アンガーマネジメントという言葉は誰しもが聞いたことがあだだろう。1970年代にアメリカで誕生した言葉で、社員にアンガーマネジメントの方法を教えている企業も存在する。
アンガーマネジメントとして扱う手法は様々だ。今回は、アンガーマネジメントの概要や、効果を発揮しやすい7つの方法について紹介する。
アンガーマネジメントとは自分の中に生まれた怒りを、管理・コントロールすることだ。
元々は罪を犯した者を更生させるためのプログラムとして用いられていたが、次第に企業の研修カリキュラムとして取り入れられるようになった。
現在では定期的にアンガーマネジメント研修を行っている企業も存在する。
この章では、アンガーマネジメントの方法を社員に知らせた方が良い理由を5つ解説する。
怒りを前面に出す社員ばかりだと、職場の雰囲気がギスギスして居心地が悪くなってしまい、退職者が増える原因になる。
しかしアンガーマネジメントを身につけた社員が増えれば、怒りの気持ちを前面に出す社員が減る。結果、職場の居心地が良くなって退職率を下げる効果が期待できる。社員に長年働いてもらうためにも、大事なことだと言える。
怒りっぽい方は、部下から悪い印象を持たれやすい。アンガーマネジメントの方法を知れば、部下に怒りをぶつけることが減り、良い印象を持たれる機会が増える。部下が上司のことを慕ったり良好な人間関係を築きやすくなったりするため、上下関係の悩みも減るはずだ。
現在は上司からのハラスメントも問題視されている時代だ。社内からハラスメントの風潮を消すためにも、アンガーマネジメントを伝えるのは必要だ。
怒りに身を任せて行動することが減り、無駄な行動をしなくなるため時間の有効活用に役立つ。
時間の有効活用ができると、作業時間が短くしたり業務のスキマ時間を効果的に使えたりするため、社内の業務改革が進めやすくなる。
新規事業の業務に就いてもらう人材を輩出したり無駄な作業を削ったりなど、会社の体制を変えやすくするのもアンガーマネジメントの方法を伝えた方が良い理由だ。
怒りをコントロールできれば、理性が働きやすくなり冷静な状況で物事を判断するのが楽になる。結果、判断を誤ったり選択ミスによる不利益を被ったりする機会が減る。仕事をしている中で選択を迫られる機会もあるため、大事だと言える。
自分の怒りをコントロールできないと、ストレスが溜まり胃潰瘍やメンタル疾患など病気のリスクが上がる。
しかしアンガーマネジメントの方法を知っておけば、ストレスが溜まりにくくなるため病気をしづらくなる。体調不良による欠勤者も少なくなるため、社内の業務が滞ってしまうリスクを抑えるのにも役立つ。
ここではアンガーマネジメントの方法を7つ紹介する。
やり方は簡単で、怒りの感情が生まれたら6秒間数えるだけだ。すると怒りの感情が消えていく。
ちなみに、6秒我慢したら全ての怒りが和らぐというわけではない。怒りの程度によってはここで収まらない場合もある。ただ、6秒やり過ごすことで瞬発的に怒りを言葉や行動で発散することで信頼関係を失うことは避けることができる。取り返しのつかない言動を起こさないための6秒と理解してほしい。
6秒間数えるのが辛い方場合、以下の方法でやり過ごすと良い。
怒りの原因になるものから離れて6秒間過ごす方法だ。たとえば目の前の人が原因で怒っている場合は、トイレへ行ったり外出したりするといい。怒りの元を視線から消すことで怒りを抑えられる。
仮にその場を離れられない場合は、6秒間視線を逸らしたり目をつぶったりする方法もある。そのときの状況に合わせて使い分けるといい。
別のことを考えて、怒りが生まれないようにする方法もある。仕事の成果が良くて表彰されたことや学生時代の楽しかった出来事など、ポジティブな内容を思い返すのがベストだ。
ネガティブな内容を思い出すと、怒りや悲しみが生まれて状況が余計悪くなるため、控えた方がいい。
何かに没頭して、6秒間やり過ごす方法もある。身の回りの掃除やゲーム・読書など、他のことを頭に浮かべずに済むものを用意するといい。
固定観念を捨てるのも、アンガーマネジメントの代表的な方法だ。以下のことを意識すると固定観念を捨てやすくなる。
自分が正しいという判断をし続けると、自分の価値観に沿った生活スタイルになってしまう。
他者の考えを一旦受け入れる習慣も作るのも良い。否定し続けると、相手の考えを一切受け入れられない状況に陥る。柔軟に対応する意味でも必要だ。
新しい体験や経験を増やすと、自分の価値観を変えられるチャンスがある。チャレンジしたいことが思い付かない場合は、事前にやりたいことを書いておき、その内容に沿って行動すると良い。
新しい体験や経験が増えると、新たな発見が生まれたり反対派だったものが賛成派になったりなど、様々な変化が期待できる。自分を変える意味でも取り組んだ方がいい。
自分でコントロールできることにのみ力を注ぐことも、怒りに感情を振り回されないために効果的な方法だ。ここで大事なのは怒りの原因として、自分でコントロールできない事象を把握することだ。
たとえば、バスの遅れに対して怒ったとする。この事象は自分で解決しようと思っても難しい。なぜならバスの遅れは自分でコントロールして解決できる問題ではないためだ。外的要因(渋滞など)が理由で起こる事象であるため、自分が努力したところでバスの遅れが0になることはない。
