業績を上げる方法は様々だが、利益を上げるという点では、業務改革は効果的な手段となる。
しかし業務改革を行った全ての企業が、業績を上げたわけではない。業務改革によって損失が出たり、生産性が大きく落ちたりする可能性がある。成功させるには、正しい進め方を覚えておくことが大切だ。
今回は、業務改革の進め方に関する5ステップを紹介しつつ、ポイントや注意点についても解説する。業務改革の正しい方法を知り、事業に活かしていただければと思う。
業務改革とは社内で掲げている目標を達成するために、業務の流れや組織の枠組みを根本から変えることだ。別名BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)とも呼ばれており、1990年代にアメリカの学者によって発表されたことがきっかけで注目されるようになった。なお、業務改革には以下の特徴がある。
大きく改善することが特徴だ。業務プロセスを一から構築することや部署の統廃合、事業の廃止など、インパクトのあることをする。短時間で大きな変化が現れるような働きかけをするのも、業務改革の特徴だと思っていただいていいだろう。
業務改革では業務プロセスを根本的に変えることを前提として行う。業務単位で変えることを目的として行われる。しかし業務改善は、現状の業務プロセスを残しつつ、業務効率を良くする方法を考えていく。変化の度合いは小さいことが多い。
業務改革と業務改善は、変化の大きさが違うと言える。
業務改革によって期待できる効果は様々ある。
業務改革が成功すれば、生産性アップを叶えてくれる。成果物が増えたり作業のロスが減ったり、残業がなくなったりなど様々なことが期待できる。
顧客との電話対応や、公式サイトからの問い合わせに対して返信する業務など顧客に対応する業務の品質が良くなれば顧客の満足度アップにつながる。そうなると、以下のことが期待できる。
業務改革は、組織の体制が変わるきっかけにもなる。仕事のマンネリでやる気がなくなっていた同僚のモチベーションが上がったり、組織内の腐敗を防いだりできるかもしれない。結果、部署の雰囲気を良くすることにつながる。
顧客の満足度が上がれば、リピーターとして継続的に買ってくれる可能性があるため、売上アップが期待できる。
ここからは業務改革の進め方を5つのステップに分けて紹介する。
業務改革に取り組む前は、目標を決めることが大切だ。目標によって、業務改革の内容が変わるためだ。いくら業務改革を行っても、目標に向かって行わないと成果は出にくい。よって目標を設定せずに実施する業務改革は、時間とコストの無駄と言える。業務改革の目標を決めるときは、以下のことを意識しよう。
目標の達成度合いを見るには、数字で計測できる目標にした方が良い。たとえば「前年度の売上〇%アップさせる」、「顧客からのクレームを0にする」などだと数字が入っているため、目標の進捗度合いを測るときに便利だ。
一方「従業員のモチベーションを上げる」のような目標だと、数値が入っていないため進捗度合いを見るのは難しいだろう。
自社の進むべき方向に合った目標を設定するのも大切だ。自社が目指す方向と違う目標を設定しても、会社の成長にはならない。企業理念などを考えて設定することが大切だ。
次は問題点をあぶり出し、改善すべき箇所を見つける作業だ。業務上における問題点が見つかれば、業務改革で行うべき内容を見極めやすく改善もしやすい。
ちなみに、作業内容や担当者などを記載した「業務フローチャート」を作成すれば、どの箇所に問題点があるか見つけやすいため便利だ。
会社で掲げている目標を達成するために、どこから改革していくか優先順位をつける作業だ。従業員のフローを変えるのはもちろん、以下のサービスを活用し、業務の管轄を変える場合もある。
グループ企業が用いる手段で、バックオフィス業務(経理・人事・労務など)を1カ所へ集約させることだ。グループ会社によっては、各法人にバックオフィス業務の人材が在籍している。しかし、場合によっては仕事が非効率になってしまう。
そこで各法人にあるバックオフィス業務を1カ所に集約して、業務効率を上げるのだ。ちなみにシェアードサービス先は、グループ企業内に設けられているケースもあれば、別会社のケースもある。
業務の一部を外注することで、別名「BPO」とも呼ばれている。アウトソーシングを使うメリットは従業員のリソースを確保できることだ。部署内で業務をこなす必要がないため、従業員に今までとは違う業務を指示できる。
ただし仕事のクオリティやセキュリティ対策は、アウトソーシングを請け負っている企業によって違う。そのため、依頼先を見極める力が必要となるだろう。
