業務改善を目指すも、成果が出ないケースもあるだろう。そんなときは「PDCAサイクル」の運用が効果的だ。PDCAサイクルはトヨタ自動車やソフトバンクなど多くの企業で使われてきたフレームワークだ。正しく運用すれば業務改善が効率的に進んでいく。
本記事ではPDCAサイクルの内容を解説しつつ、回し方や高速で回すポイントなどを紹介する。
PDCAサイクルとは、Plan→Do→Check→Actionの流れで回すサイクルのことだ。1950年代に登場したフレームワークで、業務改善で使われることが多い。流れが決まっているため、コツをつかめば高速で回していける。
PDCAサイクルを高速で回すと、以下のメリットがある。
PDCAサイクルを高速で回すと、実行した内容をチェックしたり改善案を考えたりする機会が増える。したがって、気付きを得られる機会も多くなっていく。
たとえばPDCAサイクルを1週間で一巡させる場合と、1日で一巡させる場合では、1日で一巡させた方が多くの気付きを得られる。よってPDCAサイクルを高速で回すことは、短期間で社内の課題を見つけることにつながる。
高速で回し続けると物事が素早く変わるため、俊敏さも手に入る。フットワークの軽い体制が出来上がり、臨機応変に対応できるチームへとなっていくだろう。
PDCAサイクルを高速で回せる環境が整えば、短いスパンで社内改革を起こせる。結果、業務改善のスピードが速くなっていく。
PDCAサイクルを素早く回したいと思っても、高速で回せない場合がある。ここでは、その原因を紹介する。
計画を立てないまま実行すると、不可能なことに取り組むことが増えて、PDCAサイクルの運用ができなくなる。結果、高速で回せなくなってしまう。
実行を継続することができないのも、高速で回せなくなる理由の1つだ。他の業務が忙しくなったりPDCAサイクルの優先順位が低くなったりすると、PDCAサイクルに時間を割かなくなる。それによって、PDCAサイクルを高速回転できない状況をつくってしまう。
PDCAサイクルの進捗状況を確認しなかったり、Checkを飛ばしたりすると同じ失敗を繰り返す。PDCAサイクルを何度回しても同じ箇所でつまずくため、高速で回せなくなる。
なお、こちらの記事では「PDCA」が失敗するパターンについても紹介されている。失敗する要因も深く理解しておくとよいだろう。→「PDCA」を高速で回すことで、事業をブラッシュアップ!|ナレッジソサエティ
PDCAサイクルは正しい手順で回さなければ効果を発揮しない。ここではPDCAサイクルの手順を紹介していく。
PDCAサイクルは、計画を立てる所から始まる。計画を立てずに実行するのは、行き当たりばったりで進むようなものだ。業務を効率的に進めていくためにも計画立ては行うべきだ。
なお計画立ての際は、以下の内容を意識すると良い。
目標と現実におけるギャップを把握することで、現段階で求められている成果が分かる。非現実的な計画を立てずに済むため「絵に描いた餅」にならずに済む。ギャップを数値化して、具体的内容が分かるようにしておくと良いだろう。
SMARTとは「Specific(内容が分かりやすい)、Measurable(数値化されている)、Achievable(達成できる)、Relevant(会社の目標と関連性がある)、Time-bound(期限が決まっている)」の頭文字をとって付けられた言葉だ。5つの条件を全てクリアしている目標にすることで、意味のある計画が立てられる。
参考:上手に指示出しする方法を解説【SMARTの法則~部下の業務効率を上げる】
プロセスの抽出を怠ると、不要なものまで計画に組み込む恐れがある。その状態でPDCAサイクルを回すと、スピードが落ちる原因になってしまう。PDCAサイクルを高速回転させるためにも、必要なプロセスを抽出してからスケジュールを立てるべきだ。
計画をもとに実行へ移していく。実行するときは、以下のことを意識すると良い。
計画の内容を細かく分ける理由は、タスクを明確にするためだ。全てのタスクを洗い出すことで、Doの段階で何をしなければいけないかが明確になる。
しかし全てのタスクを洗い出したからと言って、それを一斉に行うのは難しい。そこで必要となるのが、抽出されたタスクの優先順位付けだ。ちなみに優先順位を決めるときは、それぞれの計画を4つの区分に当てはめると良い。
優先順位が高いタスクから実行していくことで、優先順位が低いタスクを実行せずに済む。
タスクの種類を見極めるのも大事だ。大きく2種類に分かれる。
継続的に行うタスクの特徴は、同じことを何度も行い、結論付けようとすることだ。たとえば、以下のタスクが該当する。
単発で終わるタスクの特徴は、1度の作業で結論付けようとすることだ。たとえば、以下のタスクが該当する。
計画を無視した状態で進めるとチェックするときに、その内容が有効だったのか分からなくなる。するとPDCAサイクルを回す意味がなくなってしまう。その状況をつくらないためにも、計画通りに進んでいるか確認した方が良い。
なお計画通りに進んでいない場合は原因を分析して、早急に対応する必要がある。
計画に対して、どのくらい実行できたかをチェックする。以下のことに気を付けると良い。
