ビジネスシーンにおいて、物事が複雑すぎて、解決方法を見いだせない場面がある。その際に活用したいものが「コンセプチュアルスキル」だ。
コンセプチュアルスキルの高い社員が増えれば、社内の状況が良くなっていく可能性がある。本記事では、コンセプチュアルスキルの高め方を解説する。
コンセプチュアルスキルとは、複雑な状況を可視化して物事の本質を理解するためのスキルのことだ。
概念化能力とも呼ばれており、個人や組織の可能性を最大限にまで引き出すスキルのことを指している。このスキルはマネジメントで活かせるため、管理職に求められるケースが多い。
コンセプチュアルスキルが必要となってきた背景として、以下のことが挙げられる。
今後の時代を乗り切るために、何のスキルが必要か分かりづらくなっている。なぜなら、世の中の移り変わりが速いからだ。
身につけた技術が数年で陳腐化するのも珍しくない。時代の移り変わりの早い中で、チームの成果を挙げるためにも、コンセプチュアルスキルは必要だ。
現代ではインターネットやSNSなどによって、さまざまな情報が共有されている。その結果、価値観の多様化が進んだ。
しかしチームを率いる際は、たとえ従業員の価値観が異なっていても、会社の目的に向かって動く状態をつくらなければならない。そのため、コンセプチュアルスキルは必要だといえる。
【掲載内容】
タレントマネジメントシステムを提供する『スマカン株式会社』の記事では、コンセプチュアルスキルが注目されるきっかけになったモデルについて解説されている。
参考:コンセプチュアルスキルとは?高め方や構成要素をわかりやすく解説
コンセプチュアルスキルを構成する要素は以下の通りだ。
ロジカルシンキングとは、物事を論理的に整理して分かりやすくする考え方のことだ。この考え方を身につければ、物事を細分化しながら結論まで導く状態をつくれるだろう。
ラテラルシンキングとは、固定観念にとらわれずに自由な発想をしながら考えることだ。次々と発想が浮かぶ。結果、アイデアが増えてチームを良い状況へ導きやすくなるだろう。
クリティカルシンキングとは、目の前の事象を疑いながらバイアスを解消し、正しい答えを導こうとする考え方のことだ。
これを習得できれば、自分の思い込みを失くした状態で物事を考えていける。自分の価値観を相手に押し付けることが減り、従業員の可能性を発揮しやすくなるだろう。
多面的視野とは、1つの物事をさまざまな角度で見ることだ。さまざまなパターンで物事を見ることで、相手や組織の可能性を発揮できるチャンスを見つけやすくなる。
1つの見方しかできないと、チャンスがあるのに見逃してしまう。その状態を防ぐ意味でも、多面的視野は必要だ。
知的好奇心とは、目の前の事象に対して興味・関心を持ちながら、深く知りたいという気持ちを持つことだ。物事を深堀する姿勢が生まれるため、表面的なものにとらわれて考えてしまう状態を減らせる。
物事を深く考えることができ、本質的な部分を理解しやすくなるだろう。
ここからは、コンセプチュアルスキルを身につけるメリットを紹介する。
物事の本質が見えてくるため、問題の本質を見抜ける力が身につく。本質を見抜くことができれば、問題解決までの時間が短縮される。余計な時間を使うことが減り、仕事を円滑に進めやすくなるはずだ。
複雑になったものを明確にできるため、そこから新たな発想につながる可能性がある。新たな発想が生まれると、今まで脳内になかった考えが浮かび上がるかもしれない。
その結果、今まで解決できなかった事象を問題解決できるチャンスが増えていく。
コンセプチュアルスキルを身につければ、複雑化したものを明確にできる。会社の状態を良くするために何をすべきか把握しやすくなる。要領よく仕事を進められる体制ができて、生産性アップにつながっていく。
コンセプチュアルスキルを身につければ、会社として何を伝えるべきか分かる。なぜなら、相手によって伝え方を使い分けるクセが生まれるからだ。
チームのパフォーマンスを上げるために、何をすべきか考えるクセが身につく。そのため、会社の理念や経営指針を浸透させるのが楽になる。
会社で起こっている問題の本質が分かれば、最適な解決方法が分かる。そのため、社内のリスクを回避できる効果も期待できるだろう。
社内のリスクを回避できれば、会社に損失をきたす機会が減り、余計な出費を生まずに済む。そのため、財政状態の安定に役立つ。
コンセプチュアルスキルは、正しい方法で取り組まなければ身につかない。最後に、コンセプチュアルスキルの高め方を紹介する。
物事を抽象化しながら考える習慣が必要な理由は、ぼやけた内容を明確にするクセをつけるためだ。物事を分析する際の抽象度が高くなるほど、俯瞰的に物事を見やすくなる。
問題の核となる部分を発見でき、コンセプチュアルスキルの発揮をサポートしてくれる。ちなみに、物事を抽象化しながら考える習慣をつける時は、以下のポイントを抑えるといい。
下調べをしてから抽象化する理由は、中身のないものにしないためだ。仮に情報が不足している中で抽象化しても、説得力のないものになる恐れがある。
しかし下調べをすれば情報や物事の背景などが分かり、どのように抽象化すべきかイメージしやすくなる。結果、中身のない状況で抽象化するのを防ぐのに役立つ。
選択する習慣をつける理由は、すべての事象を盛り込まないためだ。抽象化する時に大切となるのは、必要な情報のみを抽出することだ。
