毎年、採用活動が終わるたびに一段落するという方もいると思う。内定者を獲得しなくてはいけないというプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、活動している方も多いはずだ。
しかし、内定を出した後も内定者が職場で活躍できる状態まで育てないといけないため大変だ。これを実現するには、内定者期間中に適切なアプローチを行い、内定者に寄り添う姿勢が大事となる。
本記事では、内定者期間に実施したいこと6選を紹介していく。今年度、もしくは翌年度の流れを決める際の参考にしていただけると幸いだ。
内定者期間が大切な理由は、多くの内定者に入社してもらうためだ。内定者時代に継続的なフォローを行ったりイベントを実施したりすることは、ほとんどの企業で行われている。
仮に、複数社から内定を獲得している人材の場合、他社のフォローの方が手厚かったと判断されると内定辞退の理由につながってしまう。
しかし、内定者期間に適切なフォローを行えば、他社よりも良い会社だと思ってもらいやすくなるため、入社する人数が増えるかもしれない。優秀な人材を手放さないためにも、内定者期間に力を入れた方が良い。
内定を出してから入社前までに何をするかで、内定者の入社する人数は変わる。基本的に内定式後は、内定辞退をしない方が良いと言われているものの、入社前であれば内定辞退は可能だ。
多くの内定者に入社してもらうには、内定者期間に会社として何を行うかが重要になってくる。ここでは、内定者向けのイベントや行う際のポイントなどを見ていく。
内定者面談とは、企業の担当者と内定者が面談をすることだ。内定者との信頼関係を築いたり、内定者がスムーズにキャリアアップができたりする状態を作るために行う。
内定者面談の担当は、人事部の社員が任されるケースもあれば、配属先の上司や管理職が担当になるケースもある。人事部と配属先の社員が両方参加する場合は、面談で話す内容や内定者に伝える内容など、すり合わせた方が良いだろう。
なお、内定者面談を実施する際は以下のことを重視すると良い。
内定者面談の始めに、内定者へ期待していることを明確にする理由は、内定者に何を意識しながら働くと良いかイメージしてもらうためだ。
会社から求められていることがわかれば、内定者は何に力を入れて働けば良いか理解することが可能だ。結果、就職後の不安を取り除く効果が期待できるだろう。
内定者面談では、入社にあたり不安なことがないか聞いておくことも大事だ。不安点がわかれば、どのようにフォローすべきか計画を立てやすくなる。
内定者の悩みに対して真摯に対応すれば、会社への印象が良くなるかもしれない。結果、内定者の入社意欲アップが期待できるだろう。
しかし、不安なことを抱えているにも関わらず「不安なことはありません」と答える内定者も多い。不安なことを言いやすい状態を作るには、内定者面談前に不安なことを書き出してもらうなど、下準備が大事だ。
質問に答えられるようにする理由は、内定者を不安にさせないためだ。内定者の質問に対して自信を持って答えることは、内定者を安心させることにつながる。
内定者に安心感が生まれるため、内定辞退を防ぐのに役立つだろう。
内定者懇親会を行う理由は、先輩社員と関われる状況を作ることで、内定者と先輩社員の人間関係を構築させるためだ。悩み事があった際、先輩社員に相談できるため、内定者は不安を解消しやすくなるだろう。
内定者懇親会の項目としては、「先輩社員を交えてのグループディスカッション」や「レクリエーション」、「先輩社員の体験談を聞く」などが挙げられる。
なお、内定者懇親会を実施する際の注意点は以下の通りだ。
様々な部署の社員に参加してもらう理由は、社員と話す機会を増やすことで入社後のキャリアを幅広く知ってもらうためだ。ロールモデルが見つかりやすくなり、入社後のキャリア形成をイメージしやすくなる。
なお、参加してもらう社員として、入社後にメンターや上司として関わりのある社員や、面接官として採用した経験がある社員、コミュニケーション能力が高い社員などを参加させると、内定者の満足度が高まりやすくなるだろう。
内定者懇親会の際にグループを決めておく理由は、内定者が相性の良い先輩社員と話せる状況を作るためだ。席を決めておかなかった場合、相性の悪い先輩社員と過ごすことになり、モチベーションの低下を招く恐れがある。
