近年、従業員満足度を重視する企業が増えてきている。従業員満足度が高い職場は、従業員の生産性や顧客対応へのモチベーションが高い傾向にあることから、やはり重要な要素と言える。
従業員満足度を上げることに力を入れても、誤った手順で進めると効果を挙げるのは難しい。効果を出すには、正しい手順を知ることが大切だ。そこで今回は従業員満足度を上げる手順やポイントについて解説する。
従業員満足度とは、様々な視点から測定して算出する満足度のことだ。従業員の自社に対する印象を知りたいときに役立つ。しかし従業員満足度の向上は社内の業績アップとは連動しない。そのため、従業員エンゲージメントを意識しながら従業員満足度を上げることが大切だ。
従業員エンゲージメントとは、従業員と自社がお互いに成長し合う関係性のことだ。エンゲージメントが高くなれば従業員と自社は成長し合っている関係性であるため、業績は上がっていく。よって自社の業績を上げたいのであれば、従業員満足度のみではなく従業員エンゲージメントの向上も忘れてはならない。
従業員満足度が低い会社だと、以下のことが起こる。
仕事に対する不満を持つようになるため、手抜きをする社員が増えていく。そのような社員が増えると、チームの質が悪くなり業務にも支障が出やすくなるだろう。
仕事の愚痴を言う社員が増えていく原因にもなる。ネガティブな言葉を発する社員が増えると、職場の士気を下げてしまう。結果、仕事に対するモチベーションを持てない社員を増やすことになる。
会社に見切りをつける社員が現れて、離職者が増加していく恐れもある。離職者が増えると従業員が足らなくなり、社内の業務を回せなくなってしまう。
従業員満足度を上げるメリットは以下の通りだ。
従業員満足度を高めれば、仕事のモチベーションは上がっていく。結果、業務効率の向上が期待できる。業務効率が上がれば社内の業務をスムーズに運用できるため、業務の遅延もなくなるだろう。
従業員が会社に対して良い印象を持つため、優秀な人材が定着するため、業務の質を落とさずに済む。チームとしての結果を出しやすくなるはずだ。
従業員満足度が上がって仕事のモチベーションも上がれば、顧客へのサービスが向上する。サービスが向上すれば、自社のファンも増えていくだろう。
従業員満足度を上げる手順は以下の通りだ。
はじめに、社内の従業員満足度を調査していく。調査を行うときは、以下の手順で進めるといい。
調査の目的を決める理由は、粒度の細かいデータを入手するためだ。目的を何も決めずに調査すると、データの粒度は粗くなってしまう。しかし「職場に対する印象を知りたい」「業務の進め方に関して知りたい」といった形で目的を決めれば、細かなデータを得やすくなる。
調査の目的に合った質問内容を考えていく。質問の仕方は大きく2種類ある。
選択肢を設けず、自由な発想で答えを考えてもらう質問形式のことだ。たとえば「今の職場に対する印象を教えてもらえますか」「満足度が高い理由は何ですか」といった形で質問する。質問者側が想定していなかった回答や、様々な種類の答えを得られる可能性がある。
選択肢を設けて質問する形式のことだ。たとえば「AとBどちらですか」「職場環境は良いですか。それとも悪いですか」といった形で質問する。選択式であるため、オープンクエスチョンよりは回答しやすいだろう。
アンケート方式の場合もあれば、面談方式もある。質問内容や社員の性格などを加味して、考えるといいだろう。
回答してもらったら、集計して分析する。分析結果をもとに、従業員満足度の上げ方を考えていく。
次に従業員満足度をどこまで高めるか、目標を設定する。目標は、調査結果をもとに決めるといいだろう。たとえば職場への満足度が低いと答えた社員が多ければ、「職場への満足度が高いと答える社員を10%増やす」という目標を立てると良いかもしれない。
目標を設定したら、従業員満足度を上げる方法について考える。方法を考えるときは、以下のことを意識した方がいい。
金銭的報酬や非金銭的報酬には、どういったものがあるのだろうか。
たとえば、以下のものが該当する。
金銭的報酬で満足度を上げようと思っても、長期的には持続しない。繰り返し実践しないと、従業員満足度は下がってしまう。それを防ぐには、お金に関係しない非金銭的報酬を与えて従業員満足度を上げた方がいい。
たとえば、以下のものが該当する。
非金銭的報酬の特徴は、お金を与えなくても従業員満足度を向上させ続けられることだ。場所や機会を提供すれば、従業員自ら満足度を上げていく行動をとってくれる。企業の負担も少なくて済むため、非金銭的報酬を与える方法を考えるべきだ。
従業員満足度を上げるのであれば、なるべく会社に良い影響を与える内容の方がいい。よって、会社のビジョンと照らし合わせるのも大切だと言える。
従業員満足度を上げる方法を決めたら、それに基づいた行動をとっていく。なお行動するときは、定期的にチェックすることが大切だ。チェックしておけば行動していく中で問題が起こったとしても、すぐに発見できる。