途中で終えてしまうと有効であるにも関わらず、無効だと結論づける恐れがあるからだ。ある程度作業を進めないと、結果が出ない場合もある。正確な結果を知るためにも、全ての工程を終えてからチェックすべきだ。
採点基準を設けないと、各々が主観的な評価をすることになり、正しい評価ができなくなってしまう。
しかし採点基準を設ければ一定の基準に沿ってスコアをつけていくため、主観的な評価をすることが減る。正しい評価を得るためにも、採点基準は設けた方が良い。
チェックした内容をもとに、改善できる箇所がないか考えていく。改善案を考えるときは、以下のことに注意すると良い。
メンバー達で話し合う理由は、様々な視点から改善案を出していくためだ。1人だけで決めると視野が狭くなり、良いアイデアが出ない恐れがある。
しかし複数人で話し合えば、自分が思い付かなかったアイデアが発表されるかもしれない。様々な視点から意見を言ってもらうためにも、メンバー達と話し合った方が良い。
できると思うことを全てアウトプットすべき理由は、多くの意見を出してもらった方が、良い改善案と出会える可能性があるからだ。
最初から枠に捉われた状態で改善案を考えようとすると、母数が減ってしまう。母数が少なかった場合、選択肢も少なくなるため良い改善案と出会える確率が低くなる。良いアイデアと出会える確率を上げるためにも、できると思ったことは全てアウトプットさせるべきだ。
定量的な改善案を作成する理由は、進捗状況が分かるようにするためだ。たとえば「売上を伸ばすための行動をする」という改善案の場合、抽象的な内容であるため進捗状況を調べることは難しい。
しかし「知名度を上げるために1カ月100人にPRする」という改善案であれば、数字が入っているため進捗度が分かりやすい。進捗度が分かれば、内容を加味しながら作業を進めていける。つまり定量的な改善案を作成すると、作業の効率化も期待できる。
改善案をもとに、再度計画を立てる。その後②~⓸の流れを繰り返して、再度⓵へ戻る。内容によって、PDCAサイクルを回す回数を変えるといいだろう。
最後にPDCAサイクルを高速で回すときのポイントを紹介する。
朝5分で1日の流れを考える習慣をつけておけば、PDCAサイクルで計画を立てたり改善案を作成したりする時間の短縮につながる。それによって、PDCAサイクルを高速で回せる状態が出来上がっていく。
その日中に振り替えれば、短いスパンでPDCAサイクルの内容を確認する習慣がつく。一巡するのにかかる時間が短縮されるため、高速回転へとつながる。
何のためにPDCAサイクルを回しているのか、回す目的を明確にすることも大事だ。目的が明確になれば、余計なことを考えずにPDCAサイクルを運用できる。それが、高速回転につながっていく。
PDCAサイクルを回し続けると、感覚がつかめる。その結果、スピードが出てきて高速で回すことにつながっていく。なお継続的に回したいときは、PDCAサイクルに関する作業の一部をシステム化しておくと良い。たとえば、以下の方法がある。
PDCAサイクルの管理に特化したツールを使えば、コンピュータが問題点や課題などを教えてくれる。管理の手間が省け、PDCAサイクルを回すことに時間を割けるため、継続的に回しやすくなる。
ルールをつくっておけば、それに従ってPDCAサイクルを回すだけで運用できる。迷ったり間違った判断をとったりすることが減るため、スピーディーかつ継続的に回せるはずだ。
PDCAサイクルを高速で回し続けても、結果が出なければ時間とコストの無駄だ。PDCAサイクルの内容を見直さない限りは、高速で回し続けても成果を得るのは難しい。成果を得るためにも、PDCAサイクルの結果が出ているか確認すべきだ。
次の記事も参考になる。合わせて参考にしてもらうと良いだろう。株式会社ニュートラルワークス提供:『PDCAサイクルとは|高速で回すポイントを紹介【業務改善を迅速に行う】』
PDCAサイクルを回せば、短期間で社内の課題を見つけたり、物事が素早く変わったりする。その結果、社内での改革が迅速に行われて、時代に取り残されない企業になっていく。しかしPDCAサイクルは、正しく回さないと効果は出ない。回すときは以下の手順に沿って回すと良い。
⓵計画(Plan)を立てる
⓶計画をもとに実行(Do)する
⓷結果をチェック(Check)する
⓸改善(Action)できる箇所を考える
⓹改善案をもとに、再度計画を立てる
上記のうち1つでも工程を飛ばすと、PDCAサイクルが回らなくなる。したがって、高速でPDCAサイクルを回すにしても、1つずつ工程を進めていくことが大事だ。その他に、高速でPDCAサイクルを回すときのポイントも紹介する。
普段の習慣を変えることで、PDCAサイクルを高速回転させるスキルは身につく。PDCAサイクルによって大きな成果を挙げるためにも、高速回転を意識しながら行動していただけると幸いだ。
また、PDCA研修を受講してもらうことも効果的だ。業務改善が解くに重要されている製造業などでは、工場向け研修なども良いだろう。本記事で扱った内容をまとめて身に付けることができる。ぜひ検討してほしい。