ITの発展によって、時代の流れは確実に速くなっている。それに伴い、必要なスキルが入れ替わる速度も上がってきた。数年前まで役に立ったスキルが、現在は無価値になっているケースも珍しくない。
そこで必要となるのがリスキリングだ。さまざまな企業でリスキリングが行われているが、効果が出ている場所もあれば出ていない場所もある。本記事では、従業員のリスキリングのために企業に求められるものを紹介していく。
目次
リスキリングとは、新たに発生する業務に備えて、新しいスキルを習得させることを指す。この言葉は「経済産業省」が唱えたことによって、世の中に広まった。
時代の流れによって、一昔前とは必要とされる産業が違う。時代の流れに対応する意味でリスキリングさせる、企業内でリスキリング研修を受けさせるということは必然的だと言える。
実際、自分の専門性を活かして活躍するプロ人材の6割は、専門分野外に関するリスキリングを行っているというデータもあり、従業員のリスキリングは不可欠になりつつある。
※参考:リスキリングの肝は「コアスキル×専門外分野」の掛け合わせにある(フリーランス・副業メディア「Workship MAGAZINE」)
リスキリングとは、業務と関連するスキルを習得するために学ぶことだ。働きながら、学んでいくことが多い。一方、リカレント教育とは、職場から離れて学びなおすことを指す。大学や学校での学びを意味することが多い。
しかし、いずれも新たなスキルを身につけるための取り組みであるため、意味合いは同じだと思っていいだろう。
ここからはリスキリングが注目されている理由を紹介していく。
時代の流れによって、必要とされる産業が変わってきた。そのため、新たな事業を展開せざるを得ない状況が訪れている。
時代の流れによって、従業員に新たなスキルを習得させ、経営方針の軌道修正を迫られている企業も現れ始めた。それが、リスキリングの注目度を高めることになったと言える。
国としてリスキリングに力を入れているのも理由だ。国内ではリスキリングに関する予算が組まれており、リスキリングに取り組んだ企業に補助金を出しているケースもある。
国としてリスキリングに取り組む企業を支援する流れになっているため、必然的に注目度が上がっていった。
少子化もあって、日本の労働力が低下している。そのため、国内では一人当たりの生産性の向上が急務となっている。
従業員に新たなスキルを身につけさせれば、社内でできることが増えて、生産性アップにつながっていく。それもリスキリングが注目されている理由だ。
ここからは、企業がリスキリングに力を入れるメリットを紹介していく。
リスキリングに取り組めば、従業員たちは新しいスキルを身につけていく。身につけたスキルを実践できる場所を提供すれば、業務で活かしていける。
新しいスキルを持つ従業員が増えるほど、会社として今までとは違うことにチャレンジしやすい。そのため、新規事業を展開しやすくなる。
リスキリングによって、従業員たちの知識は増える。知識が増えれば、今までになかった発想が思い浮かぶようになっていく。そのため、アイデアが生まれやすくなる。
社内のアイデアが増えれば、化学反応が起こっていき、自然とアイデアが生まれる流れが加速していく。そのため、社内に新たな息を吹き込みやすくなる。
会社がリスキリングを推し進めることで、従業員は会社から何を求められているのか理解しやすくなる。従業員の中には、何を学べばいいか分からないケースもある。
方向性を示して、各従業員が何をリスキリングすべきかアクションを起こせる状況をつくる意味でも役立つ。結果、各従業員はどのように動くべきか分かり、チームがまとまっていく。
社内でリスキリングを進めるには、企業はさまざまなことを求められる。ここでは、リスキリングに取り組む際、社内で行った方がいいことを紹介していく。
リスキリングの仕組みを一からつくる理由は、何をすべきか分からない従業員がいるからだ。仮に会社で「〇〇に関するリスキリングをして」と伝えても、従業員は何の勉強をどの順番で行うべきか分からない。
不明点がある状態でリスキリングに取り組んでも、中途半端な状態になってしまう。モヤモヤ感を生まないためにも、会社側でリスキリングの仕組みをつくるべきだ。
なお、リスキリングの仕組みをつくる際は、以下のことを意識した方がいい。
リスキリングは全ての従業員に行わせればいいわけではない。従業員によって、リスキリングを行わせるべきタイミングが違うからだ。
とくに従業員が多い企業だと、全従業員に行わせると管理が大変になってしまう。社内を混乱させないためにも、対象の従業員を決めた方がいい。
リスキリングの対象となっている従業員にイメージさせるのも大切だ。イメージできていないと、どのように取り組むべきか分からなくなるからだ。カリキュラムを伝えても、何をすべきか分からない恐れがある。その状態を防ぐ意味でも必要だ。
教育プログラムを決めるのも重要だと言える。理想を掲げても、プログラムの中身が充実していないと、目標とする成果を得られない。目標とする成果を得るために、必要なカリキュラムのみ盛り込むことを意識するといいだろう。
どのようなステップを歩めば、キャリアを築けるか従業員に分かるようにするのも大事だ。何をリスキリングすれば、キャリアアップできるか従業員に伝わる。