一定期間、行動をしたら検証・分析をして、今回の行動がどのような効果をもたらしたのか見ていく。効果が出なかった場合は、何を改善すべきか考えて次回の行動に活かす。逆に効果が出た場合は、何が理由で良い結果をもたらしたのか考える。
従業員満足度を上げるポイントは以下の通りだ。
企業の方向性を共有しない状況で実践すると、会社と社員で目指す方向にバラツキが出てしまう。バラツキが多くなると従業員の不満につながる。結果、従業員満足度を下げる原因になってしまう。
ちなみに企業の方向性を共有するときは、社員に分かりやすく伝えることが大事だ。企業理念に掲げられている内容をそのまま伝えても、理解してもらえない場合があるためだ。全ての従業員に分かってもらえるよう、かみ砕きながら伝えた方がいい。
実践しようと思っても、絵に描いた餅状態では意味がない。従業員満足度を高める工程において、社員に支持してもらうには現場の意見を取り入れるべきだ。なお、現場の意見を取り入れるときは、これらのことを意識するといい。
現場の意見を聞きたいと思っても、信頼関係を築いておかなければ本音を言ってくれない恐れがある。よって、普段から信頼関係を築いておくことが大事だ。
自分が言ったことを知られたくない従業員もいる。それが原因で意見を言ってもらえなかった場合、その方の意見はなかったことになってしまう。その状況を防ぐには、意見を言いづらい従業員でも、発言できる仕組みをつくることが大事だ。
たとえば匿名で言える機会を設ければ、誰の意見か分からないため発言してくれるかもしれない。このように従業員の立場を考えるのも大切だ。
社員のコミュニケーションを活性化させると、従業員にとって居心地が良くなる。それが従業員満足度のアップにつながっていく。ちなみにコミュニケーションを活性化させるときは、以下のことを意識するといいだろう。
集まる機会を増やせば、従業員同士で接する機会も増える。それがコミュニケーションの活性化につながっていく。
たとえば社内でテーマ別研修や勉強会を実施すれば、従業員同士で交流しながら仕事で役立つスキルを習得できる。
また全従業員が集まる懇親会を実施すれば、仕事で関わりのない方とも交流可能だ。繰り返し行うことで従業員同士のつながりが増えていき、コミュニケーションの活性化につながるはずだ。
社員同士が話せるスペースを設けるのも、コミュニケーションを活性化するために効果的だ。カフェスペースや従業員が集う休憩室を完備するなど様々な方法がある。
ブラザー制度とは、先輩社員がサポート役として新入社員の悩みや相談に乗る制度のことだ。ブラザー制度を導入すれば、新入社員と先輩社員が関わる機会を増やせる。さらに先輩社員が別の社員を紹介してくれるかもしれない。結果、横のつながりができていき、コミュニケーションの活性化を生み出すきっかけになる。
従業員満足度を高めるための取り組みを行う企業も存在する。最後に取り組み事例を3種類紹介する。
Speeeでは社員が快適に働けるよう「集中兼仮眠スペース」を設けている。周囲の声や音が気になって集中できないときや、仮眠をとりたいときなど様々な用途で使用できる。
自身の気分に合わせて仕事の進め方を変えたり、誰にも邪魔をされずに自分の時間を遣えたりできることが、従業員満足度を上げるきっかけになっているようだ。
DeNAでは従業員が希望する部署で働きやすくするための制度を導入し、従業員満足度の向上を心掛けている。たとえば、このような制度がある。
シェイクハンズ制度とは異動希望を出した際に、異動先の上長が合意すれば成立する制度のことだ。配属部署の許可がなくても、異動できるのが特徴となっている。
クロスジョブ制度とは、今の部署に所属しながら、別の部署の業務に携われる制度のことだ。様々な業務を経験することで、いくつものキャリアを築ける。
サイボウズでも社員がライフスタイルに合わせて働けるよう、様々な制度を導入している。たとえば、このような制度が存在する。
働き方宣言制度では9つのパターンの中から、自身の生活リズムに合わせて働き方を選べる。これによって、勤務日数や働く場所などを調整しやすくなった。
副(複)業制度は、社員が生活を送れるようにと、2012年に導入された。副業の内容によっては、上長の承認を得ずに行える。
従業員満足度を上げると、従業員が働きやすく感じたり、会社に対して良い印象を持ってくれたりして、仕事のモチベーションを上げてくれるかもしれない。離職率を下げる効果も期待できるため、優秀な人材を定着させる上で重要だ。
ただし従業員満足度の向上と業績の向上は連動しない。したがって、従業員と会社が共に成長しようとする関係性をつくりながら、従業員満足度を向上させることが大事だ。なお従業員満足度を上げるときは、以下の手順に沿って行うといい。
従業員満足度を上げるための取り組みだけではなく、事前調査や検証・分析を行うことが大事だ。その他にも以下のポイントを抑えると、従業員満足度を上げやすくなる。
従業員に働きたいと思ってもらう職場にするには、満足度の向上は欠かせない。長く働き続けてもらうためにも、従業員満足度を上げることに力を入れていただければと思う。