一昔前は男性か女性かで区別されるのは当たり前だった。しかし現代において「男性だから~」「女性だから~」という理由で接するのは古い。最近では性においても多様性が出てきている。その時代の中で抑えておくべきワードが「LGBTQ+」だ。
日本ではLGBTQ+の方々が働きやすい環境をつくられており、それは企業にも求められている。本記事ではLGBTQ+の概要を解説しつつ、取り組んでいる最中に起こる課題や、解決方法について紹介する。
LGBTQ+とは、性が多様であることを表している言葉だ。当初はLGBTと呼ばれていたが、しばらくして「Q」が加わった。この言葉は、下記の頭文字をとって付けられている。
性は多様でありLGBTだけでは包括できないため、「他にも多様なセクシュアリティがある」ということを意味する「+」が追加されるようになった。
当事者が抱えやすい悩みとしては以下の通りだ。
LGBTQ+に該当する社員がいない前提の職場だと、LGBTQ+に該当する社員は居心地が悪く感じる。すると自分の能力を発揮できなかったり、コミュニケーションを上手く取れなかったりする状況が起きてしまう。そのためLGBTQ+に該当する社員にとっては、働きづらい職場になる。
LGBTQ+についての知識は持っているものの「自分の職場にはいないだろう」と思っている方も多く、本人が傷ついてしまうような言葉や行為を職場内で行ってしまっている場合もある。
差別だという認識がなかったとしても、当事者としては気分が良いものではない。結果として人間関係がこじれてしまい、職場に居づらくなったり仕事が思うように進まなくなるなどの悪影響を及ぼす危険もある。
カミングアウトを強制することを「アウティング」として禁止されているように、カミングアウトするかどうかは本人の自由だ。
しかし、カミングアウトしたいと思った社員がいた時に、それを受け入れられる職場であるかということを考えると、必ずしもそうではない場合が多いかもしれない。
人によってはカミングアウトできないと、ストレスが溜まり、心身ともに滅入ってしまう危険性もある。カミングアウトをしたいと思った社員が相談しやすいような窓口の設置や職場環境作り、部下と上司の関係性があることが望まれる姿だ。
LGBTQ+に関する課題は方法を使い分ければ解決できる。解決方法としては以下の通りだ。
これを解決するには、以下のことを実践すると良い。
職場全体でLGBTQ+が存在することを認識する習慣をつけると良い。LGBTQ+に該当しない社員にも伝われば、取り組むのが楽になる。なおLGBTQ+の認識を高めるときは、以下のことを実践すると良い。
官公庁やLGBTQ+の関係団体から資料を取り寄せるといいだろう。社員へ定期的に配布すれば、LGBTQ+の文字が目に入る機会が増える。それが認知度の向上につながっていく。
セミナーやLGBT研修を受講させるのも効果的だ。外部研修だけではなく社内での研修も可能だ。LGBTQ+の研修と言っても様々な内容があるため、目的に合わせてカリキュラムを決めた方が良い。
企業として、LGBTQ+の取り組みに参加するのもいいだろう。シンポジウムやパレードなどがある。参加すればLGBTQ+の方の気持ちが分かり、自分事として捉える社員が増えていく。その結果、LGBTQ+の社員が在籍する前提の職場づくりを行うのが楽になる。
LGBTQ+がいる前提で、コミュニケーションをとる文化をつくることも大事だ。それを実現させるには、以下のことを周知すると良い。
どの社員に対しても、人格やアイデンティティの否定を行ってはいけない。LGBTQ+を受け入れる雰囲気をつくるために大事だ。
自分の価値観が全てだと思わず、他の価値観を受け入れる習慣をつくることも大事だ。社内にこの雰囲気ができれば、仮に相手がLGBTQ+に該当しても、違和感を抱えることなく話せる。
それが日常的になれば、LGBTQ+に該当する社員がいることを前提とした、コミュニケーションがとれやすくなる。
解決方法は以下の通りだ。
