ネットで簡単に欲しいものが比較検討できるようになった今、単に良い商品・サービスを顧客に提供するだけでは企業の継続的な成長は難しい。
ニーズの多様化により、ありきたりなものでは顧客が満足しなくなっているからだ。そんな中、接客によってCSを高める手法が改めて見直されている。
本記事では、接客をさらに磨くためのポイントを紹介する。CSをもっと向上させたい接客担当者は、最後までぜひ読んでほしい。
「CS」とは、1980年代から普及し始めた消費者優の概念と言われている。まず、企業がCSを重視すべき理由を掘り下げてみたい。
CS(Customer Satisfaction)とは、顧客満足を意味する。企業が提供する商品やサービスに対し、顧客がどれくらい満足しているかを測る指標だ。アンケートなどを活用し、「満足度」という抽象的な概念を数値化するのが一般的だ。CSを知ることで、企業は自社の強みや課題を明確にできる。
企業は、常に顧客満足度を高めなければならない。その理由は以下の3つに集約される。
商品やサービスを利用したことがある人の感想は、新規顧客の増減に影響を与える。新規顧客は「利用したことがある人の感想」を重視するからだ。満足度が高い顧客は、必然的に口コミやSNSでポジティブなイメージを広めてくれる。広告費をかけずに新規顧客を呼び込む流れは、コスト面のメリットも大きい。
顧客満足を高めることは、リピート率の向上につながる。製品やサービスにコスト以上の価値を感じている顧客は、繰り返しその満足感を味わいたいからだ。満足度が高いリピーターは、新しい選択肢があっても再びそのブランドを選ぶ傾向が強い。企業に対する「満足感」だけでなく、「安心感」や「信頼感」が購買意欲に結びついている。
顧客満足を高めることができれば、厳しいビジネス環境においても競合優位性を確保できる。商品そのものでの差別化が難しい状況では、顧客により良い体験をしてもらえる企業のほうが優位だ。価格以上の価値を感じている顧客は、簡単に他社を利用しない。価格だけでなく、顧客が感じる「他にはない体験」を提供することができれば、競争力はさらに向上するだろう。
CS向上に注力することは、企業のブランド価値を高めることにつながる。信頼と好意を持つ利用者が増えると、企業の社会的評価や認知度が上がるからだ。ブランド価値が高い企業は、優秀人材の採用・職場環境の改善によって既存社員のモチベーションが向上しやすい。顧客満足を高めることは、企業のブランド価値と同時に従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)も向上させる。
CSを向上させる接客にはポイントがいくつかある。以下がそれらを習得する方法だ。
CSを高めるために、ニーズを正確に把握することに注力したい。提供する商品が、企業側の「思い込み」や「偏見」によって、顧客の要望に沿っていないケースもよくあるからだ。顧客調査・データ分析・ペルソナ作成などはもちろん、直接顧客からヒアリングすることでも「顧客が何を求めているか」が明確になる。ニーズを的確に見極めるには、多角的視点が必要だ。
サービスの質とは、「顧客が求めるレベル」のことだ。 期待以上の対応ができれば、レベルが高いサービスを顧客に提供したことになる。具体策は以下の通り。
ホスピタリティ(hospitality)とは、「歓待の姿勢」だ。来客を心からもてなす表現といえる。近年の顧客は、商品を利用することで得られる「心地よさ」を望んでいる。短い接客時間であっても「今そのお客様に何ができるかを考えること」を、社内教育で根付かせたい。従来のサービスにないホスピタリティを、個々のスタッフが考えて行動する必要があるだろう。
サービスの質を高めるためには、迅速で適切な対応を「誰もが」できるようにすることが重要だ。スタッフごとに提供するサービスの質が異なれば、顧客が不安に思うからだ。マニュアル化・OJT講習・勉強会などで全員が同じ対応を出来るようになるのが望ましい。いつ訪れても全スタッフの接客の質が安定していれば、顧客のCS向上は間違いない。
