企業により、新入社員研修の効果が得られているかどうかは異なる。違いが生まれる大きな理由は、新人研修の行い方だ。研修内容が濃くても、実施するときのポイントを抑えていないと、失敗に終わってしまう。
そこで今回は、新人研修の5つの手順を紹介する。研修実施時のポイントや注意点も載せてあるため、参考にしてほしい。
新人研修とは入社して間もない方に行う研修のことだ。その研修内で社会人として社内で過ごす際に、必要となる知識やスキルを身につけていく。新社会人を対象としているケースが多く、様々な内容の研修を行うのが特徴だ。企業によっては、オリジナルのプログラムを作っているケースもある。
ここでは、新人研修を実施する目的を3つ紹介する。
新人は、社内の事情を理解できてない。そのため新人研修では、会社の文化や理念、部署の分布図や関係性など様々なことを伝え、会社について詳しくなってもらう。自社について詳しくなれば、自然と会社にとって正しい行動がとれるはずだ。
仕事は当然一人ではできない。社内の同僚と連携しながら進める必要がある。その際に様々な従業員とコミュニケーションをとっていれば、連携がしやすくなる。
ビジネスマナーはできるだけ早く身につけるべきだ。中には仕事の中で身に付けてもらいたいと考える会社もあるかもしれない。しかし、たとえ新人であったとしても、お客様からは会社の代表として見られることを忘れてはならない。新人の不手際は会社の不手際として考えられる。
しっかりとしたビジネスマナーを身に付け、お客様に不快な思いをさせないことが大切だ。
ひと口に新人研修と言っても、様々なパターンがある。ここでは新人研修のパターンを5つ紹介する。
受講生が座った状態で、講師の話を聞く形式の研修だ。基本的に講師の方が話すため、受講生が話すことは少ない。参加人数が多くても実行に移せることがメリットだが、受講生通しの交流が生まれないことがデメリットだ。
受講生同士でグループを作らせて、指示された作業をグループで取り組んでもらう形式の研修だ。メンバー同士で意見を交わしながら作業ができる。よってコミュニケーションをとったり、知り合いを作ったりしたい新入社員にとっては、受講しやすいスタイルの研修と言える。発言する機会も多いため、グループ内での活発な意見のやり取りが期待できる。
ゲームの要素を取り入れながら実施する研修のことだ。受講生は楽しみながら取り組めるため、堅苦しさを取り除きたい場合にはいい。
疑似体験をしながら、理解を深めていく研修だ。「電話応対」や「営業訪問」など、実践型のスキルを高めたいときに使える。いきなり現場に出ても、対応方法が分からない場合も多い。
一度ロールプレイングをしておけば、その状況に遭遇したときにも自信を持って対応できる。
現場で実践を積みながら、職務で役立つスキルを身につけていく研修のことだ。新入社員に1人の教育担当者がつく。2人1組で行動していき、分からないことがあれば教育担当者に聞く方法だ。
相談できる人が身近にいるため、新入社員からすると心強い研修となるはずだ。
新人研修を実施するときの手順は以下の5通りだ。
受講生に身につけてもらいたいスキルを明確にし、決定をする所から始まる。目的に応じて、行うべきプログラムやカリキュラムは異なる。研修内容が不適格の場合、新入社員にとってだけでなく、会社にとっても意味のない研修になってしまう。
カリキュラムには大きく分けて2種類ある。1つ目は職種を問わないカリキュラムだ。「ビジネスマナーに関する研修」「報連相に関する研修」など、社会人であれば誰しも身につけた方が良い項目が集まっている。
2つ目は業務を遂行するにあたり、必要となるカリキュラムだ。SEであれば「プログラミング」や「コンピュータシステム」。経理職であれば、「会計ソフトの操作方法」、「商業簿記」といったイメージだ。それを基に、どのような手法で研修を実施するか決めていけば、充実した研修になる。
研修に割ける日数によって、実施できるカリキュラムの種類や時間は変わる。計算結果を元に優先順位をつけておくべきだ。
研修の内容がある程度かたまったら案内をする。受講生だけではなく、他の従業員にも案内した方がいい。なぜなら業務に支障を与える恐れがあるためだ。
「仕事場が研修会場として使用されているため、別の業務に時間を充てる必要がある」、「研修に携わる社員がいるため、仕事のペースを上げて早めに終わらせる必要がある」など、社内では様々なイレギュラーが起こる。社内の業務をストップさせないためにも、社内への共有を忘れてはならない。
