社員の入れ替わりが激しいと、様々な問題を抱える原因になってしまう。その状況を防ぐには、定着率を上げることが大事だ。しかし定着率を上げようと思っても、正しい方法を知らなければ成果は出ない。そこで今回は、定着率を上げる方法やポイントを紹介していく。
定着率とは、入社した社員のうち何割の人間が残っているか示したものだ。下記の公式に当てはめると定着率が分かる。
定着率 = (入社人数 – 離職人数)÷ 入社人数
定着率の%が高くなるほど、多くの社員が定着している状況だと言える。
ここでは、定着率が低くなる理由を紹介する。
人間関係が上手くいかないと、社員との関係性や職場の居心地が悪くなってしまう。退職者を増やすことになり、定着率が低くなる。
働き方に関する不満を持つ社員が増えると、他の会社で働きたいと思う社員を増やしてしまう。それが定着率を低くする。
世間からの需要がなくなったり業績が悪くなったりなど、自社のネガティブな情報を耳にする機会が増えると、会社に将来性を感じなくなってしまう。退職者を増やす原因になり、定着率を低下させてしまう。
定着率を上げるメリットは以下の通りだ。
人材の流出を防げるため、優秀な社員を確保できる。結果、業務の質を落とさずに済む。人材の流出によって、会社が損失を被ることもなくなるだろう。
退職者と入れ替わりで入社する新入社員の数が減れば、社内教育を行う頻度を減らせる。研修の時間・研修の場所代・講師の費用などを抑えられるため、教育コストの削減が期待できる。
退職に伴う中途採用の頻度が減るため、採用コストの削減も期待できる。面接の事前準備にかかる時間・面接会場の費用・会場までの交通費・出張に伴う宿泊費などを抑えることが可能だ。
定着率の向上とは、従業員がその企業で働き続けたいと思っていると捉えられる。この理由は、従業員のモチベーションが高いためだ。周囲の人間が自社で働くことに意義があると感じているなどの高いモチベーションは周囲の人材にも影響していく。そのため、この良いスパイラルにより、より一層モチベーションを高くすることにつながる。
長年働いている社員が増えれば、お互いの関係性が出来上がっている可能性が高い。よって、団結力を高めやすくする効果も期待できる。団結力が高くなれば社員同士で協力し合ったり、チームワークを意識した行動が増えたりする。そのため、チームの業務を進めるのも楽だろう。
方法を知らなければ、定着率を上げるのは難しい。ここでは、定着率の上げ方を紹介する。
最初に行うのは原因を明確にすることだ。定着率が下がっている原因を把握しないまま行動しても、問題の解決には至らないためだ。以下の方法を使って調査するといいだろう。
面談で社員の声を直接聞きながら調査していく。手間はかかるかもしれないが、社員が言っている内容だけではなく、声のトーンや表情を見ながら話を聞ける。社員の心情を読み取りながら、話を聞きたいときに最適だ。
ただし質問のときに威圧感を与えると、緊張して答えられなくなる場合がある。そのため、やわらかい表情で話すことが大事だ。
アンケートを実施して、調査するパターンもある。アンケート用紙を配ったり、Web上で回答してもらったりするだけで良いため、質問者・回答者共に時間を調整する必要がない。そのため、大勢に対して調査をするときに向いている。
定着率を上げる方法は原因によって異なる。そのため、原因別に方法を考えていかなければならない。ここでは3つの原因をもとに、方法を解説する。
人間関係に関する悩みが原因の場合、以下の方法をとるといい。
社内のコミュニケーションを活性化させると、社員同士で話す機会が増える。社員に相談できる環境が整うため、悩みが解消されやすい。懇親会や勉強会など社員で集まる機会を設けることが、コミュニケーションの活性化につながる。
様々な部署の方と交流させると、配属部署にはないものを手に入れられるかもしれない。新たな気付きや価値観を得ることができれば、悩みの解消につながる。同じ部署の方とコミュニケーションがとれない社員にとっても、過ごしやすくなるだろう。
アサーティブコミュニケーションとは、相手と対等に対話をすることだ。活用できれば相手と話すのが億劫に感じなくなり、悩みが解消されるかもしれない。
ちなみにアサーティブコミュニケーションを実践するときは、事実をベースに話すことが大事だ。私情を入れると話が嚙み合わなくなり、相手と同じ土俵に立って話せなくなる。結果、対等な関係性が損なわれてしまう。相手と認識を合わせることが、アサーティブコミュニケーションをスムーズに行うコツだと言える。
アサーティブコミュニケーション研修などを受けさせることも一つの手段だ。ぜひ検討してほしい。