サービスの質を高めるためには、お客様来店時における接客の改善点をチーム全員で話し合うべきだ。固定メンバーが定常的な業務に慣れていると、細かい配慮に気づかない場合も多い。定期ミーティングで動線やアプローチタイミング・言い回しや役割分担など、全体の流れをチームで話し合う時間を確保したい。入店時の挨拶からお見送りまで、スタッフが連携してハイレベルな接客を提供できれば、CSはさらに高まる。
様々なスキルを磨くことで接客サービスの質は向上する。優れた接客サービスは、以下のような複数のスキルを組み合わせて実現するものだ。
スキル | 具体的な内容 |
---|---|
コミュニケーションスキル | 傾聴力:顧客の話から感情・ニーズ・要望を正確にくみ取る 言葉使い:丁寧でわかりやすい言葉・温かみのある声のトーン 非言語コミュニケーション:笑顔やアイコンタクト・洗練された立ち振る舞い |
問題解決スキル | 観察力:表情や行動からニーズ読み取り一足早く対応する 洞察力:言葉や行動の背後にある意図を理解し最適な対応を導き出す 提案力:様々な状況を理解した上で最善の解決策を提案する |
多種多様なスキルを養うことで、どんな状況でも最適な対応ができるようになる。柔軟な接客はCSを大きく向上させるだろう。
チームでおもてなしをすることが、接客サービスの質を高めるポイントだ。スタッフ全員と心地よいコミュニケーションを交わすことができれば、感動的な顧客体験を生む。飲食店の例では、受付係が笑顔でお客様を迎え→接客担当がニーズに沿ったおすすめメニューの提案→キッチンスタッフが料理の詳細をわかりやすく説明などだ。チームが顧客をもてなしていることが明確に伝われば、接客サービスの質は劇的に向上する。
充実したサポート体制も、CSを高める接客を提供するために必要な環境だ。具体的には4つの方法がある。以下で詳しく解説したい。
サポート体制強化の一環として、エリアマネージャーによる定期的な店長面談がある。店長が抱えている問題や課題を直接把握できれば、エリアマネージャーは育成や運営面など全社的なバックアップかできる。運営面の様々な業務負担が軽減されれば、店長は顧客対応やスタッフの指導に集中できる。店長はCSを高める接客を主導すべき存在だ。
定期面談によって、社員のサポートを店長が適切に行うことも重要だ。CSを高めるための接客サービスは、社員と店長の信頼関係によっても強化されるからだ。成長意欲が高い社員は、適正な評価や目標設定・適切なフィードバックによってモチベーションが向上する。社員のやる気が、接客に効果的なことは言うまでもない。
社員が日頃から相談しやすい雰囲気をつくることも、サポート体制の充実につながる。相談しやすい環境は、スタッフ間の問題や悩みが発生しにくい。安心して働ける職場でこそ、社員のパフォーマンスは向上する。サポート体制の整備は、スタッフが自信をもって接客している店舗はCSが高い。
CSを効果的に向上させるには、店長が適度に周囲を見られるくらい余裕がある状態が望ましい。店長が過度に忙しいとスタッフの状況やお客様の動きに配慮が行き届かなくなるからだ。顧客のニーズを予測して柔軟に対応することや、トラブルが発生したときも迅速にスタッフをサポートすることができる。店長が周囲をしっかり見守ることでスタッフの安心感を高め、結果として接客の質も向上する。
顧客満足度(CS)を高めるためには、CS研修の実施が非常に効果的だ。顧客対応の基本的な理論や実践的なスキルが学べ、ロールプレイやケーススタディによって理解を深めることができる。接客の専門家からフィードバックを受けることにより、社内では気づけない改善策やアイデアを得られるメリットも大きい。他業種の具体的な成功事例も知ることができるため、汎用性の高いCS向上スキルを習得できるだろう。
商品・サービスでの差別化が難しくなる中、接客による顧客満足度(CS)の向上は重要な戦略だ。競合優位性確保だけでなく、企業のブランド価値と従業員満足度(ES)向上など多くのメリットがある。今後もテクノロジーが進化すればするほど、人間にしかできない心のこもった接客への期待は高まっていくはずだ。
CSを高める接客ポイントと身に付け方
接客の質向上は顧客の信頼・愛着を得ることに有効だ。長期的な発展を目指す企業は、商品やサービスだけでなく「価値ある体験」を提供することに注力すべきだろう。