コンプライアンスを遵守することは、ビジネスパーソンにとって当然のこととして周知されている。
しかし、意識していない部分で守れていないことがあったり、一歩間違うと違反となってしまうなど、日常的に気をつけなければならない点や配慮すべきポイントは多い。
本記事ではコンプライアンスを学ぶ意味と違反への対応方法について紹介する。学び直し・再確認の意味で活用してほしい。
目次
コンプライアンスとは「法令順守」のことだ。
具体的には、法律・企業倫理・社内規則などを守っていくことを指す。
コンプライアンスが注目されるようになったきっかけの一つは 、バブル経済崩壊後に起こった企業の相次ぐ不祥事だ。企業の中にはコンプライアンス違反を犯したことがきっかけで、倒産した例もある。このようにコンプライアンス違反は、組織や企業が崩壊する原因になってしまう。
今まで組織や企業で見過ごされてきたことも、時代の流れによって問題視されるケースもある。自分を守る意味で、コンプライアンスを学ぶことは重要だと言えるだろう。
コンプライアンスを理解するメリットは以下の通りだ。
コンプライアンスを理解できれば、違反の内容が明確になる。あきらかなコンプライアンス違反であれば気を付けることは可能だ。しかし、内容によっては、無意識のうちに違反しているケースがある。
違反となる事例を細かく知ることで自分を守れるため、コンプライアンスの理解はした方が良い。
コンプライアンス違反は、組織や企業のブランドイメージを損なうことに繋がる。
例えば、社員がコンプライアンス違反をした企業とそうでない企業、同じ性能・価格のものがあればどちらを購入するだろうか。違反をした企業の商品や購入意欲がそがれることがわかるだろう。
「問題になると思わなかった」と言っても、世間に許してもらうことは難しいため、正しい知識を社員一人ひとりが身に付け、普段から注意して業務を遂行することが必要だ。
場合によっては、組織や企業のブランドイメージを落とした社員は、会社から損害賠償請求をされる恐れがあるため、この点でも正しい知識を身に付けておきたいものだ。
コンプライアンス違反が起こる理由は主に3つある。内容は以下の通りだ。
1つ目は職場環境によるものだ。以下のシチュエーションが考えられる。
上記の環境下で働いている場合、理性が利かなくなってしまい、コンプライアンス違反を招く原因になる。
社員のモラルが欠如している場合も、コンプライアンス違反のきっかけになってしまう。「違反しても大丈夫」「よくあることだから大丈夫」という雰囲気が、職場に広がるからだ。
特に、コンプライアンス違反を見逃す組織や企業だと、スルーしてしまう可能性がある。結果、コンプライアンス違反が起きやすい環境ができてしまう。
コンプライアンスに関する知見が浅い場合、無意識のうちに違反するかもしれない。世間の常識とかけ離れたアクションばかり起こす恐れがあるからだ。
外部に指摘されるまで過ちに気付けないため、意図せずコンプライアンス違反となる行動をとってしまう。
コンプライアンス違反の事例を紹介する。代表例は以下の通りだ。
社内の情報漏洩は、コンプライアンス違反だ。外部に情報を漏らしたり、データが入ったパソコンを失くしたりする行為などが該当する。
社内情報の私的利用も、コンプライアンス違反だ。会社に登録してある個人情報を見て私的な連絡をしたり、社内情報を悪用して犯罪を行ったりする行為などが該当する。
ハラスメント行為もコンプライアンス違反だ。卑猥な言葉を部下に投げかける「セクハラ」や、妊娠中の社員や心無い言葉をかける「マタハラ」、職権を乱用して部下に暴言を吐く「パワハラ」などが該当するだろう。
ハラスメントの意識がなくても、相手がハラスメント被害に遭ったと感じれば、コンプライアンス違反と認定される。
社内備品の不正利用も、コンプライアンス違反だ。会社支給のパソコンで業務と無関係のページを見たり、職場の電話で知人とプライベートの話をしたり、プライベートで使うために職場の備品を持ち帰ったりする行為などが該当する。
社員一人ひとりが真剣に取り組めば、コンプライアンス違反を防ぐことは可能だ。最後にポイントを解説する。
コンプライアンスに関する共通認識をメンバーたちで持つためにも、曖昧になっているルールや暗黙知はチーム内で統一すべきだ。
社員間での認識が一致し、コンプライアンス違反の予防につながる。統一する際は、全社員が理解できている状況にすることが大事だ。
マニュアルを整理して随時更新すれば、コンプライアンスに関する情報をメンバーに伝えられる。コンプライアンスに対する意識を強く持つきっかけとなるため、違反行為が起こりづらくなるだろう。
なお、更新をスムーズに行うにはマニュアルの整理や更新頻度を決めておくと良い。さらにマニュアルの管理担当者を決めておけば、マニュアルのチェック体制が整うため、更新が放置されずに済む。
