同じ企業で働き続ける従業員もいれば、短い期間で退職する従業員もいる。従業員が働き続けるかは「従業員満足度」によって決まる。会社に対する満足度が高ければ働き続けるし、満足度が低いと退職のリスクが高まる。従業員満足度を上げるときに必要となるのが、今回紹介する「エンプロイーエクスペリエンス」だ。
エンプロイーエクスペリエンスを活用できれば、働き続ける従業員が増える。しかしポイントを抑えなければ、うまく活用できない。本記事ではエンプロイーエクスペリエンスについて解説しつつ、高めるコツを紹介していく。
目次
エンプロイーエクスペリエンスとは、会社や職場での従業員体験や価値のことだ。業務経験や社内で得た満足度、社員とのコミュニケーション、職場で体感した体調など、働く中で起こった現象やアクションが含まれる。
エンプロイーエクスペリエンスを大切にすれば従業員満足度が上がり、モチベーションアップにつながる。その結果、居心地の良い職場となって業務の質が高まっていく。最終的には、会社に恩恵をもたらす。
エンプロイーエクスペリエンスが注目された理由は、労働人口の減少だ。日本では少子高齢化が進んで、人材不足に陥る企業も増えた。その結果、社内業務が回らなくなる企業が現れだす。それを解決する手段として、エンプロイーエクスペリエンスが注目される。
人材不足を懸念している企業は、エンプロイーエクスペリエンスに力を入れて、従業員満足度を高めるアクションをとった。従業員に愛される会社として生まれ変わったケースもあり、現在では多くの企業で導入されている。
エンプロイーエクスペリエンスを活用するメリットは以下の通りだ。
エンプロイーエクスペリエンスを活用すれば、従業員満足度の向上に効果的な方法を見つけやすくなる。そのため、離職率の低下を実現させるのが楽になっていく。
エンプロイーエクスペリエンスを活用すれば、従業員が抱える職場への不満が分かる。満足度が低い箇所をあぶり出し、その箇所を対処すれば職場労働の改善になっていく。職場環境が改善されると、職場の居心地が良くなる。結果、働きやすさを感じる社員が増えていく。
エンプロイーエクスペリエンスの内容を分析すると、従業員満足度の上げ方が分かる。そのため、従業員のモチベーションアップや業務の質を高める効果が期待できる。社内の生産性が向上するため、最終的に会社の利益増加へつながっていく。
ここからは、エンプロイーエクスペリエンスを高める方法を紹介する。
従業員サーベイとは、従業員が持つ会社に対する満足度を調査することだ。従業員の声を聞けば、会社に対する気持ちや想いが分かる。それを自社に反映させることで、エンプロイーエクスペリエンスの向上が期待できる。なお、従業員サーベイは下記の流れで実施すると良い。
質問を選ぶ所から始まる。従業員の声や改善すべき箇所などを見極めながら、質問内容を選ぶ。ここで大事なのは、質問数を増やしすぎないことだ。質問数が多いと答える意欲を失い、回答率の低下につながる。意見を多く集めるためにも、不要な質問はすべきではない。
質問内容を選定したら、従業員に回答させていく。回答させるときは、以下のことに注意するといい。
提出期限を設ける理由は、提出しない従業員を減らすためだ。後回しにされて、回答しない従業員が増えてしまう。それを防ぐ意味でも、提出期限は決めた方がいい。
たとえば繁忙期に調査を実施しても、業務が忙しくて答えてもらえない恐れがある。すると回答率の低下を招く。
多くの従業員に協力してもらう意味でも、閑散期など従業員たちに余裕が生まれやすい時期に調査をした方がいい。
従業員たちの回答結果を集計して、分析する。その後、分析結果を従業員たちに共有していく。共有する理由は従業員の回答が、職場に活かされることをアピールするためだ。
回答結果が職場に反映されないと思われると、従業員はアンケートに協力しない。しかし回答結果が職場に反映されることが分かれば、従業員に当事者意識が芽生える。そのため、調査に協力する姿勢が生まれやすい。
分析結果をもとに改善していく。何をいつ頃に改善する予定か従業員へ伝えると、アクションを起こしていることが従業員に伝わっていく。仕事のモチベーションアップにもつながるため、良いだろう。
エンプロイージャーニーマップとは、従業員が入社してから現在までの流れを可視化したものだ。会社でのアクション・事象だけではなく、そのときの従業員の気持ちも書いていく。
制作の目的は、従業員に様々な視点を持ってもらうためだ。マップをつくれば、従業員はどのような気持ちで、会社員生活を送ったか見返せる。その結果、初心に返ったり忘れていた価値観が戻ったりして、会社との向き合い方が変わるかもしれない。ちなみにマップを作るときは、以下の流れで行うといい。
会社生活に関する聞き取りを行う。入社時の気持ちや、仕事をしていて楽しかった時期や辛かった時期、これまでの業務経験など、あらゆることを質問していく。時系列に沿って聞けば、抜け漏れを防げるだろう。