すべての情報を盛り込むと、抽象化した内容が分かりづらくなり、相手に伝わらなくなってしまう恐れがある。それを防ぐ意味でも、何が必要か選択する習慣はつけるべきだ。
物事を具体的に考える習慣をつけさせる理由は、目の前の事象を掘り下げる能力を高めさせるためだ。物事を掘り下げるクセが身につけば、物事が次々と明確になっていく。
結果、どのように相手やチームのパフォーマンスを発揮させるべきか考えるのが楽になる。ちなみに、具体的に考える習慣を身につけさせるには、以下のことを意識するといい。
5W1Hとは「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」の頭文字をとったものだ。
この項目に沿って、情報を整理するクセがつけば、細かい精度の情報を発信するクセがつく。結果、物事を具体的に考える習慣を身につけることになる。
なぜなぜ思考とは、事象に対して何度も「なぜ?」と問いかけることだ。たとえば、このような流れで行っていく。
「業務上でトラブルが起こった理由はなぜか?」→「〇〇が理由」→「〇〇が理由なのはなぜか?」→「××をしたから」→「××をしたのはなぜか?」→「△△だったから」
繰り返し「なぜ?」と問いかけることで、潜在的な部分を明確にしていく。そのため、物事を具体的にするのに役立つ。
MECEとは「モレやダブりがなく網羅させる」ことだ。業務上でモレやダブりが発生すると、無駄に時間を使うことになってしまう。その結果、個人やチームの力を発揮させるのが難しくなる。
コンセプチュアルスキルを発揮させる上で、時間の確保は必須だ。ある程度の時間を確保できれば、アクションをとる時間も増えて効果が出やすくなる。
それを実現させる意味で、普段からMECEを意識した行動をとらせることが重要だ。なおMECEを意識した行動をとらせたい時は、以下のことを実践させるといい。
事象の全体像を正しく見るクセをつけさせる理由は、MECEの精度を上げるためだ。全体像を正しく見なかった場合モレやダブりが出たり、盛り込むべき内容が載っていなかったりするかもしれない。それを防ぐ意味で、全体像を正しく見るクセはつけた方がいい。
フレームワークを活用させると、MECEを実現させやすくなる。たとえば製品の開発や、販売促進に関することであれば「4P分析」を使うといいだろう。
また、自社の事業戦略について考えるなら「SWOT分析」や「PEST分析」など、状況に応じてフレームワークを使い分けることが重要だ。フレームワークを活用できれば、MECEが実現できているか分かりやすくなる。したがって、MECEの質を向上させるのに役立つ。
コンセプチュアルスキルの習得を目的とした研修を実施するのも効果的だ。たとえば、以下の研修形式がある。
集合型研修とは、受講者が会場に集まって実施する研修のことだ。講師と受講者が同じ会場にいるため、お互いに情報共有しやすい。全員が同じ環境の中で受講できるため、オンラインによるタイムラグが生じることもない。結果、コミュニケーションをとりやすくなるだろう。
オンライン研修とは、その名の通りオンライン上で開催される研修のことだ。インターネット環境があれば、どこからでも研修を受けられる。場所に問われず参加できるため、離れた場所で働いている社員も受講しやすいだろう。
実施したい研修テーマは以下の通りだ。一例ではあるが、本記事を作成しているリスキルで実施しているものを参考に、研修開催を検討してほしい。
・ロジカルシンキング研修:論理的思考力を磨く
・ラテラルシンキング研修:発想力を磨く
・クリティカルシンキング研修:前提を疑い、本質を見抜いて考える
・問題解決研修:上記スキルを活用して、問題を解決へと導く
・管理職向け ダイバーシティマネジメント研修:多様な価値観を持つ部下・チームを適切にマネジメントする
人事評価に反映される状態ができれば、社員にコンセプチュアルスキルを身につけようとする習慣が生まれるからだ。
良い評価を得たい社員は、コンセプチュアルスキルの向上に力を入れる。その熱意が社内に広がれば、会社全体としてコンセプチュアルスキルが上がりやすい状態になっていく。なお人事評価に反映される状態をつくる時は、以下のことを心掛けるといいだろう。
コンセプチュアルスキルの高さを人事評価に反映される状態を勝手に決めると、社員から反発される恐れがある。それを防ぐには、社員に伝えた状態で進めることが大事だ。
いつ頃から実施するか前もって伝えることで、トラブルを回避しやすくなるだろう。
人事評価に反映される状態をつくる時は、評価基準を明確にするのも大切だ。評価基準を明確にしないと、評価の決め方が分からなくなり、評価者の私情が盛り込まれる恐れがある。評価精度を上げるためにも、基準は明確にした方がいい。
コンセプチュアルスキルは、今後の時代において必要とされるスキルだ。コンセプチュアルスキルは、以下の項目がもとになって構成される。
コンセプチュアルスキルを向上させる上で、不可欠だといえるだろう。なお、コンセプチュアルスキルを高めるには、以下のことを実践するといい。
上記のことを意識すれば、社員たちのコンセプチュアルスキルを高めやすくなる。社員たちの可能性を発揮させて、社内の状態を良くするためにも、会社として力を入れていただきたい。