社内・社外などでコンプライアンス研修を実施することも一つの手段だ。
を通して、コンプライアンスに関する知見を深められ、コンプライアンスの理解力が上がる。全社員に実施することで、コンプライアンス違反が起こらない組織・企業づくりに役立つだろう。なおコンプライアンス研修は、新規配属者が着任するたびに行うと良いだろう。
ここまでは「自分自身がコンプライアンス違反を行わない」という視点で確認してきた。
しかし、自身ではなく同僚や上司、部下などが職場でコンプライアンス違反行為をしている場合もある。その際は早急に対応することが大切だ。違反を発見した際は、以下のことを行う。
コンプライアンス違反を発見した際は、組織や企業へ早急に報告して、迅速な対応をとる。内容によっては組織や企業に大きな損失を与えてしまう。被害を最小限に抑えるためにも重要だ。
なかには報告することが怖いと思っている社員もいるかもしれない。しかし、日本には内部通告者を保護する法律(公益通報者保護法)によって、組織や企業が不利益を与えてはいけないことになっている。
法律によって通報者が守られる状態ができているため、過度に報告することを怖がる必要はない。なお、組織や企業への報告時のポイントは以下の通りだ。
私情を入れず、事実のみを報告することが大事だ。「〇〇だと思う」と推測で伝えるのではなく「〇〇の所を見ました」「〇〇をしています」と、実際に見た場面を伝える。
会社側が状況把握しやすい状況を作る上で重要だ。
加害者を誹謗中傷する発言も控えた方が良い。「性格がきつい〇〇さんだから、悪いことばかりやっている」「仕事の出来が悪い××さんだからコンプライアンス違反をしてもおかしくない」と告げることが該当する。
人格の悪い社員が、コンプライアンス違反をしているとは断言できない。社員の人権侵害を防ぐ意味で大事だ。
自身が管理職などである場合、部下から受けたコンプライアンス違反に対して初期対応をしていくことが求められる。
例えば、部下からハラスメントの報告を受けた際は、事実関係を確認するなどだ。
事実関係を確認することで、正しい情報を得ることができる。
報告者が100%正しいことを言っているとは限らない。真実を明確にして、組織や企業としての対応方法を誤らないためにも事実関係の調査は必要だといえるだろう。
事実関係の調査時は以下のポイントを抑えると良い。
中立的な立場で調査する理由は、固定観念を失くすためだ。例えば「加害者だから絶対に悪いことをしている」と決めつけると、コンプライアンス違反が起きているという前提で調査が進むかもしれない。
結果、無実であるにも関わらずコンプライアンス違反を認定されるリスクがある。冤罪を防ぐためにも、中立的な立場で調査すべきだ。
報告者を保護する意味で、守秘義務を守ることも大切だ。調査内容が漏れると、他の社員の耳に入って、噂が広まる恐れがある。結果、報告者が働きづらさを感じるかもしれない。
労働環境を悪くしないためにも、調査内容の守秘義務は守るべきだ。
部下がコンプライアンス違反による被害に遭った場合は、上司としてケアに携わる必要がある。ケアを行う理由は、部下が働き続けられる環境を提供するためだ。
社員によっては、心の傷が深すぎて出社できなくなるケースもある。傷が大きくなる前に、迅速にかつ適切な方法でケアにあたることが大事だ。ケアの方法は以下の通りだ。
会社の総務や人事担当、上司など社員がケアする方法だ。同じ会社の人間であるため、お互いに共感できる箇所が多い。普段から社員間で信頼関係を構築しておくと、ケアしやすいだろう。
社内の産業医やカウンセラーなど、医療スタッフがケアする方法もある。社員以外と話したい人に向いているだろう。
市区町村の保健福祉センターやクリニックなどでケアする方法もある。組織や企業の関係者と話すことが怖いと感じる場合や、社内に対応できるスタッフがいない場合に活用すると良いだろう。
コンプライアンス違反が外部に伝わっている場合、取引先と話す機会がある場合は、説明をした方が良い。理由は組織や企業の信頼を失わないためだ。
コンプライアンス違反が公になっているのにも関わらず何も触れなかった場合、不誠実だと思われてしまう恐れがある。取引先からの信頼を取り戻す上で重要だ。
なお説明する際は、相手に分かりやすく伝えることが大事になる。取引先に事情を理解してもらい、納得してもらうことが信頼回復につながっていく。
全社員がコンプライアンスを学ぶ体制ができれば、組織や企業全体で理解度が高まっていく。コンプライアンスを理解するメリットは以下の通りだ。
しかしコンプライアンス違反が起こるケースもある。万が一コンプライアンス違反が発覚した際は適切な対処が必要だ。
対応方法は、一般社員か管理職かによって変わってくる。
上記のことを行えば、問題解決もスムーズに進むはずだ。弁護士に相談するのも一つの方法だ。社員が不利益を被らないためにも、コンプライアンスの理解度を高めていってほしい。