研修が終わったら、受講生に振り返ってもらう。レポートを提出させるケースもあれば、選択式で自己評価してもらうケースもある。
それと同時に運営側は受講生の評価をして、新人研修の効果がどのくらいあったか測定する。測定結果は新入社員への指導方法を考えたり、来年以降の研修内容を決めたりするときに役立つからだ。
新人研修を実施するときは、以下の2つのポイントを抑えた方がいい。
去年の研修で大きな成果が得られたカリキュラムだとしても、今年の研修で同じ成果を得られるとは限らない。なぜなら、その年の新入社員によって理解度が変わるためだ。理解度が変われば、効果の出方も必然的に変わる。よって例年通りのカリキュラムを行うのではなく、受講生のレベルに合わせて変えることが大事だ。
新人研修の意味を伝えると、何のために受けているのか意識しながら受講できるためモチベーションの維持につながる。結果、真剣に話を聞いたり、内容を一生懸命吸収したりする確率が上がる。
最後に新人研修を実施するときの注意点を3つ紹介する。
研修の中には、受講生が退屈に感じてしまう場合がある。そうなってしまった場合、受講生は受け身で受講することになり、理解量が少なくなる。以下2つのことを意識するといい。
受講生に考えさせる時間を与えれば、飽きを感じにくくなる。たとえばグループワークやディスカッション形式の研修を盛り込めば考える時間が増えるため、飽きることが減る。
また、講師が受講生を当てて意見を言ってもらう形も効果的だ。当てられた受講生は「次も当てられるかも」と思い、必然的に考えようとしだす。結果、飽きることなく話を聞こうとする受講生が増えるはずだ。
受講生が興味を持つ話題を盛り込むことも、飽きさせないために大事だ。受講生が興味を持っていそうなキャラクターの話や、仕事における過去の失敗談など色々とある。受講生が興味を持てば、研修内容に飽きることなく話を聞いてくれる。
カリキュラムをたくさん詰め込んでも、全ての内容を覚えてくれるわけではない。詰め込みすぎると脳内が混乱し、パニックになる恐れがある。それを避ける意味でも、多少は時間に余裕を持たせながら、カリキュラムの量を調整するのがいい。
新人研修は受けることだけが目的ではない。学んだ内容を実践してもらうことが大事だ。実践に活かそうとチャレンジするものの、上手くいかないこともある。
学んだ内容を実践で上手く使ってもらうためにも、フォローアップ体制を整えておくことが大事だ。なおフォローアップ体制を整えるのであれば、以下3つの方法を使うといい。
フォローアップ研修とは、過去に受けた研修内容を振り返ってもらったり、実務の場で生まれた疑問点を解消したりするために行う研修のことだ。
見直しの場としてだけではなく、不安な点を解消する場にもなる。
直属の上司や人事担当者との面談を設けるのも、フォローアップ時の方法だ。仕事に関することや不安事を聞いてもらうことで、新人の心もすっきりする。定期的に面談の時間を設けるよう、促している企業もあるようだ。
メンター制度とは、新人と社歴や年齢の近い先輩社員がメンターとなり、相談に載ってくれる制度のことだ。メリットは配属部署で話せない相談ができることだ。メンターは基本的に、新人と仕事での関わりが少ない部署の従業員であることが多い。相談しづらい内容がある新人にとっては最適な制度だと言える。
新人研修は入社したばかりの社員に、様々なことを身につけてもらう場となっている。新人の将来を左右する研修であるため手を抜いてはいけない。ちなみに新人研修が行われる目的は以下の通りだ。
1.社内の状況を理解してもらう
2.様々な従業員とコミュニケーションをとってもらう
3.ビジネスマナーを身に着けてもらう
業務中に役立つスキルだけではなく、社会人として必要なスキルを身につけてもらう目的もある。入社1年目として社員の基礎を固める内容が中心となっている。
しかし新人研修を実施するときは、正しい手順が存在する。以下5つの方法で研修を進めるといい。
研修は実施するだけではなく、受講後に実践で活かせるかが大事になる。そのためフォローアップも忘れてはならない。新人に長く働いてもらうにも、研修の運営は慎重に行った方がいい。新人研修の運営担当や講師は、ぜひ心掛けていただければと思う。