聞き取り調査を行ったら、どのようなペルソナでマップをつくるか設定する。従業員の心情や経歴を参考にしながら考えるといいだろう。ペルソナの設定が粗かったり、設定を間違ったりするとマップの仕上がり具合が変わるため、細かく設定した方が良い。
話をもとに、従業員が経たプロセスを組み立てる。「入社→業務→転職→退職」といった形で、どのような社会人生活を送ったか流れを明確にするイメージだ。各フェーズには経験した業務や、従業員の心情などを記載していく。
マップの内容を参考にして、従業員の今後の方向性や行動を決めていく。出世を目指した方がいい方もいれば、今の業務に磨きをかけた方がいい従業員もいる。従業員に合った方向性・行動を提示することで、価値のある体験を与えやすくなる。
職場環境を変える理由は従業員のマンネリ化を防ぎ、イキイキと働ける機会を与えるためだ。今の職場で良い経験ができていないと感じる従業員もいる。それを防ぐのに効果的だ。ちなみに職場環境を変える際は、以下の視点を持つと良い。
職場環境を変えて、マイナスに働くと従業員の可能性を潰す場合がある。そのため、従業員にとってプラスになるか考えた方がいい。
職場環境を変えて、他の従業員に迷惑がかかる場合もある。たとえば「ミーティングをしづらくなり、意思疎通がとれない」「従業員の異動で、他の従業員の負担が増えた」といった形だ。社内でこのような事態が起こると、他の従業員が退職する。それを防ぐためにも意識すべきだ。
健康経営とは、従業員が健康体で働ける環境を維持するために行われる経営のことだ。ストレスが溜まりづらい状態をつくったり、長時間労働を防いだりなど、従業員が心身ともに健やかに過ごせる経営を行っていく。
健康経営を導入すると、従業員は体調を崩す頻度が減る。その結果、仕事のパフォーマンスを発揮しやすい状態が生まれる。ちなみに健康経営の導入では、以下の流れで行うと良い。
健康経営にあたり、体制をつくることが大切だ。健康経営を実現させるための部署をつくったり専門家を呼んだりして、スムーズに運営できる環境を整える。
社内で健康に関する課題がないか把握する。「長時間労働が多い」「休日出勤が根付いている」といった形で、課題を次々と挙げていく。
課題を挙げたら、それを解決する方法を考える。「従業員の負担がかからない仕事の進め方をする」「ストレッチなどの時間を設ける」「ストレスチェックを行って、従業員の健康状態を把握する」といったイメージだ。ただし実行できなければ意味がないため、手軽にできる方法を中心に考えた方が良い。
解決方法を考えたら、それを実現させるための計画を策定して実行する。なお実行した際は、どのくらいの効果があったか調査することが大切だ。
たとえば「長時間労働を減らして、仕事の効率が上がったか」「ストレッチなどの時間を設けて、体調は良くなったか」といった形で、従業員たちの声を聞くといい。それをもとに、健康経営の中身をアップデートする。
マネジメントツールを企業に提供しているCo:TEAMででは、エンプロイーエクスペリエンスを高める施策の具体例について更に詳しく紹介している。
参考:エンプロイーエクスペリエンスとは?注目の背景・意味・高めるメリット・施策・注意点
健康経営研修を受けてもらうことも良いだろう。社員一人ひとりが「心も身体も健康にすごし、仕事をこなしていくためには現状をどう改善すれば良いか」を考えることはとても有用な時間となる。ぜひ検討してほしい。
エンプロイーエクスペリエンスは、さまざまな企業で導入されている。最後に力を入れている企業を紹介する。
freeeでは自社の社員に対して、ベビーシッター代金の補助などを行っている。その他に、社内では上司と社員が定期的に面談する時間をつくり、お互いの情報共有を行う。
ワークライフバランスを維持できる仕組みを設けることで、エンプロイーエクスペリエンスの向上を実現させた。
自社ではエンプロイーエクスペリエンス部を設けており、従業員が有意義な時間を送るための工夫をしている。
たとえば、社食の内容を考えて従業員が健康体で過ごせる状態をつくろうとしたり、テクノロジーを駆使して働きやすい職場環境を整えたりなど、さまざまな取り組みが行われている。その結果、エンプロイーエクスペリエンスの向上に成功した。
自社の特徴は、接客マニュアルがほとんど存在しないことだ。そのときの状況に合わせて、自分で考えて動く。仕事の進め方を自分なりにカスタマイズできるため、自分の個性を発揮できる。その環境が当事者意識を生み出し、エンプロイーエクスペリエンスを高めるのに役立つ。
エンプロイーエクスペリエンスを活用すると、従業員満足度の向上につながる。その他にも以下のメリットがある。
従業員だけではなく会社にも恩恵をもたらすため、エンプロイーエクスペリエンスの活用は行った方がいい。しかしエンプロイーエクスペリエンスの導入で効果を挙げるには、正しい施策をとらなければならない。以下のことを行うと、効果が表れやすくなる。
上記の内容は、エンプロイーエクスペリエンスを高める上で重要だ。自社の従業員をうまく巻き込めるかが、成功のカギと言える。従業員たちが安心して働き続けられる環境をつくるためにも、力を入れていただきたい。