業務改革の内容が決まったら、変更後のフローで業務を回してもらおう。実際に業務を回すときは、マニュアルを用意しておくと親切だ。紙媒体で用意するケースもあるが、従業員専用の公式サイトにPDFで掲載するケースもある。
ちなみに業務フローが変わる場合は、事前に説明して疑問点を解消する時間を取った方がいいだろう。当日に業務フローが変わることを言われても、対応不可の可能性がある。各部署のメンバーがスムーズに業務を進めるためにも用意しておこう。
業務改革の効果を測り、業務改革後について振り返る時間をつくるのも大切だ。業務時間の変化や、変更後のフローで業務を回した感想など、色々な面で効果測定ができる。その内容を次回の業務改革に活かせば、より一層出来の良いものが仕上がるはずだ。
業務改革の進め方で抑えるべきポイントは以下の通りだ。
BPRを実施するときは、ゼロベースで考えることが大切だ。業務改善とは違って、一部分を改善する方法ではないためだ。とは言っても、過去の経験が邪魔をしてゼロベースで考えられないケースもあるだろう。そのときは、以下のことを意識しながら考えよう。
思い込みや感情などの、私情を捨てることが大事だ。「今まで〇〇だったから××になるはず」といった固定観念がない状況にすると、ゼロベースで考えやすくなる。自分の想いや望み・理想像などを捨てられるかが大事だ。
一社員としてではなく、第三者視線として考えるのもゼロベースで考えるコツだ。社員の立場だと見えなかったことでも、消費者の立場に立てば見えるものもある。
「自社のことを知らない顧客からしたら、どうだろうか」「〇〇の仕事をしている方からすると、どう見えるだろうか」というように、自分が経験しない視点で妄想すると、様々なことをイメージできて役立つだろう。
できない理由ばかりを考えると、枠が狭まってしまいゼロベースで考えるのが厳しくなる。しかし、できる理由を中心に考えれば、枠にとらわれない発想をしやすくなるため、ゼロベースでの考えも楽になる。
自分が無理だと思っていることを排除できるかが、ゼロベースの考えを実践する上で大事だ。
業務改革の必要性を部署のメンバーに共有すれば、一人一人の仕事に対する意識を変えられるかもしれない。メンバーのモチベーションが上がれば、部署内の業務がスムーズに流れることにつながる。結果、業務改革の成功率を上げてくれるだろう。
変更後のフローを各部署に共有しないと、部署内のメンバーが連携をとれなくなり、社内全体の業務が非効率になるかもしれない。それを防ぐために、変更後のフローを関係部署に共有すべきだ。
最後に、業務改革を進めるときの注意点を見てみよう。
業務改革を計画している部署が、無駄な作業だと思っても、現場に携わっている方からすると、絶対に失くしてはいけない作業の場合もある。現場の意見を無視して業務改革が失敗する場合もあるため、様々な部署のメンバーと連携しながら進めることが大切だ。
全ての業務をアウトソーシングすればいいわけではない。業務によっては社内で行った方が良いケースもある。以下の業務は、社内に任せた方がいいだろう。
アウトソーシングをした業務は、自社以外の人材が行うため、その業務に関するノウハウは社内に溜まらない。アウトソーシング先にノウハウが溜まってしまう。したがって社内でノウハウを引き継いでいきたい業務は、社内業務にすべきと言える。
自社のルールに則って、やってほしい業務もアウトソーシングしない方がいい。アウトソーシング先で設定されたマニュアルに沿って、作業される可能性が高いためだ。
業務改革を行うと業務の流れが大きく変わるため、仕事上のミスが増えてもおかしくない。そうなったときに、フォローできる体制を整えておくのも大事だ。
たとえばミスが発生したときの対処法を決めておくと、リカバリーしやすい。冷静に対応できるか仕組みを作れるかがカギになるだろう。
業務改革は社内で掲げている目標を達成するために大事なことだ。企業の中には大成長したケースもある。業務改革を行えば、以下の効果が期待できる。
しかし業務改革を行ったからと言って、必ずしも成功するわけではない。正しいやり方を覚えておかないと、自社に良い影響を与えるのは難しい。業務改革のステップは以下の通りだ。
上記のステップをこなせば、業務改革を実施するまでの手順も簡単だ。業務改革を成功させるには、現場の声を聞いたりフィードバックをしたりして、何度も行うことが大切だ。社内の中身を変えたいときは、1つの方法として業務改革を選んでいただければと思う。