働き方に関する不満が原因の場合、以下の方法をとるといい。
マンネリ化を解消できれば、働き方に不満は減るだろう。社員に新鮮味を感じさせることが大事だ。普段と違う業務を任せたり、業務の流れを変えたりなど様々な方法がある。
業務が簡単すぎて不満を感じている場合は、難易度が高い業務に挑戦させるのも手だ。普段とは違う脳を使うようになり、マンネリ化を防げる可能性がある。
ただし難易度が高すぎる業務を課すと、働き方に関する不満が増したり、社員のやる気を削いだりする恐れがある。よって、頑張れば達成できそうな業務を挑戦させるべきだ。
将来性を感じないことが原因の場合、以下の方法を実践するといい。
キャリア形成に力を入れると、社内でどのようなキャリアを築けばいいかイメージしやすくなる。結果、将来性を感じなく確率が減っていく。キャリア形成のときは「Will・Can・Must」を考えさせて、現状の自分を知ってもらう所から始まる。それをもとに目指すべき方向性を見極めて、理想とするキャリアを決めていく。
ただし上司がキャリアを決めると、他人事だと思って真剣に取り組まなくなる恐れがある。よって、社員に取り組んでもらうことが大事だ。
自社の将来について疑問視している社員には、会社のビジョンを共有するといい。会社の目指している方向性が分かれば、どのような行動をとるべきかイメージしやすくなる。会社のビジョンが伝わり納得すれば、会社に対する社員の信頼度は上がる。そのため、将来性を感じてくれるはずだ。
なお会社のビジョンを共有するときは、社員が理解できるよう言葉をかみ砕きながら伝えることが大事だ。管理職の間で共有できていても、他の社員を置き去りにしては意味がない。そのため、社員の視点に立って伝えるべきだ。
マネジメント研修などを受けてもらい、実際自身のマネジメント方法を振り返る機会を設けることも一つの手段だ。
長年部下を管理している方こそ、独自のマネジメント方法を活用している場合があり、振り返った上でブラッシュアップする機会が必要だ。ぜひ検討してほしい。
最後に社員の定着率を上げるポイントを解説する。
PDCAサイクルとは「計画→実行→確認→改善」の順番で作業を進めていくことだ。PDCAサイクルを回し続けると、定着率を改善させるための方法が磨かれていく。結果、質を高めるスピードも上がる。ただしPDCAサイクルを回し続けるときは、以下のことを意識した方が良い。
PDCAサイクルで実施する内容が大ごとだと、回すのに時間がかかってしまう。その状況を防ぐには、内容を細かくしてからPDCAサイクルを回すべきだ。たとえばタスクを5個抱えているのであれば、1個につき1つのPDCAサイクルを割り当てるイメージだ。PDCAサイクルを回す労力が小さくなるため、楽に回せるはずだ。
特定の作業に時間をかけすぎると、他の作業をする時間が無くなる。想定よりも短時間で作業する状態になり、PDCAサイクルの質が悪くなってしまう。その状況をつくらないためにも、各作業の時間配分を決めてからPDCAサイクルを回すことが大事だ。
時代に合わせて組織の運用方法を変えないと、社員は会社を去ってしまう。その状況を防ぐには、時代の流れをつかみながら運用することが大事だ。社員同士でイノベーションを起こしやすい環境をつくったり、多様な働き方を認めたりなど様々な方法がある。
しかし時代の流れに合わせて変えようと思っても、社員がついていけない状況だと、社内の業務に支障をきたす。よって変化させるときは、社員の声も聞くべきだ。
定着率が下がると会社の評判が悪くなったり、退職者を増やしたりする恐れがある。そのため、定着率は上げるべきだ。定着率を上げると仕事のモチベーションが上がったり、教育や採用に関するコストを抑えられたりなど、あらゆるメリットがある。
しかし正しい手順を踏まなければ、定着率を上げるのは難しい。ここで大事なのは、定着率が下がっている原因を明確にしてから上げる方法を考えることだ。いきなり方法を試したとしても、それが効果のないものだったら意味がない。
なお、定着率を上げる方法として以下のものがある。
Ⅰ.人間関係に関する悩みが原因の場合
Ⅱ.働き方に関する不満が原因の場合
Ⅲ.将来性を感じないことが原因の場合
上記のように原因ごとで方法が異なるため、事前調査が大事だ。社員の状況に合わせて、やり方を変えるといいだろう。
その他に、定着率を高めるポイントもあるため紹介する。
上記のポイントを抑えておけば、定着率を高めるのも楽になるはずだ。定着率の上昇は、会社の手間を減らす意味でも大事な要素だと言える。社員に長く働いてもらうためにも、力を入れていただければと思う。