社内での差別発言を禁止すると、LGBTQ+の社員に対する差別発言は減る。ただし口頭で注意するだけでは不十分だ。注意をしても、言うことを聞かない社員がいるからだ。
社員から反発されないためには、差別発言の禁止を明文化しておくといい。たとえば社内マニュアルに明記しておけばルールである以上、注意されても文句は言えない。このように、社員達が差別発言できない仕組みをつくることが大事だ。
LGBTQ+に該当する社員の中には、該当しない社員と同じように接してほしい場合もある。そのため、LGBTQ+だと決めつけないことも大事だ。この文化が根付けば、他の社員と同じように接することができて、差別発言が出づらい職場になる。
解決方法は以下の通りだ。
相談しやすい環境をつくればカミングアウトしやすくなる。社員同士で普段からコミュニケーションをとったり、信頼関係を築いたりすれば相談しやすいだろう。なお、相談方法には様々な形式がある。社員によって使い分けるといい。
定期的に面談する機会を設けておけば、自分から相談できない社員でも、強制的に話すタイミングができる。そのため、自然と相談しやすい環境になっていく。
ただし相性の悪い上司と面談させると、カミングアウトしづらくなる。そのため、信頼関係を築けている上司と面談させることが大事だ。
同じ部署の社員に言えない場合もある。そのときは、他部署の社員に相談させるのも手だ。人事部や総務部が相談窓口になっていることが多い。企業によっては、外部の専門家に来てもらう場合もある。
そもそも社員に相談するのが嫌な場合は、外部の相談窓口を紹介しても良い。全国各地に設置されている「総合労働相談コーナー」や「よりそいホットライン」など、様々な相談先がある。
アウティングとは、LGBTQ+であることを周囲に言いふらす行為のことだ。アウティングによって、LGBTQ+に該当する方が命を絶った事件も起こっている。そのため、アウティング禁止が当たり前であることは、社内に周知すべきだ。こちらも社内マニュアルに明文化して、ルールとして運用した方が良い。
「自分からLGBTQ+に該当することを言ったらどう」「他の社員にも伝えた方が楽だよ」と言うように、カミングアウトさせようとするのも良くない。他人から勧めらて、言えなくなるケースも存在する。したがって、周囲の人間がカミングアウトを進めるべきではない。
LGBTQ+に取り組んでいる企業も存在する。最後に実例を紹介する。
アクセンチュアでは、LGBTQ+であっても平等に働ける環境をつくっている。LGBTQ+に該当する社員であっても、他の社員と同様に保障することを誓っており、LGBTQ+に関する理念も作成している。
さらに国内外のイベントに参加したり、LGBTQ+の理念を広めたりなど、社会的意義のある行動をとっているのも特徴だ。
日本航空では2019年にLGBTQ+チャーターの運行をするなど、LGBTQ+を世の中に広めるための社会貢献活動を行ってきた。
また社内においても、会社の基準を満たした同性のパートナー登録をした社員に対して、異性と結婚した社員と同じ制度が適用される状態をつくるなど、LGBTQ+に該当する社員が在籍したいと思う環境を整えている。
ユニリーバ・ジャパンでは、LGBTQ+に関する支援プログラム(ユニリーバ・プライド・ジャパン)を用意しており、社内制度の変更や採用の推進、社外でのイベント参加など、様々な取り組みを行ってきた。これによって、LGBTQ+に該当する社員が働きやすい状況をつくり出した。
LGBTQ+の文化は世界中で広がっており、国内でも政府や自治体が様々な取り組みを行っている。国内企業においても求められているため、LGBTQ+の取り組みは行うべきだ。
LGBTQ+に該当する社員の受け入れ態勢ができれば、職場の中に多様性が生まれたり、企業のイメージアップにつながったりする可能性がある。
今後もLGBTQ+の文化は根付いていくため、組織として柔軟な対応が求められる。それを実現させるためにも、LGBTQ+関連の取り組みに力を入れていただきたいと思う。