内定者に、一緒に働きたいという気持ちを持たせるには、相性の良いメンバーたちでグループを作り、居心地の良さを与えることが重要だ。したがって、会社側でグループを決めた方が良い。
堅苦しい雰囲気にしない理由は、「入社後に明るい未来が待っている」と思ってもらうためだ。内定者懇親会の中に「楽しさ」や「明るさ」があれば、入社後に楽しいことが待っているという気持ちを持ってくれて、入社意欲が高まりやすい。
内定者に対して先輩社員がフレンドリーに接したり、明るい音がするBGMを流したりすることで、明るい雰囲気を作りやすくなるだろう。
職場見学会とは、内定者に職場を見学してもらいながら先輩社員と交流してもらうイベントのことだ。内定者に職場の雰囲気を知ってもらい、働いている自分の姿を想像してもらうために行う。
働いている姿を想像させれば、就職後の不安や勤務を取り除く効果が期待できる。なお、職場見学会の実施時は、以下のことに気を付けると良い。
職場見学会では、会社のことが理解できる状況を作ることが大切だ。例えば、会社の詳細が掲載されているパンフレットを見てもらいながら見学会を行えば、内定者は会社について理解を深めやすくなる。
また、現場の社員と内定者でグループディスカッションする機会を設ければ、社員から話を聞くことが可能だ。自社が伝えたいことを話すだけではなく、内定者が知りたいことを話せるかも心掛けると良いだろう。
気軽に相談できる窓口担当と連絡先を提示する理由は、悩み事があった際にいつでも相談できる体制を作るためだ。
相談しやすい状況ができれば、自然と窓口担当と会話を交わす機会が増えていく。結果、窓口担当を通じて会社を信頼するようになり、働く意欲を高めるのに役立つだろう。
なお、気軽に質問できる窓口担当と連絡先を提示する際は、以下のポイントを抑えると良い。
複数の連絡先を提供する理由は、担当窓口からの返信が遅くならないようにするためだ。仮に、担当窓口が1人しかいなかった場合、窓口担当が急用の際、返信が遅れてしまい内定者を不安にさせる恐れがある。
早急に返信し、内定者を不安にさせないためにも複数の連絡先を提供した方が良い。
内定者アルバイトとは、内定者へ入社前に業務を体験させることだ。入社前に業務を経験させることで、社会人としての自覚が芽生え、戦力が高まる状態を作りやすくなる。
なお、内定者アルバイトを雇う際の注意点は以下の通りだ。ただし、内定者アルバイトの有無や内容は企業によって異なるため、参考程度に確認していただきたい。
雇用契約を結んでいない状況であるため、内定者アルバイトを強制してはいけない。内定者によっては、学業や家庭の事情などで内定者アルバイトの時間がとれないケースもあるため、希望者のみにすべきだ。
また、内定者アルバイトの有無を人事評価に入れるというように、内定者アルバイトをやらないといけない状況を作るのも控えた方が良いだろう。
内定者アルバイトがSNSに投稿する際に注意する理由は、企業のブランドや機密情報の保護において非常に重要だからだ。
例えば、ガイドラインを設けた状態で教育を行えば、内定者は社外に公開すべきでない情報が何かわかるようになる。結果、不用意にSNS上で共有するリスクを小さくできるはずだ。
内定者に対して経験豊富な社員をメンターとして割り当てることも大切だ。仕事の指導や職場での振る舞い方のコツなどを伝えれば、内定者の戦力アップにつながる。
内定者は勤務経験が少ないため、先輩社員のサポートは必須だ。内定者が働きやすい状況を作る意味でもメンターをつけることは大事だと言える。
内定者研修は、内定者に対して行う研修のことだ。例えば、以下の研修がある。
内定者研修の種類 | 研修内容 |
---|---|
社会人基礎研修 | 内定者にビジネスマインドを習得させることで、現場で活躍できる状態を作る。自身のストレスとの向き合い方も学ぶ。 |
ビジネスマナー研修 | ビジネスマナーの基礎を習得させることで、丁寧な応対ができる状態にする。電話応対などワークを通じた研修も実施。 |
アサーティブコミュニケーション研修 | 相手の意見を尊重しつつ、自分がどのように主張すれば良いか知ることで、人間関係を構築しやすい状況ができる。伝えづらいことを話すコツも学ぶ。 |