キャリアステップを実現するためにとるべき行動が分かれば、従業員はスムーズにリスキリングに取り組むことが可能だ。ちなみにキャリアの透明性がある状態をつくるときは、以下のことを意識すると良い。
昇給の条件を具体的に明記すれば、従業員はリスキリングで何をすべきかイメージしやすい。
たとえば昇給の条件に「〇〇検定1級取得」と明記したり、「△△のリスキリングを受講した者」と記載したりすれば昇給を目指す従業員は、実現させるために頑張る。結果、従業員のモチベーションアップが期待できるだろう。
特定の従業員が有利になる内容を記載しないのも重要だと言える。社内に不公平感を感じる従業員が増えると、職場の士気が下がりリスキリングを行う従業員が減るからだ。
結果、社内でリスキリングを指示しても取り組み状況が悪くなる。それを防ぐためにも、どの従業員も目指せる内容にした方がいい。
会社で従業員たちの目標管理をする体制を整えるのも大事だ。会社が管理すれば、何をリスキリングさせるべきか決めやすい。
従業員に丸投げするのではなく、会社も一緒に歩んでいく姿勢を見せることでリスキリングを進めやすくなるだろう。なお、目標管理の体制を整えるときは、以下のポイントを抑えると良い。
目標管理シートとは、目標を記載したシートのことだ。シートを活用すれば、目標管理を効率的に進められる。従業員のスキルや会社で設定している目標などを参考にして、シートの内容を埋めるといいだろう。
会社の目標を部下に押し付けないのも大切だ。なぜなら、義務感を感じてしまう恐れがあるからだ。リスキリングを命じてもやる気を感じなくなり、成果が出づらくなる。
自発的に行ってもらった方が、リスキリングがスムーズに進んでいく。したがって、部下に目標を押し付けるべきではない。
学べる環境をつくるのも重要だ。たとえば、リスキリングの対象者を中心にコミュニティをつくれば、お互いに切磋琢磨し合う環境ができるかもしれない。
モチベーションを高め合う環境ができれば、リスキリングによる効果が現れやすくなるだろう。ちなみに学べる環境をつくるときは、以下のことに気を付けるといい。
リスキリングの内容が同じ従業員を集める理由は、参加者間の中で共通の話題が生まれやすいからだ。
リスキリングの中で教えてもらいたいことがあっても、自分と違うジャンルを学んでいる人に聞いても、明確な答えが返ってこない可能性がある。教えてくれる相手が見つからず、リスキリングに対する意欲がなくなるかもしれない。
しかし同じ内容を学んでいる従業員であれば、聞いたことに対して返答してくれる可能性がある。お互いに教え合う状況ができ、モチベーションアップにつながる。結果、リスキリングの効果が出やすくなるだろう。
参加者たちが交流できる状態をつくる理由は、お互いに刺激し合う環境を提供するためだ。たとえば、自分よりも勉強をしている従業員が身近にいれば、それを受けてリスキリングにもっと力を入れようと思うかもしれない。結果、従業員たちのスキルが自然と高まっていく。
リスキリング後は、従業員に実践で使わせていくことも大事だ。実践で使わなければ、知識だけ身につけても役に立たない。
場数を踏むことで、身につけた知識が業務に活きる。そのため、リスキリングさせたら実践で使わせる機会を設けるべきだ。
リスキリングはさまざまな企業で行われている。最後に、リスキリングの事例を紹介していく。
JFEスチールでは、データサイエンティストを増やすためのリスキリングを行っている。この取り組みは2018年から行われており、2024年度までには600人にまで増やそうとしている。
データサイエンスを分かりやすく伝える伝道者や、研究に活かす先駆者を増やすことを目的としているのが特徴だ。
富士通では、10万人規模のリスキリングを行っている。クライアントの作業内容を把握して、システムの設計や開発などを行ったりするSlerを育成することに力を入れているようだ。他社と共同でリスキリングに取り組んでいるケースもあるようだ。
現在の事業の質を高めるだけではなく、それを発展させて新しいことに取り組もうとしている姿勢が見られる。
三菱UFJフィナンシャルグループでは、全従業員がDX化に対応できるようにするためのリスキリングを行っている。従業員に学ばせるだけではなく、実践の機会を与えることで、プロフェッショナルを増やそうとしているようだ。
当社では人材育成に力を入れており、グループ全体でデジタル関連の研修費に数億円かけている。今後は銀行業務以外のことで活躍できる人材が増えていくだろう。
国内ではリスキリングに励む企業も増えてきた。リスキリングが注目されている理由は下記の通りだ。
上記のことが理由で、リスキリングは注目されている。リスキリングが成功すれば、従業員に新たなスキルが身について、社内で新事業を展開しやすくなるかもしれない。結果として、会社を守ることにつながる。
なお、リスキリングのポイントは以下の通りだ。
会社として上記の提供ができれば、リスキリングの質は高まるだろう。今後は今以上に、リスキリングが求められる可能性が高い。会社として対応するためにも、リスキリングに力を入れていただきたいと思う。
こちらの記事でもリスキリングに関して、助成金などの情報も含めて網羅的にまとめられている。あわせて読んでみてほしい。
→リスキリングは何を学ぶのがいい?おすすめサービスや使える助成金についても紹介します!(オフィ助)