このような事象に対する怒りの場合、諦めの気持ちを持つことが重要だ。「仕方ないか」「こういうこともある」といった形で受け止められるようになれば、水に流すことができて怒らなくなる。結果、余計なエネルギーを使わなくなるため、快適な時間を過ごせるようになるはずだ。
思考を停止させて、怒りを爆発させない方法もある。仮にプロジェクトのことを考えているときに怒りが生まれた場合は、一旦プロジェクトのことを考えなくするイメージだ。考え続けると怒りの原因となる火種が、次々と出てきてしまう恐れがあるためだ。怒る機会が増えると、自分でコントロールするのが大変になる。そのため、余計な怒りを生まないことが大切だ。
相手と話していてイライラして、怒りが生まれる場合もある。それを防ぐには、イライラしなくて良い話し方を実践するといい。以下のことを意識するといい。
自分が苦手な人や嫌いなことなど、特定のテーマの話になるとイライラしてしまう場合は、そのテーマに触れないような会話を展開していくといい。
会話の中で特定のワードが出たときにイライラする場合は、そのワードを使わずに話すとイライラしづらくなる。たとえば「だって〇〇」と言った段階で怒りが生まれやすくなる方は、「だって」という単語を極力使わずに会話するといい。イライラする箇所が減るため、怒りを爆発させずに済む。
イライラしたときの原因が、相手にあると思わないのも大事だ。この気持ちを意識すれば、意見の食い違いが起こったり、自分の意見を否定されたりしてもイライラすることは減る。新たな気付きを得られたという風に前向きな気持ちで捉えられるため、価値観が違う相手とも話しやすくなる。
怒りの度合いを10段階に分けてスコア表記すれば、自分が怒りやすいテーマを見つけられる。以下の手順に沿ってスコアをつけさせると良い。
怒りの原因とスコアを記入させる。怒りの度合いが小さければ「1~3」、怒りを引きずる形だったら「4~6」、憤りを相当感じた場合は「7~9」、怒りがMAXだった場合は「10」というように、自分なりの基準を決めておくと記録が楽だ。スコアごとに記入する場所を分けておくと見やすい。
記入したものを定期的に見させた方が良い理由は3つある。
自分の怒るポイントが分かれば、同じような内容で怒りそうになったとき、感情を出してはいけないと意識するようになる。結果、前面に怒りを出してしまう機会が減って、健やかな生活を送ることにつながる。
スコアの内容を定期的に見ておけば、怒りが生まれそうになったときに「スコアが小さいから怒る必要がない」、「スコアの数は大きいが、よく考えたらそこまで怒る必要はない」と、客観的に判断ができるようになる。結果、怒りを減らすのに役立つ。
怒りのテーマが同じでも、そのときの状況によって感じ方は異なる。スコアが「8」から「2」に下がるというように、スコアが減るケースもある。スコアの変化に気付くことができれば、自分の怒りを冷静に判断しやすくなる。それも定期的にスコアを見てもらう理由だ。
相手の立場に立って物事を見るのも、アンガーマネジメントに効果的だ。自分のことを客観視できるようになり、怒りそうになっても立ち止まりやすくなる。
相手の立場に立つときに大事なのは相手を知ることだ。知らなければ、相手の立場に立って物事を見るのは難しい。なお相手を知るには、以下の方法を実践すると良い。
手っ取り早いのは、相手から直接話を聞きだすことだ。会話の中で相手を知っていく。「どんな気持ちで仕事をしているのか」「何をしてもらっているときが嬉しいのか」といった形で質問をしていけば、相手のことが分かってくる。
事前に相手のことを調べておく方法もある。相手のことを事前に知っておけば、初対面であっても相手の立場に立って物事を考えやすくなる。共通の知人に聞くと、生の声が聞けるかもしれない。
アンガーマネジメントを上手に活用できれば、怒りを自分の良い方向に持っていける。会社の全社員に習得させた方が良いスキルと言っても過言ではない。アンガーマネジメントの方法を社員に身につけさせた方が良い理由は、以下の通りだ。
①社員が働きやすくなる
②部下からの印象を良くする
③時間の有効活用
④冷静な状況で物事を判断できるようにする
⑤社員の病気を防ぐ
アンガーマネジメント研修などを実施し、これらのスキルを社内に広めれば、職場の雰囲気を良くしたり社員のやる気を上げたりすることにつながる。管理職研修などと一緒に実施することがおすすめだ。
なお、アンガーマネジメントを学ぶ方法は、研修以外にも様々な方法がある。
①怒りの感情が生まれたら6秒間やり過ごす
②固定観念を捨てる
③自分でコントロールできることにのみ力を注ぐ
④思考を停止させる
⑤イライラせずに済む話し方を実践する
⑥怒りの度合いをスコア表記していく
⑦相手の立場に立って物事を見る
以下の記事でも、ちょっとしたコワザなどが紹介されているので、是非あわせて読んでみてほしい。
→参考:怒りのコントロールに役立つテクニックについてこちらの記事でもご紹介|ブログ一覧|FastSeries
やり始めの頃は実践するのに手間がかかる。しかし繰り返し行っている内にコツが分かってきて、簡単になってくるはずだ。ハラスメント対策として、アンガーマネジメントを心掛けている企業も増えてきた。社員が働きやすい企業を目指すためにも、アンガーマネジメントの方法を社内に周知していただければと思う。