プレゼンテーション研修 | 相手に共感してもらえるプレゼンの仕方を学ぶことで、相手に納得してもらえる状態を作る。プレゼンで使うスライドの作成方法も磨いていく。 |
ロジカルシンキング研修 | 論理的に物事を理解する方法を知り、課題発見・解決できる状態を作る。ワークを行いながら、論理的思考を身に付けていく。 |
会社のニーズや内定者の状況に応じて、研修内容を選ぶと良いだろう。
内定者研修の内容は、会社の印象を左右するため慎重に決めた方が良い。
ここでは、内定者研修実施時のポイントを紹介する。
内定者研修のゴールを設定する理由は、研修後にどのような状態にしたいか明確にするためだ。
ゴールを設定し、逆算しながら研修カリキュラムを決めていけば、何を受講させるべきか見極めやすくなるため、無駄な研修を行わずに済むだろう。
内定者に身に付けてほしいスキルを明確にする理由は、研修の進め方を決めやすくするためだ。内定者ごとで、持っているスキルは違う。
内定者の能力によって、研修で習得させた方が良いスキルは異なるため明確にした方が良いだろう。必要なスキルを明確にするときのポイントは以下の通りだ。
各内定者に自分の持っているスキルを記入してもらうと良い。資格や得意分野など、いくつかの項目を設けておくと、内定者が持っているスキルが明確になって、何を身に付けさせると良いか分かりやすくなるだろう。
現場の声を反映させれば、内定者研修で現場に必要なスキルを習得させやすくなる。社内で活躍しやすい状態ができあがって、会社に貢献できる人材に育つだろう。
内定者が楽しめそうな研修を盛り込む理由は、飽きさせないためだ。内定者が夢中になれる研修を行えば、会社に対して良い印象を持ちやすくなる。その状態を作る上で、内定者が楽しめる研修を行った方が良い。
例えば、ゲーム要素で楽しめるビジネスゲーム研修は、楽しみながらビジネススキルの習得をすることが可能であるため役立つだろう。
研修のために会社へ行くことが辛いと感じる内定者もいるため、オンライン受講を活用した方が良い。
内定者の中には、自宅から研修会場まで遠くて研修へ行くことが辛いと感じる場合がある。内定者の負担を軽くするためにも、オンライン受講の活用は大事だ。
スケジュールを考慮しながら、内定者研修を進めることも重要だと言える。必要な研修を効率的に受講させるためだ。
スケジュールを考慮せずに研修を行った場合、中途半端に研修が進んでしまう恐れがある。内定者研修前に設定したゴールを実現させるためにも必要なことだと言えるだろう。
内定者研修後のフィードバックを行うと、内定者は自分に何が大事か知ることができる。さらに、内定者研修で受講した内容を、どのように活かすべきか考えるきっかけも生まれるため、内定者の成長につながっていくため、会社にとってプラスになるだろう。
なお、フィードバックを行う際は、以下のことを意識すると良い。
フィードバック時は、注意や指導などネガティブな面だけではなく、ポジティブな面を伝えると良い。褒めることで、内定者のモチベーションアップを実現しやすくなる。
先輩社員に指導してもらいたいという気持ちが生まれると、内定を獲得した会社で働きたいという意欲向上につながるため、入社してくれる確率が高くなるだろう。
フィードバックをしても相手に伝わらなければ意味がないため、内定者に分かりやすく伝えることが大切だ。言葉をかみ砕いたり例を用いたりすると、内定者はイメージしやすくなるため、理解度が高まる。
ただし、内定者によって理解度が変わるため、相手によって伝え方を変えることが大事だ。
内定者期間に、人事・採用として行うことは沢山ある。内定者期間の動き方で内定者の入社人数が変わるため、何を行うべきか毎年見直した方が良いだろう。
内定式~入社前に実施したいこととして、以下の内容が挙げられる。
なかでも内定者研修は、会社の印象を左右する内容になるため、人事・採用として力を入れた方が良いだろう。下記を意識しながら内定者研修を行うことで、質の高いものになっていく。
内定辞退者が増えると、再度時間とお金をかけて、人材を探さなくてはいけなくなるため会社の負担になってしまう。
採用した人材を手放さないためにも、内定者期間に力を入れていただきたい。