メンバーとして業務を任せるも大事だ。責任感が高まり、昇進したい気持ちを強くするきっかけになる。
女性リーダー研修や、女性社員向け キャリアアップ促進研修、ダイバーシティ研修などを実施し、昇進に対するモチベーションを上げることも一つの手段だ。
「将来、育児と仕事を両立するためにはリーダーとして活躍していた方が職場に戻りやすい」「今のうちに学べるスキルを身に付けておきたい」という気持ちになってもらうだけでも違ってくる。ぜひ検討してほしい。
最後に女性活躍推進に力を入れている企業の実例を紹介する。
株式会社メルカリでは、女性社員をサポートする制度を充実させている。たとえば妊活をサポートする制度では、不妊治療が高額になった場合の支援を行っている。その他に、子供が認可外保育園に入園したときの支援制度や、産休や育休・介護が理由で復帰した社員に対する「復職一時金」の用意など、金銭面の支援が豊富だ。
ビールやジュースの製造を行っている「アサヒグループホールディングス株式会社」では、管理職のうち15.5%が女性だ(2020年12月現在)。
自社では女性社員が活躍できるように、女性のキャリアセミナーやリーダーや管理職向けの研修などを充実させている。この取り組みによって、女性社員が社内で活躍しやすくなった。さらに育児中の女性社員と経営陣との意見交換会も行っており、女性社員の声を届きやすくしている。
女性社員の登用に力を入れている。基幹職を例に出すと、2016年度は女性が108人しかいなかった。しかし2020年度には、150人超を実現させた。このように、自社では女性社員が出世しやすい状況を作りだしている。
その他に、仕事とプライベートを両立できる制度をつくっているのも特徴だ。たとえば、配偶者との夫婦生活や育児によって異動先で働けない場合、「エリア申告制度」を用意している。これは希望のエリアで働ける制度となっており、結婚や子育てによる女性社員の退職を減らすのに役立っている。
その他に女性社員向けに実施する「女性社員のキャリアに関する座談会」や、育休から復帰した社員向けのセミナーも実施してきた。以上のことより、女性社員が働きやすい状況をつくるのに力を入れている企業だと言える。
女性活躍推進に力を入れれば、女性社員の強みを活かせる。その結果、チームの成果を挙げやすい状況が生まれるだろう。優秀な女性社員が退職せざるを得ない状況ができるのは、会社にとって損失だ。その状況を止める意味でも、女性活躍推進の取り組みは実施すべきだ。
しかし女性活躍推進に力を入れているものの、課題を抱えている企業も多い。たとえば、このような課題が存在する。
-課題1:上司や本人が女性社員に関する制度を把握していない
-課題2:女性が思うように働けない環境・両立できない環境がある
-課題3:評価に対するバイアスがかかってしまう
-課題4:そもそも、女性社員自身が「昇進したい」と思わない
社内で上記の課題を抱えてしまうと、取り組みたくてもスムーズに進まなくなる。したがって、課題を解決しながら進めなければならない。課題を解決するには、以下のことを行うと良い。
-課題1:「上司や本人が女性社員に関する制度を把握していない」の解決方法
-法律や制度の存在を知ってもらう
-女性活躍推進に関する研修を実施する
-課題2:「女性が思うように働けない環境・両立できない環境がある」の解決方法
-様々な働き方を用意する
-職場にするフィードバックを行い、成果を出せるような指導をする
-課題3:「評価に対するバイアスがかかってしまう」の解決方法
-事実ベースで評価していく
-固定観念があることを認識しながら評価する
-課題4:「そもそも、女性社員自身が「昇進したい」と思わない」の解決方法
-アクションプランを策定し、モチベーションを上げてもらう
-個人ではなくチームとして業務を任せていることを伝える
上記の内容を実践すれば、課題解決につながる。女性活躍推進は世界的に取り組まれているため、国内企業も取り組んだ方が良い。ぜひ女性活躍推進に力を入れて、女性社員が働きやすい職場をつくっていただければと思う。